Jaguar XKR & XF 3.0 Premium Luxury
爽快な箱と豪快な流線型。
たとえサルーンであっても、ひときわスポーティなドライブ・フィールを持つジャガー・サルーンの入門モデル、XFと、ジャガー・スポーツ・クーペの高性能モデル、XKRの2012年型がいちはやく上陸したので、さっそくロード・テストに引っ張り出した。
文=鈴木正文(本誌) 写真=望月浩彦
オネスト・プライス
2012年型のサルーンとスポーツカーの2台のジャガーは、ともにフェイス・リフトを受け、ともによりシャープなディテールを与えられて、若々しくリフレッシュした。
まず、XF。ベース・モデルの3.0ラグジュアリーとおなじ自然吸気の3リッターV6を積むが、装備のグレードがアップした3.0プレミアム・ラグジュアリーを借り出した。特筆されるのは、前年までの760万円から694万円に大幅に値下げされたことで、ベース・モデルのラグジュアリーも、旧型の650万円から595万円になった。最近の円高をいちはやく反映したオネストな姿勢に好感を禁じ得ない。
HIDキセノン・ヘッドランプと、J型のLEDポジション・ライトによって、フロントは精悍に引き締まり、リア・エンドではテール・ランプが水平方向にワイド化されて旗艦サルーンのXJとの近似性が強まった。3リッター・ユニットは、燃費改善のためか、従来の243ps/6800rpm、30.6kgm/4100rpmから、238ps/6500rpm、29.9kgm/4100rpmへと、わずかにデチューンされている。とはいえ、体感上では違いはわからない。
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このV6の回転フィールは爽快だ。いかにも軽量な運動部品がバランスよく運動速度を上げていく感じをともなって、6600rpmのレヴ・リミットに軽々と到達する。4500あたりを境にして、噛みつくような、そして強力でもあるレスポンスを示すから、たんに軽く吹ける味なしエンジンではない。トップエンド領域では、スロットル開度の変化に即応する精密なパワー応答が印象的だ。
もうひとつの美点は、すぐれた前後バランスを有するシャシーで、それは、奥に行くにしたがってタイトになるコーナーでステアリングを切り足していったとき、リアがしっかり追従してくるときに痛感する。およそアンダーステアを感じないニュートラルに近いハンドリング性能が一貫し、ドイツ製のプレミアム中型サルーンよりも一枚上手のシャシーの洗練ぶりを見せる。また、高速道路のワインディング・セクションでは、軽微なロールとともにスッとこともなげにインに寄るのが気持ちいい。ステアリングを切るのが待ち遠しくなるぐらいだ。
そのうえ、どんな場面でも乗り心地はしなやかで、テスト車はオプションの20インチ・タイヤを履いていたのに、足回りにゴツゴツとした感触はなかった。鋭敏に反応し、変速プロセスもいたってスムーズなZF製の6段ATも合格だ。
物足りないのは、山岳路の登りのセクションで露呈するミド・レインジ・トルクの細さだ。とはいえ、前51%、後49%という理想的な前後重量配分と、しっかり確保されたボディ剛性の恩恵は大きく、ハンドリング・バランスにおいて、世界屈指のスポーツ・サルーンといえる。