デッド・スムーズ
標準装備のパドル・スイッチを押して6ATを2速に落とし、フル加速を試みる。1.6リッター直4ツインスクロール・ターボがオーバーブースト機能により26.5kgmの最大トルクを絞り出し、全体重をバックレストにググッと押しつける。旧型より速い! エンジンは回転マナーもよく、レブ・リミットの6500rpmまで、クォーンという快音を発しながらデッド・スムーズに吹き上がる。
旧型のスーパーチャージャーつきエンジンの“ミャーン”という猫の鳴き声のようなサウンドも味があって嫌いではないけれど、洗練度とトルクの厚みは新型があきらかに上だ。
この日の取材に同行してくれたロータス・エリーゼ乗りのウエダ君とふたり、屋根を開け放った新旧を乗りかえながらスバルラインや西湖周辺を駆けまわる。1時間ほど経ったところでクルマを停めて彼に訊ねた。
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オプション装備の“オールウェイズ・オープン・タイマー”は、屋根を開けて走行した時間を最大6時間59分59秒まで表示する。
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乗り心地とボディ剛性、どう?
「ボディの剛性感は、新型も旧型も同じくらいですね。乗り心地は若干、新型のほうがいいような気がしますが、ほとんど変わらない印象です」
そうだよね! 自分のクルマをひいき目にみているかも、と気になっての問いかけだったが、新旧の剛性感と乗り心地に大きな差はない。荒れた路面では若干スカットル・シェイクを感じるものの、ボディは両車ともしっかりしており、屋根がないぶんボディがたわんで路面からのショックを吸収するから、普通のミニより乗り心地がいい。なお、新型は旧型のシャシーをベースにアルミ部品を多用して軽量化をはかり、フロアやAピラーを強化して衝突安全性を高めた、とメーカーは主張する。
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撮影を終えたあと、東富士有料道路を通り箱根の山道へ攻め込んだ。
ハンドリングは、ヤンチャな旧型、大人な新型、という印象だ。旧型の電動パワー・ステアリングの操舵感は重めで、荒れた路面からのキックバックもガンガン手に伝えてくる。そのぶんダイレクト感にあふれ、クイクイ曲がる“ゴーカート・フィーリング”がより強く味わえる。
新型は、ステアリングが旧型よりやや軽いため軽快に操舵でき、リラックスしてスポーツ・ドライビングが楽しめる。切り込んだときのノーズの動きは旧型よりやや穏やかで、ロールの収束も自然な感じだ。タイヤとステアリングが超高速回線で結ばれているかのように、路面のシワまで明確に手に伝わってくるところは旧型同様で、安心して飛ばせる。
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トランク容量はクローズ時170リッター、オープン時125リッター。ルーフの後端が持ち上がるため、大きな荷物の出し入れが旧型より容易になった。
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東富士有料道路での直進安定性は、新型のほうがよかった。新型は多少轍があってもチョロチョロせず、ステアリングに軽く手を添えているだけでまっすぐ、弾丸のように走る。
燃費は新型の勝ち。約250km走ってオンボード・コンピューターが表示した数値は、6MTの旧型が12.2km/リッター、6ATの新型が13.4km/リッター。最新の直噴ターボ・ユニットはやはり燃費がよく、高速道路では15km/リッター台をマークした。
新型コンバーチブルは、お金のかかった旧型の基本シャシーやサスペンション形式を継承しつつ、エンジンなどアップデートすべきところは一新して、洗練度や環境性能を高めている。旧型乗りが、ここはこうなったほうがいいかな、と思っていた箇所がしっかり改良された王道のモデルチェンジだ。クーパーSコンバーチブル(6AT)の価格は、旧型比12万円高の358万円である。
最高出力120psの1.6リッター自然吸気エンジンを積むクーパー・コンバーチブルは6ATが318万円、6MTが299万円。本革シートはオプション
電動キャンバス製ルーフはブラックのほかブラウン、デニムブルーが用意される。
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| ミニ・クーパーS コンパーチブル |
駆動方式 | フロント横置きエンジン、前輪駆動 |
全長×全幅×全高 | 3715×1685×1415mm |
ホイールベース | 2465mm |
トレッド 前/後 | 1455/1460mm |
車両重量 | 1320kg |
エンジン形式 | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ・ターボ |
総排気量 | 1598cc |
最高出力 | 175ps/5500rpm |
最大トルク | 24.5(OB:26.5)kgm/1600-5000rpm |
変速機 | 6段AT |
サスペンション形式 前 | マクファーソン・ストラット/コイル |
サスペンション形式 後 | マルチリンク/コイル |
ブレーキ 前/後 | 通気冷却式ディスク/ディスク |
タイヤ 前/後 | 205/45R17 |
車両本体価格 | 358万円(試乗車は464万円) |