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新型アウディS6&S7スポーツバックにドイツ・ミュンヘンで乗る。


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AUDI S6 & S7 Sportback


これぞ新時代のジェントルなアスリートだ!


アウディA6とA7スポーツバックに、よりスポーティなSモデルが登場した。
新型の目玉は、走行状況に応じて気筒休止する新しいV8ターボ・エンジンだ。
その走りを、ミュンヘンで開かれた国際試乗会でテストした。


文=村上 政(本誌) 写真=アウディ・ジャパン/アウディAG



 「技術による先進」というスローガンのもとに、これまでアウディが世に問うてきた新技術は枚挙に暇ない。 古くはクワトロ4WDシステム、そして空力ボディ、アルミ・スペース・フレーム、直噴ターボ・エンジン……。最近では、TTや新型A6に(ということはこのS6にも)使われているアルミとスチールを使った軽量ハイブリッド・ボディでも一歩先をいっている感があるが、どうやら、その歴史に新たな1ページが加わることになりそうだ。
 昨年登場した新型S8でデビューし、今度の新型S6とS7スポーツバックにも引き継がれた直噴4リッターV8ツイン・ターボ・エンジン。今回、じっくりと味わう機会を得て、想像以上に革新的な技術が使われていることにかけ値なしに驚いた。
内に秘めた性能の割に外観が控え目なのもSモデルの魅力だ。
 その先進性はまず、アウディご自慢の3リッターV6スーパーチャージャー・エンジンと同様に、ターボ・チャージャーを90度Vバンクの内側に配した点にある。吸気と排気のバルブを内外逆にすることにより、エアの経路が短くなり、よりレスポンスにすぐれた吹け上がりを実現しているというのだが、それだけなら、いかにもマニアックな技術に過ぎない。
 それ以上に先進的なのは、このエンジンが負荷に応じて気筒休止するシリンダー・オンデマンド・システムを備えていることだ。すなわち、燃費向上のため、低負荷時には左右2気筒ずつ4気筒のバルブを閉じて休止させ、V4になってしまうのだ。これぞ究極のダウンサイジング!
 もっともこれだって、自動車の歴史を繙けば、これまでにもあったじゃないかと言うムキもあるかもしれない。ところが、「技術による先進」の真骨頂はその先にある。なんとV4になった時に発生する不快な音と振動を消すため、逆位相の音と振動を人工的に発生させて相殺するアクティブ・ノイズ・コントロールとアクティブ・エンジン・マウントを装備しているというのである。
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基本デザインはA6と同じだが、つや消し仕上げのアルミ・パネルを標準装備するなど、スポーティ感を演出したインパネ。
ボーズのヘッドフォンみたい


 いったい、乗るとどんな感じがするのか。ミュンヘン空港にあるアウディ・フォーラムを起点にした試乗会には、S6のセダンとアバント、それにS7スポーツバックの3車種が用意されていた。いずれもパワートレインは同じで、気筒休止する直噴4リッターV8ツインターボに7段Sトロニック自動マニュアルを組み合わせ、トルク感応式のセンター・ディフを介して4輪を駆動する。まずは3台の中で一番軽くベーシックなS6セダンから試乗することにした。
 一目見て、フツーのA6とは明らかに違う佇まいを見せながらも、決してその違いを声高に主張したりはしない節度が、アウディSモデルのいいところ
オプションのヘッドレスト一体型Sスポーツ・シートは座り心地もホールド感も抜群だ。
だ。新型S6もまさにその文法通りに仕立て上げられている。
 アルミ製のドアを開け、運転席についてエンジンのスタート・ボタンを押すと、勇ましい音をたててV8ユニットに火が入ったかと思ったら、一瞬のちに、その音がスーッと消えていくような気がした。この感じはどこかで味わったことがある。そうだ、いつも海外に行く飛行機の中で使うボーズのノイズ・キャセラー付きヘッドフォンのスイッチをオンにした時の感じに似ている。どうやらエンジンに火が入った瞬間、アクティブ・ノイズ・コントロールとアクティブ・エンジン・マウントが反応し、余計な音と振動を消しにかかるようになっているらしい。
 走り出しても室内は常に静けさに包まれており、少し硬めのエア・サスペンションを備えた足まわりも抜群に洗練されているから、乗り味はどこをとっても荒々しさとは無縁である。だが、アウトバーンに入ってひとたびアクセレレーターを床まで踏みつければ、顔色ひとつ変えずに、アッという間に時速200km/hを超えていくような速さを持っている。その時、420psのパワーの奔流とともにV8ユニットが奏でるドラム・ロールのようなビート音は、消されることなく、しっかりと耳に届くようになっていたのが印象的だった。
 このノイズ・コントロール・システムは、室内の天井に内臓された4個のマイクが常に音を拾っており、事前に設定された不要なノイズを検出すると、スピーカーから逆位相の音をだして打ち消す仕組みだという。
 一方、アクティプ・エンジン・マウントの方は、エンジンの左右のマウント部分にふたつの電磁コイル式の振動発生装置が備えられており、4気筒モードの時に発生する不快な2次振動を、位相をずらした逆振動を発生させて相殺する。これは基本的に4気筒モードの時にのみ働くが、アイドリング時にV8が発生する4次振動を消す働きもしているという。


(写真左)後席にも腰や腿のあたりに張り出しがある。(写真中央)気筒休止してV4になると燃費計のグラフが緑色になる。(写真右)Vバンク内にふたつのターボを備えたV8ユニット。

いつ4気筒になったか分らない


 驚いたことに、運転していても、いつV8がV4に切り替わっているのかがまるで分らない。初めは、余程のことがないと4気筒モードにはならないのかと思っていた。しかし、最初の試乗を終えてエンジニアに訊いたら、今回の試乗コースを普通に走れば、4割近く4気筒になっているはずだと言われて呆気にとられた。
 改めて試してみると、先程はナビに使っていたメーターの間にあるモニターでオンボド・コンピューターの燃費計を表示していれば、瞬間燃費を示す帯グラフの色が白から緑に変わり、4シリンダー・モードの文字が出ることで、4気筒に切り替わったことが確認できるのが分った。 しかし、体感的にそれを知覚することは、最後まで私にはできなかった。
 それにしても、よりスポーツ志向を高めたSモデルに、わざわざこんな複雑なシステムを使ってまで気筒休止が必要なのか、首を捻りたくもなってくるが、そのおかげで、なんと先代より25%も燃費が良くなっているというのだから、その成果は大いにあったと言うべきなのだろう。
 それに、いくら燃費向上に努めたといっても、いささかもスポーティさを減じてはいない。今回の試乗コースにはほとんどワインディング・ロードが含まれていなかったが、それでも、ハンドリングの良さの一端はかいま見ることができた。アルミとスチールの軽量ハイブリッド・ボディの恩恵は絶大で、アウトバーンでの矢のような直進安定性に加えて、積極的にコーナリングを楽しみたくなる軽快感もあわせ持つ。そして、基本的な乗り味は、S6アバントもS7スポーツバックもすべて共通で、とにかくすべての動きが滑らかで洗練されている。乗り心地に関しては、ボディがより重いアバントとS7の方がやや優れていたが、その分、S6セダンはスポーツ性能がより高いと思った。むろん差は僅かなのだが。
 いずれにせよ、これは昨今のパワー競争を繰り広げてきたハイパフォーマンス・スポーツ・セダンの潮流に一石を投じる問題作だ。荒々しさや獰猛さとは無縁の、新時代のジェントルなアスリートが誕生した。


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S7よりさらに5kg重いアバントも4.7秒。
S7スポーツバックは50kg重くなるため、0-100km /h 加速はS6の4.6秒に対し、4.7秒となる。


片側2本ずつ計4本の排気管を持つ。



  
 アウディS6
駆動方式エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高4931×1874×1440mm
ホイールベース2912mm
車両重量1895kg
エンジン形式直噴4リッターV8DOHCツイン・ターボ
排気量3993cc
ボア×ストローク84.5×89mm
最高出力420ps/5500rpm
最大トルク56.1kgm/1400-5200rpm
トランスミェション7段自動MT(Sトロニック)
サスペンション(前)マルチリンク/エア
サスペンション(後)マルチリンク/エア
ブレーキ前後とも通気冷却式ディスク
タイヤ255/40R19
車両本体価格未定(日本上陸は今年秋頃)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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