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「批評的対話」によるザ・比較テスト 第13回
フィアット 500 ツインエア・ラウンジ(245万円)
フィアット 500 1.2ラウンジ(225万円)


FIAT 500 1.2 LOUNGE/フィアット 500 1.2ラウンジ FIAT 500 TwinAir LOUNGE/フィアット 500 ツインエア・ラウンジ
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(手前)FIAT 500 TwinAir LOUNGE
●0.9リッター直2ターボ搭載の上級モデル
●85ps/14.8kgm+5段自動MT
●1040kg。10.15モード21.1km/リッター


(奥)FIAT 500 1.2 LOUNGE
●1.2リッター直4搭載のベース・モデル
●69ps/10.4kgm+5段自動MT
●1020kg。10.15モード17.6km/リッターを採用。


FIAT 500 TwinAir LOUNGE&FIAT 500 1.2 LOUNGE

FIAT 500 TwinAir LOUNGE
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FIAT 500 1.2 LOUNGE
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FIAT 500 TwinAir LOUNGE
エンジン出力に余裕があるので、登り勾配のコーナー手前での到達速度が1.2よりずっと高かった。ロール角が深いのはそのせい。脚は前がストラット、後ろがトーションビーム。前後ともにスタビライザーを備える。試乗車のタイヤはグッドイヤー・エフィシェントグリップの185/55R15H。全長×全幅×全高=3545×1625×1515mm。ホイールベース=2300mm。車重=1040kg(前軸680kg:後軸360kg)。
FIAT 500 1.2 LOUNGE
パワーに余裕のない1.2は登り勾配が苦手。全開でもツインエアのような速度には達しないので、ロール角が浅い。脚の硬さは大差ないが、ダンピング能力はツインエアに及ばない。うねりを越えるときなどに少しあおられる。試乗車のタイヤはコンチネンタル・プレミアムコンタクト2で、サイズはツインエアと同じ185/55R15H。ボディ・サイズも同寸。車重は1020kg(前軸660kg:後軸360kg)。



2気筒と4気筒、2台の500対決!


フィアット500の今後の主力となる新開発ユニットを載せた“ツインエア”が上陸した。わずか875ccの2気筒にターボ過給して1.4リッター相当の85psを発揮するその新型の実力はどうなのか?69psの4気筒1.2リッターを積むベース・モデルと比較して、その真価を検証した。
話す人=齋藤浩之+村上 政(ともに本誌) 写真=小野一秋


価格差は20万円

齋藤 フィアット500に久しぶりに乗って、どうだった?
村上 今回の比較テストは失敗だね。この2台は比較にならない。勝敗ははっきりしている。ツインエアの勝ち、というより、この先、500を買う人は20万円をケチることなく、ぜひともツインエアを買うことをお薦めしたい。のっけから結論いっちゃって、ゴメンナサイ。でも、それぐらい大きな差があった。
齋藤 って、この後の話の展開はどうするの? いきなり断言して。
村上 だって、エンジン性能だけでなく、乗り心地からステアリングの感触、ハンドリングまですべてが、ツインエアの方が段違いに洗練されていた。1.2はオシャレなシティ・カーとして割り切って買うならいいけど、あと20万円足せば、オシャレに加えて、走りも思いっきり楽しめるツインエアが手に入るんだから、そっちの方がずっといいでしょ。
齋藤 なんといってもツインエアは、楽しい。面白い。僕は先月、上陸後すぐに乗ることができたけれど、想像した以上に楽しいクルマだった。だから、異論はないよ。
村上 それにしても、2気筒のエンジンが現代の自動車に載せて通用するなんて、思ってもみなかった。試乗するまでは、いくらダウンサイジングばやりでも、バイクじゃあるまいし、2気筒はやりすぎでしょ、と疑っていた。なんだかんだ言っても、やっぱり4気筒のほうが洗練されているに決まってる、ってね。
齋藤 でも、そうじゃなかった。2気筒は現代にも立派に通用する。

1.2は遅い!?

村上 この2台を比べると、1240ccの4気筒は期待ほどキビキビ走らないので、ますます875ccの2気筒ターボが輝いて見えるということもある。品川のフィアットで2台の試乗車を借り出し、最初に1.2で走り始めたら、これが正直言って、驚くほど遅かった。とにかく、信号待ちからの発進で前を走るツインエアにまるでついていけない。
FIAT 500 1.2 LOUNGE/フィアット 500 1.2ラウンジ FIAT 500 TwinAir LOUNGE/フィアット 500 ツインエア・ラウンジ
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齋藤 69psの1.2ユニットは単体ではべつにわるいエンジンではないし、フラットなトルク特性は実用車用として扱いやすいものだと思うけれど、チンクエチェントはクルマが軽くない。だまって1tある。しかも変速機がギア比の広く分散した5段型なので、ああいうことになっちゃう。期待どおりに速度が乗らない。でも、それはエンジンのせいじゃない。そこへいくと、ツインエアは低中速回転域のトルクが1.2とは比較にならないほど大きい。ターボ・ラグもほとんど意識しなくてすむ。しかも、同じく5段しかないといっても、ギア比が最終減速比まで含めて、エンジン特性に合わせてよくよく考えられたものになっている。だてに新しいわけじゃない。信号GPで簡単にアタマをとれる。
村上 しかも、1.2の乗り心地は良いんだか悪いんだか、柔らかいんだか硬いんだか、とらえどころがない。それはステアリング・フィールについても同じで、フィードバックがあるんだかないんだかわからない。ツインエアを追っかけて東名高速を飛ばしていて、ちょっと怖かった。直進安定性にやや欠ける気がした。
齋藤 ステアリングを含めたシャシーのセッティングの煮詰め度合いに大きな隔たりがある。1.2はダンピングが不足してぶかぶかする。時に内臓が揺すられるような動きも出る。ツインエアの動きには適切な締まりがあって、無用な動きが出ない。もうそれだけで印象が断然いい。

“ツインエア”の室内
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“ツインエア”の室内。ボディ同色の化粧トリムを配したダッシュボードの基本デザインはこれまでどおり。ただし、ダッシュボード中央のハザード・スイッチ左の“CITY”ボタンは“ECO”ボタンに置き換えられている。
古くて新しい2気筒

村上 だから、海老名SAでツインエアに乗り換えて、本当にビックリした。これが同じフィアット500かと思うくらい走りがシャキッとしていて、ピントがバチンと合った感じがした。直進安定性もこっちが断然高くて、しかも、ハンドリングもいい。秦野中井から足柄にかけての高速コーナーの連続をすこぶる楽しく走れた。で、2気筒エンジンは驚いたことにトルクもパワーも必要十分以上で、なによりも回転フィールに独特の味がある。
齋藤 2気筒ならではの明確な鼓動を刻む。しかも、回せば一転してスムーズにブン回る。回さなくてよし、回してよし。2つの性格を楽しめる。
1.2ラウンジの空調操作パネル。エアコンはマニュアル式になる
1.2ラウンジの空調操作パネル。エアコンはマニュアル式になる。ツインエアのラウンジはボタン操作のオート式。ヒップポイントの小高いシートは生地も含めてどちらも同じ。
村上 そう。エコにもスポーティにも走れる。なんで2気筒でこんな味のあるエンジンがつくれるのか、ついこの間までのマルチ・シリンダー神話はなんだったのか、疑問が次々に湧いてきて、夜も眠れなくなりそうだから、齋藤さんにその答えをキッチリ聞いておきたいと思ってた。
齋藤 まず、エンジンの基本設計が最新。アルファやランチアが使い始めた4気筒の1750ccと並行して数年前に開発された。カムシャフトはチェーン駆動。低振動化するためにエンジン全高が高くなるのを承知であえて長いコンロッドを採用。2気筒のピストンが左右揃って上下する360度クランク(クルマ用はみなこれ)なので、1次振動を殺すためのバランサーシャフトが入っている。つまり、直列2気筒エンジンとして可能な限り低振動になるような設計がきっちり行われている。しかも、ロングストローク設計で排気量も小さいから、低振動化に有利。トルクとパワーはターボ過給で稼ぐ。ターボは排気脈動を吸収する効果があるから、これも低振動化に寄与する。さらに、すでに1.4リッターの4気筒でも実証されているように、この“マルチエア”ヘッドもスムーズなエンジン回転に大きく貢献している。ちなみにこの新型エンジンを“ツインエア”と呼ぶのは、そのマルチエア・ヘッドを2気筒に組み合わせたから、ということみたい。
村上 なのに、あの明瞭な振動はどうして生まれるの?
齋藤 発進時や街中の走行、あるいは一定速でのおとなしい高速巡航ではせいぜい2000rpm辺りまでの低回転域を使うことになるので、クランク1回転で1回しか爆発しない2気筒エンジンのトルク変動が振動として表面化する。でも、回しちゃえば、爆発間隔は狭くなるから、トルク変動は気にならなくなる。機械的な低振動設計が前面に出てくる。回さなければトコトコなのに回すと一気果敢にビーンと吹け上がるのは、道理なわけだよね。ターボ過給でもあることだし。
村上 問題があるとしたら、その振動が気になるかどうか。それによって、好き嫌いがはっきり出てくるエンジンじゃないかと思った。2000rpm前後でアクセレレーターをONにすると、かなりビリビリと振動が出て、それがステアリング・ホイールにまで伝わってくる。これがスポーティな味と思える人にとっては魅力になるかもしれないけれど、拒否反応を起こす人もいると思う。
齋藤 日本人は一般的にステアリング・ホイールの振動をすごく気にするからね。世界の自動車業界ではこれは定説になっているほど。僕なんかは昔のヌォーヴァ・チンクエチェントを思い出して嬉しくなるよ。
村上 なんだか、バイクに乗っているようなプリミティブな楽しさがある。いずれにせよ、相当に存在感のあるエンジンであることは間違いない。これまで乗った500のベスト。これで、シングル・クラッチ自動変速機のシフトがもう少しスムーズだったら、文句なしに推薦できる。
齋藤 内燃機関好きにたまらないエンジンだよ、面白くて。ちなみに、これ用のツイン・クラッチはただいま開発中。小排気量専用の小型TCTが出ると、合わせてハイブリッドも出てくるということみたい。
村上 それにしても、技術の進歩というのは、直線的に進むのではなくて、グルグルと螺旋的に回りながら前進するものなんだと思った。2気筒なんて前時代の遺物かと思ったら、時代の最先端になっていた。
齋藤 これぞ古くて新しいチンクエチェント。古くて新しい見た目に中身がこれで伴った。めでたし!

ラウンジのルーフ前半部ははめ込みのガラス製
ラウンジのルーフ前半部ははめ込みのガラス製。電動スライド式はオプション。内側に開閉可能なメッシュ生地のサン・シェードが備わる。荷室容量は185リッターと小さいが、後席の背を倒せば、550リッターまで拡大できる。

FIAT 500 1.2 LOUNGE/フィアット 500 1.2ラウンジ
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FIAT 500 TwinAir LOUNGE/フィアット 500 ツインエア・ラウンジ
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コンベンショナルな自然吸気直4エンジン
ダウンサイジングの最先端を往く2気筒

コンベンショナルな自然吸気直4エンジン
可変機構をもたないシンプルな2バルブSOHCヘッドを使う自然吸気の1240cc直4エンジンは、最高出力=69ps/5500rpmと最大トルク=10.4kgm/3000rpmを発生する。1.2搭載モデルの場合、ラウンジ仕様でもヘッドライトはハロゲン球を使った反射集光式で、フォグランプは付かない。

ダウンサイジングの最先端を往く2気筒
電子制御油圧駆動の吸気バルブ開閉機構をもつ875cc直列2気筒ターボの“ツインエア”エンジンは、最高出力=85ps/5500rpmと最大トルク=14.8kgm/1900rpmを発生する。ツインエア・ラウンジのヘッドライトはプロジェクター・レンズを使ったバイキセノン型となり、フォグランプも標準装備される。





右足の使い方で大きく変化する燃料消費率
右足の使い方で大きく変化する燃料消費率

“ツインエア”の燃費はあなた次第


ターボが備わり意外なほどの速さを見せるフィアット500ツインエアは、心穏やかに、のんびり走れば、あっと驚く小食ぶりを見せ付ける。
文=齋藤浩之(本誌)


2気筒チンクエチェントはケチケチ運転で変身する。

フィアット500ツインエアを走らせて、「これ、燃費いいな」と思うか、「なんだ、けっこうガソリン喰うじゃないか」と思うかは、運転の仕方次第だ。
 燃料消費率が道路事情や走り方にあまり影響を受けないタイプのクルマというのがある。例えば、今回一緒に走らせた500の1.2がそうだ。大したパワーの持ち合わせがないおかげで、ガンガン右足を踏み込んで走らせても、燃料消費量はさして増えない。誰が運転しても、いともたやすく15km/リッター超えを記録する。でもエコランよろしくケチケチ運転を心がけてみても、そこからグンと数字が伸びたりということはない。
500ツインエアは、その反対だ。とくに燃費を意識することなく威勢よく走り回っていると、今回のように12〜13km/リッターぐらいにしかならない。走り方を振り返って冷静に考えれば、それでも決してわるくない数字だということに気づくのだけれど、クルマが小さいものだから、もっとよくても、とつい欲が出てしまう。
 そこで、どれぐらいの燃費性能なのかを知るべく、定速走行燃費を測ってみた。高速道路の上り下りの少ない区間で、車載のドライブ・コンピューターの平均燃費モードを使って、数字が安定するのに十分な距離を走って出た数字は、80km/h巡航で27.5km/リッター、100km/h巡航では25.0km/リッターとなった。速度計には甘い方へ誤差があるのが常だから、試しにとメーター110km/hで採ってみると、19.0km/リッターと出た。ついでに、60km/hでも試すと、軽く30km/Lオーバーの数字が出た。
 100km/h定速走行時に必要とする出力は空力特性の良好な500の場合、わずか20数馬力に過ぎない。85psを出せるエンジンにとっては完全に低負荷領域だ。ツインエア・エンジンはそういう状況に強い。
郊外の長閑な道を60km/hで走れば、30km/リッター超えも夢じゃない
郊外の長閑な道を60km/hで走れば、30km/リッター超えも夢じゃない。 10.15モード燃費の21.2km/リッターは現実的な数字だ。
 ガソリン・エンジンの出力調節にはガソリンと空気、両方の供給量を調整しなければならないのだけれど、吸気バルブ開度特性を、電子制御の油圧介在駆動システムに任せることで、気筒毎に緻密に個別制御できるようになったマルチエア・システムは、吸入量の調整だけでなく吸入量の多寡に依らずに燃焼室内の渦流をコントロールできるようになり、低負荷、部分負荷時の燃焼効率が画期的に改善されている。それが歴然と効いてくるのである。ベースの排気量は875ccしかないうえに、2気筒だから摩擦損失も小さい。おとなしく走るとググッと燃費が良くなる。
 フィアット500ツインエアの変速機は5段しかなく、しかも5速はOD。それでいて最高速度は173km/hにも達するからギア比は広く分散していて、多段型のように低い回転数を保ったまま次々にシフトアップというわけにはいかない。しかも、エンジンが嬉々として回りたがる性質なので、ついつい余計に回してしまう。すると、これはターボ過給して優に1.4リッター級の仕事をこなせるように仕様が組まれているから、速さをフルに引き出せば、燃費は相応のものになる。マルチエアで低負荷への対応能力を引き上げ、ターボ過給で高負荷への適応能力を引き上げたワイドレインジ化が、ツインエアの肝なのだ。だから、右足の使い方で燃料消費率は大きく変わる。「そんな丁寧にアクセルペダル扱ってられないよ」という向きは、ダッシュボードECOボタンを押せば、電子制御プログラムがフィルターをかけてくれる。巧妙ですよ。








(2011年6月号掲載)
 
 
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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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