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SLSが大きな成功を収め、いよいよ気力充実のAMG。
新型CLS63は、硬軟どちらもいける死角なしのクルマだった。


MERCEDES-BENZ CLS 63 AMG/メルセデス・ベンツCLS 63 AMG
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MERCEDES-BENZ CLS 63 AMG/メルセデス・ベンツCLS 63 AMG
V8BITURBO
CLS63AMGか、E63AMGか、それが問題だ。


雪降りしきるデトロイトからチャーター機で飛んだ先はサンディエゴ。
青い空と、穏やかな気温に包まれたカリフォルニアで新型CLS63AMGに乗った。はたしてそれは、買えない人間にも悩ましい想いを抱かせたのだった。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=メルセデス・ベンツ・ジャパン


どっちにすればいいんだ?

「これはまた贅沢な悩みを生むことになったなぁ」としみじみ思った。
 1月中旬の合衆国はサンディエゴ。もはやメキシコ国境まですぐという地域だけに、いかにもカリフォルニアといった景色が広がる。昨日までいたデトロイトと違って、空はどこまでも青い。デトロイトと違うのは気候だけではない。ここは不景気はさほど関係がないかのように活気がある。そんなサンディエゴに、メルセデス・ベンツの新しいCLS63AMGはよく似合った。贅沢の極みのようなクルマを走らせる後ろめたさを、ここでは感じなくてすむ。
 ステアリング・ホイールを握り、あるいは助手席の住人になって、まる1日ともに過ごした新型CLS63AMGは、素晴らしいクルマだった。どれほどかというと、E63AMGと甲乙つけがたいほどにいい。僕としてはこれは最大級の褒め言葉だ。E63AMGは、欧州のEセグメント・カーのなかで、過去最高のスーパー・スポーツ・サルーンである。優しく走らせてよし、攻めてよし。注文のつけどころがない。それと比べても、CLS63AMGは引けをとるところがないのだ。


MERCEDES-BENZ CLS 63 AMG
MERCEDES-BENZ CLS 63 AMG/メルセデス・ベンツCLS 63 AMG
最新ターボ過給のすごさ

 味わいは違う。最大の要因は別物の心臓にある。CクラスからCLクラスまで、ほぼすべてのAMGに使われてきたM156型6.3リッター(6208cc)の自然吸気V8に代えて、M157型5.5リッター(5461cc)ツインターボV8が投入されている。すでにSクラスとCLクラスのAMGに投入ずみの新世代エンジンだ。
 乱暴な言い方をするなら、それは時代の求めるダウンサイジング・ユニットである。総排気量を12%縮小し、その代わりにV8の左右バンクにそれぞれ1基ずつの小型ターボチャージャーを加えている。燃料供給方法もポート噴射から燃焼室への直噴式に変わった。その結果はというと、パワー・スペックは実力伯仲だ。
 消え行く運命にあるこれまでのCLS63AMG(514ps)と比べるよりも、現役バリバリのE63AMGと比べるとわかりやすい。E63に搭載されているM156型は圧縮比が11.3対1で524ps/6800rpmと64.2kgm/5200rpmを叩き出す。新型CLS63のM157型は最新のターボ・エンジンらしく比較的高い10.0対1という圧縮比に最大1.0barの過給圧を加えて、525ps/5250rpmと71.3kgm/1750〜4500rpmを搾り出す。
M157型5.5リッター・ツインターボV8エンジン
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M157型5.5リッター・ツインターボV8エンジン。ターボ過給型とは思えないほどの、タイトかつリニアな追従性をみせる。
 新型CLS63はこれまでのCLS63より全長が7.5cmほど伸びて5mちょうど(4999mm)へと大型化している。E63AMGとの比較では11.5cmも長いが、4枚のドア、ボンネット、フロント・フェンダー、トランク・リッドなどがアルミに置きかえられ、大型化による重量増を完全に相殺しているので、実際にはE63より少し重いぐらいではないかと思う。同じ測定法での数字が手に入らないので、こういう書き方しかできないのだけれど、ほぼイーブンとみていい。1.9t前後だろう。
 ちなみにE63とCLS63はともにホイールベースは2875mmだ。トレッド寸法もほぼ同じで、ベースになるプラットフォームが同じであることがわかる。
 変速機はどちらもAMGスピードシフトMCT7を使う。
 結果として、速さは互角である。最高速度はともに標準仕様のままであれば250km/hでリミッターが効く。0-100Km/h加速は、Eが4.5秒、CLSが4.4秒というものだから、525psを引き出す手法が違っても、数字では互いに譲らないものをもっている。
 M157型ツインターボ・エンジンは高い圧縮比と過給遅れがほとんどない小径ターボということもあって、きわめて素早いレスポンスを見せ、期待値と結果がずれるということがない。もちろん、そこに無粋なオーバー・シュート感もない。高出力ターボ過給エンジンとしては惚れ惚れするようなリニアリティである。底なしのトルクを右足の動きでいかようにもコントロールできる。全域で分厚いトルク感は新世代AMGの大きな魅力となるだろう。
 しかし、である。E63AMGの自然吸気ポート噴射ユニットならではの瞬速のレスポンスも捨てがたい。高回転域に到って、メタリックな感触を帯びて噛み付くように回るあの感じは、一度知ってしまうと、忘れ難いものがあるのだ。
スムーズなラインで形作られたインテリア
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 回転で稼ぐE63も、過給による大トルクを利するCLS63も、速さは申し分なし。一方で、この2台はともに、底知れずジェントルに走ることもできる。どちらのエンジンも低負荷域でのレスポンスがいいからこそなのだけれど、そこでも2台は甲乙つけがたい。
 これはAMGがSクラスとCLクラスに搭載して世に送り出した新型過給エンジンを徹底的に詰めて開発したことの証左だろう。手法は違っても、見据えている理想は同じなのだ。そして、どちらも信じがたい高みに達している。これで「迷うな」というほうが無理である。


スムーズなラインで形作られたインテリアは新型でも変わらぬCLSの大きな魅力だと思う
スムーズなラインで形作られたインテリアは新型でも変わらぬCLSの大きな魅力だと思う。仕立て方はお好みでいかようにも。

仕立て方はお好みでいかようにも




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