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9月下旬に発売されるオープンのチンクエチェントに、イタリアで乗る。


FIAT-500c
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FIAT 500c



無言は禁物です。


この9月下旬に、日本でもフィアットの新しい500cが発売される。
屋根いっぱいのキャンバス・ルーフが大きく開くオープン・モデルだ。
本誌記者が、フィアットの街、トリノで行われた試乗会から報告する。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=フィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパン


 新しいフィアット500cを運転している間ずっと、僕は助手席の女の子と話し続けていた。
 リンゴットのホテルを出ると、僕らは街の東側を沿うように流れるポー川を渡り、川沿いを走る道を北上して、スペルガの丘を目指した。
「君もアルバイトなの?」
「フィアットとかチンザノみたいなトリノの大企業で、臨時の通訳みたいなことをやってるの」
「アコモデーション・スタッフを手伝ってるわけだね。学生でしょ。専攻は何なの?」
「法学。でもイタリアでは弁護士になるのは大変で、大学で5年間、さらに実習生として2年間。それでようやく資格試験を受けられるんだけれど、これがまた難しくて、合格するのは……」
2代目500は原設計がキャンバス・ルーフ
2代目500は原設計がキャンバス・ルーフ。もっと遡って戦前の最初の500にも同じ屋根開きがあった。伝統の再現というわけ。
「トリノに住んでるの?」
「ええ、家族と一緒に。でっかい庭があるけれど、おばあちゃんが手入れしてくれるから助かるの。手伝わなくちゃならなくなったら大変」
 などなどと、ずーっと話し続けた。イタリアで女性とクルマに乗っていて、無言はご法度もの。たとえ初対面でぎこちなくても、あれやこれやと話さないといけない。だいたい、チンクエチェントは幅が狭いから、隣人との距離が近い。よそよそしいのは気まずいのである。
 そうこうしていると、道案内には不慣れなのに、国際広報のハルドウィン氏に突然、案内してやってくれといわれて困惑ぎみだった彼女も打ち解けてきて、道沿いにいわくある建物を見つけて歴史的背景を教えてくれたりするようになった。
 すると、ますます話し続けなければならない。話に夢中になって彼女も時おり分岐で指示を忘れそうになるし、そうなると、こっちはこっちで話の腰を折らないようにしつつも先回りして分岐前には「あそこはどっち?」みたいに催促もしなくちゃならない。気を使いすぎるとどっちがケアする側なんだかわかんなくなって、彼女も気まずくなっちゃったりするかもしれないしで、もう大変。
 しかも、キャンバス・ルーフは全開でドア・ウィンドウも下りきってる。真夏のギラギラした太陽は照り付けるわ、風には弄ばれるわ、畳まれた幌がルームミラーの視界を遮って、仲間の後続車がちゃんとついてこれてるかどうかの確認はしづらいわで、正直言って、クルマを観察しているひまなど、ないのである。
 そんなこんなで、分岐を間違えたり、行き過ぎてUターンしたりしながら、僕らはなんとかスペルガの丘にたどり着き、先導役の務めをやり遂げた。「着いたね」と言いながら、僕らは互いに微笑んだ。
 大仕事をやり遂げた充実感があった。そう、楽しかったのである。

ずっと屋根開きだった

 チンクエチェントは思い起こせば、トッポリーノの愛称で呼ばれた戦前の初代500のときから、大きく屋根が開くキャンバス・トップが主役だった。2代目の500、通称ヌォーヴァ・チンクエチェントのときもそうだった。2代目の再来という位置づけにある最新の500にも、だから屋根開きがあって然るべきなのだ。そもそもはこもり音から逃げるために採用された構造だったのだけれど、いまは違う。それがあると楽しいから、必要なのである。
 フィアットの説明によれば、新型500c(Cはコンバーティブルとかキャンバス・トップとかのほかにコピーライトの意味も込めての命名だそうだ)のアッパー・ボディは、スティール・ルーフやガラス・ルーフの仕様とは完全に別物で、ルーフ・ラインこそ変えていないが、内側の構造設計は専用の新規起こしだという。ウィンド・スクリーンは天地に長く、Aピラー頂部を繋ぐ構造はいっそう強固にしてある。昔のそれと違って、これは立派な電動スライド式だから、ガイド・レールを内蔵する必要があるが、室内への出っ張りは最小限にとどめられ、頭の周りに窮屈な感じを覚えることもない。
 専用のボディ設計のおかげだろう、剛性低下もほとんど感じない。フィアットの説明によれば、屋根を閉めたときの空力特性も、車輌重量も、ハード・ルーフ型に対する不利はほとんどないという。ネガは極小。
もう1回スイッチを押すと、最後端まで下がり切る
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もう1回スイッチを押すと、最後端まで下がり切る。この状態だと、ルーム・ミラーでは直後の後続車はルーフしか見えない。開口部前端には整流用のリップ・スポイラーが立ち上がる。適宜ロックすることで立ち上がらないようにすることもできる。半開きで高速走行時に有効で、バタつきを抑える。
 楽しさ優先なら、チンクエチェントは屋根開きがお薦めだ。ふたりで乗って、屋根を開けよう!


FIAT-500c/フィアット 500c
(左)屋根を閉めれば形も居住性もハード・ルーフ型とほとんど同じ。遮音もしっかりしている。ルーフ後端にはリップ・スポイラーも備わり、抗力係数はCd=0.33と、空力特性も優秀。
(中)スライド・キャンバスの停止位置は2段階設定。スイッチの最初の一押しでここまで開く。この操作は最高速度走行時でも可能。リア・ウィンドウは熱線入りのガラス製。
(右)トランクは162リッターの容量がある。リッドを開けると、フルに下ろしてあるルーフは自動的に少し戻り、干渉を回避する。



(2009年10月号掲載)
 
 
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