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史上最強最速の量産型ジャガー、XKR-Sにニュルブルクリンクで乗る。


JAGUAR XKR-S
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JAGUAR XKR-S



ジャガー=スポーツカーの世界 #01
快汗、スポーツカー!


ここにきて、ジャガーが大きく変わろうとしている。これまでのラグジュアリー路線に加えて、本来そうであったはずの、スポーツカーとしてのジャガー・ブランドを前面に押し出してきたのだ。
今春ジュネーブでデビューしたXKR-Sに続き、秋のフランクフルトでは、かつてのEクラスを想起させる横開きハッチを持つ本格スポーツカー、C-X16を発表した。この機を捉えて、スポーツカーとしてのジャガーをめぐる小特集を組んだ。まずはXKR-Sのニュル体験記からお届けする。
文=村上 政(本誌) 写真=ジャガー・ランドローバー



ニュルブルクリンク北コース
ニュルブルクリンク北コース ドイツ北西部、ボンの南南西およそ40kmに位置するアイフェル山中に1927年につくられた世界でもっとも過酷なテスト・コース兼サーキット。現在の全長は20.832km。左下の小さな周回路が現在F1が行なわれているグランプリ・コースだ。
 いま、なぜジャガーがスポーツカーとしての側面を押し出してきたのか。その理由について、ジャガー本社のグローバルPR責任者で、今回の「ニュルブルクリンク・エクスペリエンス」では、自ら同乗ドライバーを務めたほどの腕前を持つフランク・クラース氏はこう語った。
「この数年、ジャガーはどこへ向かうべきか模索してきた。その中で、世界中のジャガー・オーナーの90%がジャガー=スポーツカーだと思っていることがわかった。みんなジャガーにスポーツカーを求めている。ならば、それに応えようと考えた」
 思うに、フォード傘下にあった時代のジャガーは、同じグループ内にアストン・マーティンがいたこともあって、ラグジュアリー方面ばかりを担当させられてきた感がある。それがタ資本に移行して軛から自由になり、本来ジャガーが持っていたスポーツカーのDNAを思い切り発現できるようになったのだろう。ニュルブルクリンクに各国のジャーナリストを招いて、XKR-Sをはじめとするスポーツ・モデルの走りを体験させようという計画が浮上したのも、むろんその結果に違いない。
 そのおかげで私は、9月末のドイツにしては暖かい秋晴れの1日、最新ジャガーでニュルブルクリンクを駆け回る幸運を得たというわけだ。

ゆっくりとハンドルを切れ

 イベントは朝9時、サーキットのすぐ脇にあるジャガー・テスト・センターでのブリーフィングから始まった。ジャガーは2003年からこの施設を車両開発に使っている。今回はXKR-Sのほか、XFRとXJSSが試乗に供されたが、車両解説はなく、すぐに走り方についての注意点の説明に入った。
 走行はフリーというわけではなく、インストラクターが運転する先導車の後に4台が連なって走る。チーフ・インストラクターのサッシャ・ベルト氏はフォーミュラからハコまで数多くのレースを経験したレーシング・ドライバーで、ニュルブルクリンクの24時間レースにも毎年参戦する、いわゆるニュル・マイスターの一人だ。彼が特に強調していたのは、速度域が高いから、とにかくハンドルを急に切ってはいけないということだった。それだけでバランスが崩れてクルマの挙動が不安定になる。
XKR-S
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XKR-S 今春のジュネーブでデビューしたジャガー史上最強最速の量産型スポーツカー。最高速300km/h、0-100km/h加速4.4秒。エンジンは改良型の直噴5リッターVスーパーチャージャーで、550ps/69.3kgmのパワー&トルクを発生。6段AT。全長×全幅×全高=4794×1892×1312mm。ホイールベース=2725mm。車重=1753kg。価格は未発表。
 続いて、事故シーンのビデオ集を見せられた。バランスを崩したクルマがなすすべもなくガードレールに突き刺さっていく。中には勢い余って引っくり返るのもある。ここでは毎年30人を超える死者が出ているのだ。何が起きても不思議ではない。すべては自己責任のシビアな世界だ。

なにもかもが軽く、俊敏

 私が最初に乗ったのはXFRだった。久々に走るニュル、しかも、クルマはオーバー500馬力の怪物である。ヒリヒリするような緊張を感じながらコース・インしたが、滑りやすいから気をつけろと注意された最初の下り区間も、いざ走ってみれば実に楽しいワインディング・ロードで、高速区間に入り、最初のジャンピング・スポットを越える頃には、心に余裕が生まれていた。とにかく運転しやすい。重さとロールが大きめなのが気にならないわけではないが、ゆっくりとした操作をしてやるとコーナーでも驚くほど粘るから、前を走るXKR-Sにも何とか付いていくことができる。ただし、ダイナミック・モードにしても、ステアリングに舵角がついていると、コーナーからの立ち上がりでスロットルを開けても電子制御でトラクションが絞られてしまう。とりわけ、上りコーナーの立ち上がりで遅れをとる。
 やがて、お目当てのXKR-Sに乗る順番がやってくると、テスト・センターからサーキットに向かう一般道を走り始めただけで、まるで別物のように軽快だったので、思わず口元が緩んでしまった。エンジンの吹け上がりも、操舵に対するボディの反応も、なにもかもが軽く、俊敏この上ない。低く唸るようなエグゾースト・ノートも気分を盛り立てる。
ジャガー
 コース・インしてスロットルを全開にした時の加速の凄まじさは、半端ではなかった。そこからフルブレーキングして1コーナーに進入していく。まずは下りのワインディング区間で自由自在なハンドリングを堪能。続く高速区間ではメーター読み260km/hをあっさりと超えてみせた。しかし、なにより感心したのは、コーナーからの立ち上がりでステアリングを戻しながらスロットルを開けて行った時のトラクションの掛かり方が、素晴らしく気持ちいいことだった。XFRで遅れをとった上り区間でも、1753kgのボディを前へ前へと押し出していく。
 最初はシフト・パドルを使って6段ATをマニュアル操作していたが、そのうちスポーツ・モードのままクルマ任せで走っていた方が楽で気持ちいいことに気づいた。ラップ・タイムは9分弱くらい。テストでのベスト・ラップは7分45秒というから、1分強の遅れなら十分速いと言えるだろう。そのくらいのペースで、ちょっと汗をかきながら走るのがすこぶる気持ちいいスポーツカーだ。
「過激すぎず、ラグジュアリーすぎず、というのがジャガーの哲学。これ以上速くするにはリア・シートでも外さなければならないが、XKではそれはやらない。これより先はCX16に任せることになる」
 と、先のクラース氏。XJSSには乗り損ねたが、2台で計10周のいい汗をかいた。至福の1日だった。

ジャガー XFR
ジャガー XJSS
XFR
2012年型からXJと共通の顔を得た中型サルーンXFシリーズの最高性能モデル。直噴5リッターV8スーパーチャージャーは最高出力=510ps/6000-6500rpm、最大トルク=63.8kgm/2500-5500rpmを発生。6段AT。全長×全幅×全高=4970×1875×1460mm。ホイールベース=2910mm。車重=1960kg。車両価格=1200万円。
XJSS
軽量アルミニウム構造のボディを持ったジャガーの旗艦サルーンXJの最高性能モデル。XFよりひと回り大きいのに、若干ながら軽量だ。エンジンはXFRと同じ直噴5リッターV8スーパーチャージャー。6段AT。全長×全幅×全高=5135×1900×1455mm。ホイールベース=3030mm。車重=1950kg。車両価格=1675万円。

ホイールはバルカン社製の軽量鍛造20インチ・アルミを採用。
(左)ホイールはバルカン社製の軽量鍛造20インチ・アルミを採用。タイヤはピレリPゼロで前255/35R20、後295/35R20となる。(中)スイッチ類に肌触りの良い漆黒のエボニーペイントが施されるなど、さりげなく豪華&スポーティを演出した内装を持つ。(右)見るからにサポートが良さそうなヘッドレスト一体型の“パフォーマンス”フロント・シートを専用装備。ヒーター機能付きだ。



(2011年12月号掲載)
 
 
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