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本誌編集長、鈴木正文の「新・自動車評論」 第4回 シヴォレー・コーヴェットZ06


CHEVROLET CORVETTEZ 06
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CHEVROLET CORVETTEZ 06
箱根ターンパイクの中速コーナーを、ほとんどロールを見せず、安定感たっぷりに攻略する。



アメリカン・フィーリング!


誕生した1954年からこんにちまで、アメリカ唯一の量産ピュア・スポーツカーとして光彩を放ってきたコーヴェット。そのスーパー・モデル、Z06に乗って、アメリカ文化を思う。
文=鈴木正文(本誌) 写真=望月浩彦


ポップとはなにか?

 ポップということばがある。ポップス=ポピュラー音楽=流行歌というときの「ポップ」だ。「ポピュラー」(大衆的、民衆的)の短縮形である。ポップ・アートといういいかたもあって、これはスーパーマンの漫画とか広告とか、あのアンディ・ウォーホルが題材にしたキャンベルのスープの缶詰のような大衆的商品とかのシンボルを、そのまま用いて芸術化したもののことをいう。ウォーホルといえば、マリリン・モンローも大統領だったジョン・F・ケネディも、コカ・コーラのボトル同様、かれのアートの題材になった。ポップ・カルチュア上では、安物のスープの缶詰と、合衆国大統領という最高権力者とが、権利上は同等だ。そういうやり口が「ポップ」なのだ。
2685mmのホイールベースは、4465×1935×1250mmのボディにたいして、とくに長いわけでも短いわけでもない
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2685mmのホイールベースは、4465×1935×1250mmのボディにたいして、とくに長いわけでも短いわけでもない。ブレーキはZ06専用で前6、後ろ4ピストン。
 階級文化にがんじがらめになっているヨーロッパのような旧い社会の人には、こういうアメリカンにポップなカルチュアは、きっとクールに見えるのだろうけれど、それはさておき、511馬力と、458イタリアがデビューするまえのV8フェラーリ、F430の490馬力をもしのぐパワーのコーヴェットZ06は、ポップなアメリカの超高性能スポーツカーである。超高性能であってもポップ、という点にポイントがある。
 500馬力を上回る超高性能は通常、自動車文化的には、えらばれたごく少数の人たちのためにある。エリート用に閉じられた性能である。
 フェラーリF430に乗る人は、トスカーナとかカプリとかに粋な別荘を持っていて、夏は地中海にヨットを浮かべ、冬はアルプスでスキーに興じたりしている「ハイ・ライフ」(上流生活)を生きている人だ、ということが、ヨーロッパではふつうに了解されている。そんなハイ・ライフスタイルの必須の道具立てとしてフェラーリがある。
 いっぽう、コーヴェットとなると、「ハイ・ライフ」の必需品とはかぎらない。ハイ・ライフを享受しているオウナーもいるだろうが、クルマ以外にライフ的な趣味のない人もいるだろうことが予想される。存在としての間口の広さ、だれでもウェルカムというオーラがコーヴェットにはあり、それはスーパー・コーヴェットであるZ06でも変わらない。

OHVであることの意味

 コーヴェットZ06のポップな持ち味は、文化的ポジショニングだけのことではない。そのドライブ・フィールもそうなのだが、それについて述べるまえに、Z06の偉大なエンジンについてひと通りのことを述べておかなければならない。
 クーペのベース・モデルで713万円の通常のコーヴェットが6リッターの排気量から404ps/6000rpmの最高出力と55.6kgm/4400rpmの最大トルクを発揮するのにたいして、価格も985万円へとジャンプするハイ・チューン・モデルであるZ06の7リッターは、511ps/6300rpm、64.9kgm/4800rpmをたたき出す。490ps/8500rpmのフェラーリF430が55.8kgm/5250rpmの最大トルクであることにくらべれば、トルクがふた回りぐらい強大なことに気づく。
アメリカに迫られて開港した横浜の、日本最初の西洋ホテル、ニューグランド前で
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アメリカに迫られて開港した横浜の、日本最初の西洋ホテル、ニューグランド前で。
 それにZ06の7リッターは古式ゆかしいOHVだ。それはひとつには、アメリカン・マッスル・カーとしての名分を立てるということもあったのだろうけれど、それだけではない。GMの開発陣は、7リッターもの大排気量エンジンなら動弁機構をDOHCにするなどして高回転化をはからずとも必要なパワーを出せるし、プッシュロッドの方が重心高を低く抑えることができ、スポーツカーとしての運動性能により利益がある、と判断したのである。そのうえで、このオール・アルミ・ブロック・ユニットに、チタニウム製のコンロッドとインテーク・バルブや、アルミ鍛造によるフラット・トップのピストン、鍛造スティールのクランクシャフト、そして強大な横G下でも潤滑がそこなわれないドライ・サンプ式潤滑システムといったレーシング・テクノロジーを随所に盛り込んだ。かくしてこれは、現代のスーパースポーツらしからぬ形式ながら、モダンで研ぎ澄まされた中身を持つレーシーなエンジンとなったのだ。
 ということなのだが、このエンジンの成り立ちには、通りいっぺんの「常識」にとらわれずにじぶんの頭でかんがえた柔軟なオリジナリティがある。僕はそこを高く買う。

CHEVROLET CORVETTEZ 06/シヴォレー・コーヴェットZ06
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CHEVROLET CORVETTEZ 06/シヴォレー・コーヴェットZ06
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ヘッドアップ・ディスプレイで、速度、エンジン回転数、燃料残量が表示される
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左の液晶ディスプレイはドライバー席前面のフロント・ガラスに投影されるヘッドアップ・ディスプレイで、速度、エンジン回転数、燃料残量が表示される。レース・モード時には横Gも示す。フロアはフロント・フェンダーともどもカーボン・ファイバー製。タコメーターの目盛りは7500まで刻まれるが、7000からレッド・ゾーン。速度計は320km/hまで切られている。変形梯子フレームはアルミ製。6段MTギアボックスにはオイル・クーラーが備わる万全の配慮がなされている。上段左のドライビング・ショットは箱根ターンパイクで撮った。Z06がもっとも得意にするステージだ。


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