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アウディA1スポーツバックにスペイン・ジローナで乗る。


AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック
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AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック

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5>3であり、5<3でもある。


昨年、東京モーターショウで初公開されたアウディA1スポーツバック。
スペインへ飛んで、陽の光の下で見たら、その意図が見えてきた。
乗って優れたクルマであるのはA1と同じ。だからこそ形に意味がある。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=AUDI AG



 スペインのジローナ。バルセロナの北東に位置し、少し内陸に入った場所にある街だ。空港に着いてそのまま駐車場へ案内されると、A1スポーツバックがずらりと並んでいた。
 しげしげとクルマを見て思った。アウディは首尾よくやったな、と。
 小型ハッチバック車でフォーマルな雰囲気をつくりだすのは難しいけれど、洒落たパーソナル・カーとすることはとりわけ困難なことではない。ミニやチンクエチェントのような復古モデルでなくとも、例えばシトロエンのDS3などを思い出せば、わかると思う。3ドア型でデビューしたA1もまた、デザインの力で、きわめてパーソナルな雰囲気を漂わすクルマになった。効率を追求するあまり、低抵抗ボディを欲して空力設計のプライオリティが高くなりすぎると、上手くいかない。用心深いアウディは、実用車然とした匂いを持ち込まないように、クラシカルなプロファイルを引用した。それを象徴する大きく傾斜したリアのハッチが効いて、A1はハイテックな今日的表情のなかに、旧き佳き時代の人懐こい姿の面影を宿している。
AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック
 洒落た小型パーソナル・カーは、3ドアと相場が決まっている。5ドアで成立させるのは難しい。ボディが小さいから、そこに左右2枚ずつのドアを切ると、せせこましくパーティング・ラインが入り、途端に生活臭が漂い始めてしまうのだ。ひとはクルマを見るときに、スタイリングそのものだけではなく、その背後にある人間の生活をも見ているからだ。ドアの枚数で、背景が一変してしまうのである。アウディが5ドア・モデルをわざわざスポーツバックと呼ぶのは、ゆえあることなのだ。
ボディの大きな上級車種と比べると
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ボディの大きな上級車種と比べると、ダッシュボードの表層をかたちづくる要素は少ないが、部品個々の形状や素材をよくよく吟味し、工作精度を高めて質感を上げている。ただの実用車であれば、やりすぎといわれるところまでやるからこそ、達成されるものだ。
 2010年にデビューした3ドアのA1は1年間で11万8000台を販売した。数が出た国は、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインで、都会に住む、ライフ・スタイルに強い関心をもったひとたちに支持されたという。一方で、日本や東欧圏では5ドア型を望む声が強く、つまり、新しいA1スポーツバックは、そうした声に応えるべく生み出されたクルマということになる。都市内の道路に付随するインフラや駐車場事情が厳しい国では、ドアの前後長が大きくなる3ドア型はときとして不便をきたすから、後席にひとを乗せる機会がそうそうなくても、5ドアを欲する場合は多い。もちろん、A1スポーツバックは、5ドア型として後席にまともな居住性を期待する声にまず応えなければならないわけだから、アウディはただたんにドアを2枚よけいに切るだけでなく、ボディ後半部を入念にデザインしなおして、スポーツバックを仕立てている。にもかかわらず、パッと見にはそうと気づかれないスタイリングを維持しているところに、このクルマの価値がある。


大人が座れるようになった!
前席の居住性はA3やA4と比べても、引けをとらない。
前席の居住性はA3やA4と比べても、
引けをとらない。
 Bピラーが前進したのはすぐに見てとれるが、それが23cmも移動していると聞かされると、驚く。ルーフも3ドア型とは別物で、8cmも長く後方へ伸ばされたという。僅かとはいえ、全高も6mm高い。全長もホイールベースも変えずに後席の居住空間を拡大するためにとられた措置だ。その結果として、後席頭上の余裕が11mm 増えた。そう、たった11mmである。ところが、この11mmが大きくものを言っている。後席に着いてみると、3ドアより確実に広い。目いっぱい腰を引いて背筋を伸ばすと、身長176cmの僕でも髪の毛が天井に触れそうになるが、3ドアでは頭が当たったのだから、歴然とした違いと言わなければならない。これならたしかにアウディの言うように、子供が大きくならない間は、立派にファミリー・カーとして使えるだろう。
 ルーフ長やCピラーの傾斜角度まで変更したのに11mmしか余裕が増えていないのは、スタイリングの印象を崩さないために選んだ、そこがぎりぎりの折衷点だったからだろう。
 A1スポーツバックに生活の匂いが入り込んできてはいない、とは言わない。けれども、洒落たスタイリングを視覚上崩さずに、ここまでやったアウディのこだわりは、並大抵のものではない。

後席は大柄な人間には少々きつい
荷室の容量は270リッター(VWのポロは280リッター)とまずまず
一方、後席は大柄な人間には少々きつい。まだ子供が小さい家庭用を想定しての十分条件を満たした感じだ。176cmの身長でも頭の周りの余裕は最小限だった。
荷室の容量は270リッター(VWのポロは280リッター)とまずまず。拡大する場合は左右非対称分割式の後席バックレストの前倒しのみで対応する。
 80mmも伸ばされたルーフの後端からは隠すようにルーフ・スポイラーが伸び出している。空力的にはルーフをもっと長くしたいのである。抵抗を減らすのに、それが近道だからである。しかも、今の時代にあって、低抵抗ボディを追求しないなど、エンジニアには許されないことだ。だから、アウディは目に見えない床下の気流を徹底的に整流して、クラス・トップの低抵抗ボディを実現した。床下だけで10%も抗力係数を小さくしたというのだからすごい。どれほどまでにスタイリングに注力して完成したクルマかということがわかるというものである。


空力を最優先したのではないクラシカルなプロファイルを見せるA1(スポーツバック)
空力を最優先したのではないクラシカルなプロファイルを見せるA1(スポーツバック)が、抗力係数Cd=0.32という低抵抗ボディを実現できたのは、入念な床下処理の賜物。
122psエンジンで上陸

 日本へやってくるスポーツバックには、すでに輸入されているA1と同じ122psを発揮する1.4リッター・ガソリン直噴ターボとツイン・クラッチ式7段自動MT(Sトロニック)の組み合わせが搭載される。試乗会にはあいにくそれがなく、A1スポーツバックへの搭載が初投入となる気筒休止機構つきの1.4があった。
 これが素晴らしい出来栄えで、低中負荷域で所定の条件を満たすと、4気筒から2気筒に切り替わる。いつ2気筒になったのか、いつ4気筒に戻ったのかは、ボサっとしていては全然わからない。それこそ聞き耳を立てているか、瞬間燃費計を睨みつけてでもいないかぎり、判別できないのだ。ちなみに、この気筒休止エンジンは別のクルマに載って、日本へ上陸することになっているらしい。そちらも大いに楽しみだ。

スポーツバックは3ドア型にさほど劣らぬパーソナル感を維持している
スポーツバックは3ドア型にさほど劣らぬパーソナル感を維持している。





2気筒時にも4気筒と変わらない低振動

 アウディはA1スポーツバックで初めて気筒休止機構付きの4気筒エンジンを市場投入する。一定の運転条件を満たした状態になると、2番と3番のシリンダーを休ませ、1番と4番だけが出力を生み出す働きをする。爆発間隔は360度クランクの直列2気筒エンジンと同じものになる。しかし、振動特性はほぼ4気筒並みが維持されるところがミソ。
 休止システムの作動はいたってシンプルだ。 2番、3番用のカムは、カムシャフト上をスライド可能なスリーブと一体で、アクチュエーターを使ってこのスリーブをスライドさせることで、通常運転用のカムとゼロ・リフトの休止用カムを切り替えるようになっている。

AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック
AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック





AUDI A1 SPORTBACK/アウディA1スポーツバック
  
 アウディ A1スポーツバック 1.4TFSI (140ps)
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高3954×1746×1422mm
ホイールベース2469mm
トレッド 前/後1477/1471mm
車両重量――
エンジン形式直列4気筒DOHC4Vターボ(気筒数可変式)
総排気量1390cc
最高出力140ps/4500〜6000rpm
最大トルク25.5kgm/1500〜3500rpm
変速機ツインクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション形式 後トーションビーム/コイル
ブレーキ 前/後通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後215/45R16
日本での発売時期122ps仕様が2012年上陸





(2012年4月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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