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メルセデス・ベンツSLにスペイン、マラガで乗る。
いざ、オープン・カー・ライフへ! 第4部 最新オープン・カー海外試乗篇 その(2)


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MERCEDES-BENZ SL



王様が帰ってきた!


全アルミ製のボディを手に入れて生まれ変わった新型SL。しかし、走らせ始めると、そんなことはどうでもよくなる。SLはまぎれもなくSLであり、メルセデスだったからだ。

文=齋藤浩之(本誌) 写真=メルセデス・ベンツ日本(佐藤正勝)



 翼をもって生まれた原初の300SL。その直後に生まれたロードスター・バージョン以来、歴代のSLに脈々と受け継がれてきたものがある。SLは時代の先端を行く技術が集積されたロードスターというだけでなく、抜きん出て洗練されたライド・コンフォートを兼ね備えたクルマであり続けてきたのだ。それは、時にオープン・スポーツカーであり、時にラグジュアリー・クーペにも変身できる、よくばりな1台だった。先代モデルでは格納式メタル・トップを取り入れ、手間要らずで2種類の間を行き来できるようになった。欲ばりな高級車であるにもかかわらず、ストイックに2座で通してきたところに、メルセデス・ベンツSLの核心がある。
 6世代目にあたる新しいSLもまた、紛れもなくそういうSLだった。
身もとろけるような乗り心地

 助手席に乗って走り始めると、その乗り心地の良さに嬉しくなった。先代モデルに勝るとも劣らぬ優しい乗り心地が、そこにあった。腰から上をマッサージされているかのような、柔らかく身もとろけてしまいそうなライド感。プレスティッジ・サルーンのなかでも乗り心地の良さで一頭地を抜く存在のSクラスのそれにも比較しうる素晴らしさだ。それなのに、このSLはSクラスのように深々とサスペンション・ストロークを使ってゆったりとその乗り心地を作りだしている感じはしない。
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 柔らかな感触を失うことなく終始フラットな姿勢が維持されるのだ。いま乗っているのは、550SL。標準で電子制御式の減衰力可変ダンパーを備え、そこにAMGスポーツ・パッケージが組み込まれているモデルで、さらにアクティブ・ボディ・コントロールもオプションで加わっている。4輪のサスペンションのボディ側にある受け側の位置を変化させ、結果的にボディのロール量を6割ほども少なくする働きをするこのABCは、優しい乗り心地を保ったまま、まるで第一級のスポーツカーのような身のこなしを見せる。

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 立派なシートは快適至極ときているから、シート・ヒーターを入れて、さらに併用可能なシート・ベンチレーターまで作動させると、ぬくぬくと暖かく、けれど汗ばむこともなく、オープン・エア・ドライブを満喫できる。これほど快適なオープン・カーを僕はほかに知らない。
みごとな風のあしらい

 先代でもすでにそうだったのだけれど、SLをオープンで走らせたときの快適性は、なによりもその風のあしらいが秀逸だからだ。ルーフを開けても、サイドの4枚のウィンドウとシート背後のディフレクターを上げておけば、高速道路を巡航するような速度にあっても、わずかに頭をそよ風が撫でていくような状態が維持される。気流のコントロールがすばらしく巧妙なのである。風をわずらわしいと感じること一切なく、しかもオープンであることを忘れるほどでもない、絶妙のあしらいだ。
 もちろん、潔く窓を下ろして見た目に粋を削ぐ遮風板もおろせば、これぞロードスターという美しいスタイリングがそこに現れる。ひとの視線を気にするのなら、
にわかには純電動アシスト式とは思えないほどにデキのいいステアリングが、新型SLのハンドリングを心地よいものにしている。正確で緻密、しかもしっとりとしている。 山道でもスポーツカーとして恥ずかしくないスピードを維持できる。
こうして走るべきだろう。SLならば、この状態ですら、風でもみくちゃにされるようなことにはならない。本気で仕事をしたときのメルセデスの空力設計は図抜けている。だから、とくべつオープン・カー好きというわけでもない僕のような人間でも、SLに乗ると、ついついオープンで走りたくなる。助手席にいても、同じだ。
控えめなV8サウンド

 新型SLは、とりあえず350と550、そして63AMGの3モデル構成でローンチされたのだけれど、国際試乗会に用意されていたのは、すべて550だった。メルセデスの推し進めるダウン・サイジング路線に則って新開発されたV8は排気量4.7リッターにツイン・ターボ過給を施すもので、燃料供給方式は燃焼室内直噴式だ。従来の自然吸気5.5リッターより総排気量は小さいけれど、そこは過給エンジン、435psと71.4kgmを比較的低い回転域で捻り出す。メルセデスご自慢の7段ATは、新たにアイドリング・ストップ機構と組み合わされ、炭酸ガス排出量削減に一役買っている。
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 このV8、もちろん力に不足のあるはずもない。いざとなれば下手なスポーツカーなど寄せ付けない加速力をさらりと見せつける。いかにもV8的な、フォロロロォンと聞こえてくるエグゾースト・サウンドは、力強さを忘れさせない程度に控えめな音量で届く。AMG屋号の勇ましい雄たけびを遠くに聴くような、心地よいバック・グラウンド・ミュージックといえばいいだろうか。
歴代SL一覧。先代にあったフェミニンな雰囲気が消えて、新型は力感あるスタイリングになった。
極上のステアリング

 音といえば、新型SLではオーディオ・システムのウーファーがトーボードに埋め込まれた。これによって楽音の土台となる低音域が前からやってくるようになり、サウンド・ステージが眼前に展開するようになった。音色はともかく、音場については文句なしに好ましい。
 ドライバーズ・シートへ移って走らせ始めると、そのステアリングが絶品であることに喜びがわきあがってくる。もうこれ以上ないというくらいになめらかで、しっとりとしていて、リムに添えている掌に快感が生まれてくる。しかも操作に対しては正確にして緻密な反応を見せ、繊細なステアリング操作が、意図せずともできるものになっている。ステアリングのリニアリティは超一級スポーツカーのそれである。
 V8搭載モデルはどちらかといえばノーズ・ヘビーな感じだが、鼻の入りは確実だから、スロウ・イン、ファスト・アウトで丁寧なコーナリングを心がければいい。それでも十二分にSLは速い。そうしていれば、旋回中に少しでも不安定になると介入してくる後輪のトルク・ベクタリング自動制動に、興を削がれることもない。運転する貴方は紳士か淑女であるべきだ。メルセデスはSLを「ジェントルマン・ロードスター」と説明したけれど、これはまさしくそういうクルマなのである。


(左)ATセレクターはSLSのものと同じロジック。レバーの動きはティップのみ。変速モードはコンフォートとスポーツとマニュアルの3つ(63AMGは除く)。新型SLは、走らせればむっちりと柔らかな乗り心地が、オール・アルミ製ボディであることなど忘れさせてしまう。それほどしっとりとしているのだ。(中)リア・バンパーの下へ足をくぐらせるだけでトランクの開閉ができる。ルーフの開閉動作も信頼感に満ちたものだ。(右)風のあしらいは見事。ロードスターの王様に相応しいできばえだ。

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新型メルセデスSLの2人用コンパートメント。上質ですっきりとした、それでいてSLS AMGにも似たスポーティな雰囲気も醸し出す。首筋に温風を吹き出すエア・スカーフも当然備わる。

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 メルセデス・ベンツ SL 550
駆動方式フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高4612×1877×1315mm
ホイールベース2585mm
トレッド前/後 1538/1516mm
車輌重量1785kg
エンジン形式 直噴V型8気筒DOHC 32バルブ+ターボ過給
総排気量4663cc
最高出力435ps/5250rpm
最大トルク71.4kgm/1800〜3500rpm
変速機7段AT
サスペンション形式 前マルチ・リンク/コイル
サスペンション形式 後マルチ・リンク/コイル
ブレーキ 前後通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後255/40R18/285/35R18
車両本体価格1560万円




(2012年5月号掲載)
 
 
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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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