ENGINE online/エンジン オンライン

新型ポルシェ・ボクスターに南仏サン・トロペで乗る。
この軽さはクセになる!


PORSCHE BOXSTER
クリックすると拡大
PORSCHE BOXSTER
新型ポルシェ・ボクスターに南仏サン・トロペで乗る。

この軽さはクセになる! 


先にフルモデルチェンジした兄貴分の911がそうであったように、
アルミを多用したボディとホイールベースとトレッドを拡げたシャシーで武装して登場した新型ボクスター。その走りを、先代に乗る本誌ムラカミはどう感じたか。

文=村上 政(本誌) 写真=ポルシェAG/ポルシェ・ジャパン


 自分が所有しているクルマのモデルチェンジというのは、いつだっていささか複雑な心境を抱かせるものだ。そのクルマに愛情を注いでいればいるほど、新型がさらに良くなっていて欲しいという期待感と、あまりに良くなりすぎていたら口惜しいと思うねじれた感情とが交錯する。
 南仏で開かれた981型のコード・ネームを与えられた新しいボクスターの国際試乗会に同道した日本のジャーナリスト諸氏は、私が先代987前期型のオーナーであることを知っていた。で、行きすがら、「ねえ、もし新型が良かったら、すぐに買い換えちゃうの?」なんて質問を投げかけてくる。いくら入門モデルとはいえポルシェがそう易々と買い換えられるほど気軽な値段ではないことも、私がそんな経済的余裕の持ち主でないことも先刻承知でそんなことを言うのだから、少しばかり意地の悪い人たちだ。おかげで実物を目の当た
クリックすると拡大
アルミを多用して軽量化を図ったボディは、乗り味に想像以上の変化をもたらした。とにかく軽快感にあふれている。一方、60mm延びたホイールベースと40mm拡大したフロント・トレッドのおかげで安定感も抜群だ。
りにする前から、私の神経は昂りに昂っていたのである。
 そもそも、最初に写真が発表された時から、心がざわついていた。誰が見ても911に見えることを前提とした兄貴分とは違い、こちらは先代とはまるで異なるテイストのデザインを採用している。カレラGTやこれから出る918スパイダー、あるいはかつてのレーシング・モデルの917といったポルシェ・ミドシップ・スポーツの系譜に連なることを強調したもので、とにかくカッコいい。これまでの、ややズングリした愛嬌ある部分は完全に払拭され、どこまでも洗練され研ぎ澄まされたスポーツカーに仕上がっている。ひと目見て、ヤラレタと思った。
 サン・トロペのホテルに着いて実物と対面して、その思いはさらに強まった。正直言って、最近見たニューモデルの中で、ダントツでスタイリッシュだ。間違いなくボクスターであるのに、あらゆる細部がこれまでのボクスターとは違う。とりわけ素晴しいのはサイド・ビュウだ。大胆に削り取られたドア・パネルから縦に長いエア・インテークへと至るデザインは、何度見ても美しい。
 ちなみに、そのエア・インテークはよく見るとスリットで上下に2分割されているが、これは先代まで左側が吸気用、右側が冷却用だったのを新型ではどちら側も上部が吸気、下部が冷却に変更しているためだ。両側から空気を吸い込むようになったことで、エアフローが最適化され、吸気効率がより良くなったという。
 サイド・ビュウが美しいもうひとつの理由は、全長が32mm、ホイールベースが60mm延長される一方で、フロント・オーバーハングが27mm削り取られて、プロフィールが抜群に良くなったことにあるのだと思う。ボディ全体を見ても、全高が13mm低くなり、全幅は変わらないもののトレッドはフロントが40mm、リアが18mm拡大されて、より低くワイドなスポーツカーらしいスタイルを得た。
 そして見た目のみならず、新型ボクスターがスポーツカーとして進化した最大のポイントは、ボディ・シェルの46%以上にアルミ合金を使うなどして実現した軽量化にある。ボクスターS、MTモデルの1320kgという車重は先代より35kgも軽い。
 その中には、ルーフの構造材にマグネシウムを使うなどして12kgの軽量化を図った分も含まれている。軽くなった幌は電動でわずか9秒で開閉可能だ。しかも、これまでのように手動でロックする必要もなくなった。ただし、軽くなり開閉が速くなった理由はもうひとつあって、従来型に備えられていたルーフ格納庫のフタが省略されている。つまり、Z型に畳まれたルーフは、マツダ・ロードスターと同じで、そのままむき出しの状態で格納されるのだ。そのため、左右に大きめの穴が開いてしまうのが気になると言えば気になる。先代オーナーとしては、あまりの出来映えの完璧さに、こんな難癖のひとつもつけたくなってしまうのだ。
クリックすると拡大
一新されたインテリア。前方に行くに連れてせり上がったセンター・コンソールを採用するなど、基本はパナメーラや新型911にも共通する新世代ポルシェ・デザインを踏襲する。シフト・パドルのついたステアリング・ホイールはオプション。標準ではスライド式シフト・スイッチがついたものとなる。
ニュル北コース7分58秒

 それはさておき、搭載される水平対向6気筒エンジンはボクスターSが従来通りの直噴3.4リッターで、ボクスターは先代の2.9リッターからダウンサイジングされ、新たに直噴化された2.7リッター。いずれも吸排気系の見直しなどにより、Sがプラス5psの315ps、ボクスターがプラス10psの265psの最高出力を得ている。最大トルクはSが不変、ボクスターはわずか1.02kgmながら減少した。
 同じ2.7リッターを搭載する987前期型のオーナーとしては、新しい2.7リッターユニットの素性が気になるところだが、正確に言うと排気量は987前期が2687cc、981が2706ccでまったく別物だ。ボア×ストロークは前者が85.5×78mmで、後者が89×72.5mm。最高回転数も新型が600rpm高い7800rpmまで回る、よりショート・ストロークな高回転型エンジンとなっている。
 組み合わされるトランスミッションは6段MTと7段PDK。新型911と同じ7段MTは採用されていない。軽量化に主眼をおいたためというのがポルシェ側の説明だった。
 そのほか、走りにかかわる新たな装備としては、新型911と同じ電動機械式パワー・ステアリングと電動パーキング・ブレーキを導入したことや、オプションのスポーツ・クロノ・パッケージの中に、磁性体を使ってエンジンとトランスミッションのマウントの硬さと減衰特性を変化させるダイナミック・トランスミッション・マウントを採用したことがあげられる。また、エコ方面の装備も充実しており、エンジンのアイドリング・ストップ機構のほか、PDK仕様車には、巡行時にギアをニュートラルにして負荷を減らすコースティング機能も備わっている。
 ポルシェによれば、走りに関するオプションをフル装備した新型ボクスターSのニュルブルクリンク北コースにおけるラップ・タイムは7分58秒。先代より12秒速くなっているが、ポルシェのテスト・ドライバーを務めるワルター・ロール氏の見解では、うち2秒がエンジンのパワーアップによるもの、残り10秒はシャシー性能の向上によるものだという。
(写真右)着座位置は5mm低められた。シートの前後スライド量も若干増している。(写真中)空気吹き出し口の間にスポーツ・クロノのダイアルを置くデザインはボクスター独自のものだ。(写真左)ロール・バーの間に装備されるオプションのウインド・ディフレクターは透明の板から網状のプラスティックに変更され、やや後方視界が悪くなった。風の巻き込みも、先代よりやや多くなった印象だ。




前のページ
1
2
次のページ



page1 この軽さはクセになる! PORSCHE BOXSTER/ポルシェ・ボクスター (1)
page2 この軽さはクセになる! PORSCHE BOXSTER/ポルシェ・ボクスター (2)

 
 
最新記事一覧
SPECIAL
注目!! 富士のショー…
5月11日(木)開催予定のエンジン・ドライビング・レッスン・スペシャル、「FUJIオーバル・スクー…
Driving Lesson
エンジン・ドライビング・レッスン
「エンジン・ドライビング・レッスン2017」の受講生募集を開始します。今年の開催は全3回…
WATCH SPECIAL CONTENTS
ZENITH/ゼニスCollabora…
1969年、初代レンジローバーが発表された同じ年、機械式クロノグラフ・ムーブメント 「エル・プリメ…
WATCH/時計
ゼニスENGINE WATCH CLUB…
ランドローバーとのコラボレーションやオールド・カー・レースへの参戦など、クルマの世界に急接近中…
WATCH/時計
パルミジャーニ・フルリ…
2004年にブガッティと提携。
WATCH/時計
ボヴェ・ピニンファリー…
ピニンファリーナとの提携は2007年から。昨年コレクションに加わった「オタンタ セイ」は、ピニンファ…
NEWS
今年は東京モーターショ…
パリ・モーターショウとは打って変わってスーパーカー、スポーツカーの祭典となったジュネーブ・モー…
NEWS
Alpine/アルピーヌCAR P…
アルピーヌというフランスにとって久々の話題作のデビューを邪魔しないようにと申し合わせたかのよう…
NEWS
ニューモデル・ラッシュ…
まずはアウディ。今回、スポーツ路線で押していたアウディはRS3スポーツバックのフェイスリフト版も持…
NEWS
ETTINGER/エッティンガ…
車検に対応するのはもちろんのこと、装着後もディーラーでの整備も受けられるゴルフ用純正チューニン…



バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



▼試乗記 最新5件
 トヨタのコンパクトSUV、C-HRに公道で試乗!
 ポールスター・エディションを試す。
 メルセデスSUVのリーダー、Mクラスがモデルチェンジ!
 ルノー・スポールが手掛けた3台の最新モデルに富士スピードウェイでイッキ乗り。
 メルセデス・ベンツSLの頂点、63AMGが上陸!