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ロールズ・ロイス・ファンタム・ドロップヘッド・クーペ、日本初試乗!


ROLLS-ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE/ロールズ・ロイス・ファンタム・ドロップヘッド・クーペ
ROLLS-ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE
ロールズ・ロイス・ファンタム・ドロップヘッド・クーペ



2号車が待ち遠しい。

世界最高価格の実用車、ロールズ・ロイス・ファンタムに追加になった、
2ドア・コンヴァーティブル・モデルへの試乗がかなった。
年産250台が予定されるオープン・ロールズの出来ばえは?
文=鈴木正文(本誌) 写真=望月浩彦



 ロールズ・ロイス・ファンタム、4550万円と同ドロップヘッド・クーペ、5218.5万円、あわせて9768.5万円の2台のロールズをともに車庫に収めることに意味があるか?という相談を、どこかの御仁から受けたとしたら、僕なら「意味がある」と応える。
 この2台はともに、「ベスト・カー・イン・ザ・ワールド」のつくり手を自認するロールズの看板にふさわしい入念なクラフツマンシップと、贅沢なエンジニアリングの産物であり、おなじV12+6ATのパワートレインによって走る。おなじといえばおなじクルマだ。しかし、こんかい試乗した2ドア4人乗りのドロップヘッド・クーペ(dhc)は、2003年に先行デビューした4ドア4人または5人乗りのファンタムの、たんなるバッジ・エンジニアリング・モデルではなかった。独自の個性をもつロールズだった。ということは4ドアのファンタムもまた、独自の存在理由を主張できる1台でありつづけている、ということだ。ゆえに、2台を同時所有したとしても、重複の愚を犯すことにはならない、というのが僕の回答だ。


右のファンタムはことしは900台以上つくられる見込み
右のファンタムはことしは900台以上つくられる見込み。08年から本格的生産に入るdhcは最大で年産250台以内の見込みという。
ファンタムとのちがい

 4ドア・ファンタムと2ドアdhcを箱根で乗り較べると、dhcがはっきりとよりスポーティになっていることがわかった。そのスポーティさは、スロットル・ペダルを踏んで得られるトルクのピックアップがよりすばやいことや、ステアリング操作への反応がわずかとはいえ明瞭に速いことに端的に現れている。6.75リッター直噴V12とシャシーの双方に、dhc専用のチューニングが実施されているのだ。
 dhcの2620kgの車重はファンタムより70kg重い。しかし、ホイールベースはファンタムの3570mmより250mm短い。また、トップを降ろした状態ではいうまでもなく、幌をしていても車高じたいが約50mm低いという事実もあって、重心が低くなっている。さらに、転覆時にキャビンを支えきるために大幅に強化されてシルにまで届くように設計されたAピラーゆえに、重心点は低くなっただけでなく前方に移動してもいる。それゆえ、カーヴでステアリングを切ったときに車体がより早く向きを変え、S字コーナーなどの切り返し時にも、車体のゆり戻しによるロールの残響がほとんど感じられず、ピタッとボディがおさまる。前後重量配分が50対50になっているのは、BMWグループのメーカーとしての面目躍如でもある。エア・サスペンションもコーナリング時のロールを抑える方向にチューンされており、dhcを運転して体感するスポーティ度は、この大きなボディから想像しにくいぐらい高い。
ROLLS-ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE
(写真上段)見えるものと触れられるものは天然素材のみ。(写真中段)460ps/5350rpm、73.4kgm/3500rpmの6.75リットル。(写真下段)チーク材のリア・デッキはヨットに着想を得たもの。
ロールズ・ロイス・ファンタム・ドロップヘッド・クーペ
(写真上段)ロールズのシンボル、スピリット・オブ・エクスタシー。(写真下段)3角形のフレーム構造によって強化されたAピラー。
どっちを取るか?

 いっぽう、4ドア・ファンタムはステアリングの応答速度も、スロットル・バルブの開きかたも、ゆったりしている。新ダンパーを得たdhcが引き締まったフラットな乗り心地を印象づけるのにたいして、こちらは凪の海を行く大型船のように、ゆったりとした振幅のここちよいクッション感によって、より深い乗り心地をもたらす。ロールズの名前から想像する悠然たるドライヴ・フィールの点では、4ドアが一枚上手だ。とはいえ、dhcにはオープン・エア・ドライヴの爽快感と、ソフト・トップ付きの肩肘張らないルックス、そしてさらに念入りになったクラフツマンシップの魅力がある。とくに、サイド・ウィンドウも降ろし切ると、dhcの真骨頂が味わえる。大地が匂い、風の歌が聞こえ、太陽が暖かいことを知るからだ。
 アルミ・スペース・フレームによるボディの堅牢さはポルシェ911カブリオレに勝るとも劣らない。フル・オープン時に荒れた路面を走ったときだけ、フロアの微振動を察知できるに過ぎないからだ。オープン時に雨に降られたあと、濡れた室内をサッと拭き取ることができるように、1枚あたりのレザーの面積を大きくとって凹凸を最小限にした配慮や、クラシック・ヨットのようなチーク材によるリア・デッキの調度には、ため息が出るばかりだ。そして、時計ケースのようにヘアライン仕上げされたステンレス製ボンネットの存在感は圧巻だ。4ドアかdhcかの選択を迫られたら、大人4人が苦もなく乗れる居住性を持つことでもあるし、dhcを選びたくなるのかなとおもった。
 ところで、ロールズ・ロイスは世界でもっとも高価な実用車である。しかし、それが行う「実用」は、96万円のトヨタ・パッソが行う「実用」と、実用実現度においてなんら変わらない。とはいえ、パッソの50倍のコストをかけて行う「実用」だから、そのプロセスに50倍の威厳が伴ってこざるをえない。そこにロールズ・ロイスの、むかしもいまも変わらぬ価値がある、と僕はおもう。
 
 
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