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ついに上陸した新世代アルファ・ロメオ!
ジュリエッタは期待に違わぬクルマだった。


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ALFA ROMEO GIULIETTA



ジュリエッタは足が速い!!


待ちに待った“ジュリエッタ”が日本へやってきた!
果たして、ジュリエッタは走れば走るほどに味わいの深まる、シャシー・ファスターなスポーティ・ハッチだった。これはアルファ・ロメオが新時代に突入したのを告げる傑作だ!
話す人=鈴木正文+村上 政+齋藤浩之(すべて本誌) 写真=望月浩彦



スズキ ジュリエッタ。名前がいいよねぇ。アルファ・ジュリエッタ。前振りとして国際試乗会にいった齋藤君に説明してもらいましょうか。行ってきたのはずいぶん前だよね。
齋藤 ええ。ヨーロッパでは1年前に発売されてすぐさまスマッシュ・ヒットになって、イタリアだけでなく、フランスなどでも人気を博しているようです。ずいぶんと見かけるようになりました。日本導入が2012年1月の今になったのは、ひとつにはTCT(ツイン・クラッチ・トランスミッション)を搭載した2ペダル・モデルの生産立ち上がりが少し遅れたからです。それと、どうも東日本大震災の影響もあったようです。日本のサプライヤーに頼る部品もあったと関係筋から聞きました。それはともかく、日本についにやってきたジュリエッタですが、3モデルあります。どれも右ハンドルで、エンジンはガソリン仕様の2種類。スプリントとコンペティツィオーネはともに1.4リッターのターボ過給型。クアドリフォリオ・ヴェルデは1750ccのターボです。変速機は1.4が6段TCT。1750は6段ですが、3ペダルのMTです。
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スズキ TCTはどこの会社の?
齋藤 フィアットの子会社で、パワートレインの開発・生産が専業のFPT(フィアット・パワートレイン・テクノロジーズ)社のものです。新しい3軸式のマニュアル・ギアボックスを開発するのに合わせて設計されたツイン・クラッチ変速機で、独自のものです。内部構造がMT版と大部分同じ。乾式単板クラッチを使うきわめてシンプルな仕組みが特徴です。エンジンと一緒に回転するクラッチ・プレートが1枚だけあって、その両側にプレッシャー・プレートが設けられています。普通のMTだとプレッシャー・プレートはスプリングの力で押し付けられるのですが、TCTではこれを油圧で押し付ける。その作動油圧を電子制御しているわけです。仕組みを見せられると、こんなに単純なやり方があったかと、感心します。噛み合うギアセットを選ぶシフト・フォークの作動も人力の代わりに油圧で行う。その置き換えが行われているだけです。
スズキ フィアット・グループといえば、色々なブランドを抱えて、ひとつのプラットフォームから次々とクルマを派生させてきた歴史があるけれど、ジュリエッタの場合はどうなっているの?
齋藤 鋼板を小さく分割してサイズや形状の自由度を上げるというモジュラー・プラットフォームのコンセプトでやってきたことがランチアのデルタでひと段落がついて、そこまでの経験を活かした上で新規に起こしたスティール製の新型プラットフォームを使っています。これがジュリエッタで初めて投入されたものです。軽量で剛性がきわめて高いのがウリで、前面衝突時の乗員保護性能も、市販開始時点でクラス・トップという結果が出ています。このプラットフォームがジープ/クライスラーも含めたフィアット・グループのすべてのブランドで使われることになっているそうです。これをベースにしたジュリエッタのボディ剛性の高さはちょっと信じられないほど高いものになっているのが、乗ればわかりますよね。
村上 フィアットやランチアでも使うことになるわけ?
齋藤 サスペンションなどは変えるでしょうが、使うことになるみたいですよ。まず、アルファの開発要件を満たすように作ったことによる恩恵に、他ブランドが与るわけです。
スズキ エンジンはアルファ専用?
齋藤 1990年代に開発された4/5気筒で1.4〜2.5リッターをカバーした通称スーパーFIRE系のエンジンは御役御免になりました。で、それよりも前からある小さなFIRE系の最大排気量である1.4リッターにターボ過給を施したユニットが、ガソリン・エンジンの主軸になっています。欧州市場向けには120psと170psがあって、日本へは170ps仕様だけが入ります。120ps型はコンベンショナルなDOHC4バルブ・ヘッドですが、170ps型は電子制御した油圧で吸気バルブの開度特性を自在に操るマルチエア・ヘッドを載せています。アイドリング・ストップ機構も付いています。もうひとつの1750という懐かしい排気量のエンジンは、基本設計でいうとフィアット・グループでは最新のものです。159系の後期型に採用されたほか、ランチアのデルタにも載っています。デルタの場合には200psでアイシンの6ATと組み合わされていますが、ジュリエッタのクアドリフォリオ・ヴェルデ用は235psとハイ・チューンで、TCTとは別系列の大容量型6段MTが組み合わされています。2ペダルの設定はそもそもありません。予定もなさそうです。というわけで、パワートレインの基本はアルファ専用ではないのですが、組み合わせ方や出力特性が専用の仕立てになっています。スロットル開度特性をガラリと変えるアルファDNA(ダイナミック/ノーマル/オールウェザー)というプログラム切り替え機構が専用といえますかね。

筆記体で綴られた名前が美しい。小さなジュリア。
それにしてはボディはちと大きい?
なんといっても脚がイイ

村上 ジュリエッタには大きな期待を寄せていたんだよね。日本ではほとんどミトしかない状態になっていたでしょう。どうしたって期待する。
齋藤 期待に応えてくれなかった?
村上 目の前にしてみたら、なんかミトの大きなやつみたいな顔してるでしょ。あれっ? と思った。これ、大丈夫かなと不安が……。でも、後ろへ回ると、カッコいいんで、イケると思い直した。
齋藤 美人じゃないかもね。でも、それもアルファでしょう。最近は美人系ばっかりだったけど。
村上 数日前に最初に乗った時に、なんか古くさい感じを覚えて、昔と変わってない? と思ってしまった。ステアリング・ホイールのデザインとかがね。走らせても、反応がもさっとしてて、なんか走らないなぁと。DNAのN、ノーマルで走っていたからなんだね。Nが実質的にエコ・モードだと知らなかった。それで、Dに切り替えたら、変貌した。まるで違うクルマになった。それからは乗れば乗るほど、走れば走るほどに印象が好転していった。味わいが染み出てくる。これが2日3日、ひと月1年と共にしていくと、離れられない相棒になるような予感がする。
齋藤 ボディにしても脚にしてもタイヤにしてもキャパシティがほんとうにデカイ。その実力のほんの一部分しか使わないような大人しいチョイ乗りでは、その器の大きさが裏に隠れてしまう。ところが、あれこれやっているうちにいくらでもこちらの要求に応えてくれることがわかってくる。脚の良さ、それを支えているボディの高い剛性、タフなブレーキといった走らせてナンボの部分がじわじわと表に出てくるんだよね。中身が本物なんですよ。高速道路とか、山道を走らせたら、クラス随一なんじゃないでしょうか。
スズキ ぼくはクアドリフォリオ・ヴェルデから乗ったんだけど、クセがあるよね。パツンと唐突ぎみに繋がるクラッチとかね。インテリアには好感をもったよ。誰にも似てない。トグル・スイッチ風の工夫とかね。いろいろとデザインに気を遣っている。300万円とか400万円のクルマに見えるものになっているし。走らせては、たしかにもさっとしてるなと思った。Nで走っていたからね。今のエンジンはこういうものなのかぁと考えながら走っていた。ところが、Dに切り替えたら俄然勇猛になって、トルクステアは出るわ、あっという間にスピードは出ちゃうわで、印象が一変した。かなり速いね、1750は。しかも、昔と違って掛け値なしに速い。クラッチもクセを飲み込んでしまえば扱いは容易だし、シフト・レバーもスムーズだしで、運転は楽だね。クラッチ・ペダルの左側にスペースがなくて左足の置き場にちょっと困るぐらいかな。
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日本へやってきたジュリエッタは右ハンドル仕様。右は1.4TCTマルチエア・コンペティツィオーネの場合。ナビはオプション。ステアリング・ホイールやペダルの配置にオフセットはほとんどなし。上は標準状態。荷室の容量はゴルフに遜色なし。
村上 第一印象がヴィヴィッドじゃないんですよ。ところが、ジュリエッタはなんといっても脚がイイ。とくにリアのスタビリティが猛烈に高い。ロード・ホールディングが抜きん出てイイ。だから、鼻先が入っていったときの安心感が絶大。高速コーナーをあんなに気持ちよく綺麗に走れるクルマはそうそうないんじゃないですか。
スズキ こともなげに速い。リアのグリップはたしかにすごい。後ろについて走るとわかるけど、内輪が最後まで貼り付いている。ロールも少ないよねぇ。突っ張る感じは微塵もないのに傾かない。無意識に自然に運転していて速い。この安定感の高さは1.4にはさらに顕著だった。
村上 コーナリングの姿勢が気持ちいい。あぁ、イイなぁと思う。
スズキ 山道をひとしきり走ってから降りてタイヤを見ると、前後とも綺麗に使って走っていたことが分かる。接地面の具合とか、温度とかでね。脚がイイのはもう間違いない。

齋藤 そうですよねぇ。
スズキ 昔のアルファの平行ロールの感じを思い出すなぁ。ダイヤゴナルな、対角線を軸にロールする感じがぜんぜんない。素晴らしく気持ちのいいハンドリング・マシンだ。そのポテンシャルを引き出して走っている間中ずっと、どこかで爽快感が続いている。クルマを降りてしみじみ、「これは断然スポーティだな」と感じ入ったなぁ。このクラスの試金石たるゴルフと明瞭に性格は違うけれど、その対抗馬になるね、アルファのジュリエッタは。アウディのA3はどうだろうね。
齋藤 そろそろフルチェンジですかね。ゴルフ7世代の新型プラットフォームが先行して出てくることになるわけですけど、それと比べられても、ジュリエッタには十分な対抗力があるんじゃないでしょうか。それぐらいデキがいいと思います。シャシーが速い。ジュリエッタは、それだけで感動があります。
スズキ 退屈しないんだよね、ジュリエッタは。山道の走りはとにかく素晴らしかった。
齋藤 腰を低く沈めたまま、スウーッと走り抜ける。快感に直結するようなコーナリングとでもいえばいいんでしょうか。恋にも落ちるはずです。
スズキ 平然と座ったまま、爽やかに駆け抜けるんだよ。
齋藤 とりわけホールド性能に優れるわけでもないシートなのに、身体が揺すられない。そうとうな横Gが出るにもかかわらずです。タイヤの持てる能力を根こそぎ引き出しているような速さなのに、不思議です。動きが静かなんでしょうね。
スズキ アルファ・ロメオはなかなかスゴイね。
齋藤 考えてみたら、フィアット傘下に入って初めてですよね。アルファ・ロメオ用主導でプラットフォームが新規で起こされたのは。これまでずっと流用だったり、相手のある共同開発だったりで、本当に好きに開発できたことはなかったんじゃないかと思います。いろいろと足かせを嵌められて。彼らにしてみれば、溜飲が下がる思いをしたんじゃないでしょうか。このジュリエッタで。
村上 待ちに待ったアルファ・ロメオが、いいクルマで良かった!

1750TBi クアドリフォリオ・ヴェルデ
(上段)クアドリフォリオには1750の直噴ターボ過給型が載る。作用位相連続可変型の吸・排気カムを使ってオーバーラップを巧く利用し、ターボ・ラグを最小化することに成功している。直噴型だからこそのトリック。235psとハイ・チューンながら、ドッカン・ターボに非ず。ただし、アルファDNAでDを選んでいる場合には、右足を繊細に動かす必要がある。最高速度は242km/h。シート表皮はすべて革。調整は電動式。
(下段)大きめのノブを頂く6MTのシフト・レバーはストロークこそ長めだけれど、操作は軽く確実で滑らか。ペダル配置そのものに不満はないものの、左足の置き場がなく、ちょっと慣れを要する。操作を終えた足はペダルの下に置くしかない。ブレーキはコンペティツィオーネと同じ17インチの4ポット固定キャリパー式。ホイールが18インチなので、相対的に小さく見える。右ハンドル仕様のペダル・ストロークは少し深い。

1.4TB マルチエア・コンペティツィオーネTCT
(上段)アップライトというほどではないが、ヒップポイントは少し高め。大柄な体格にもフィットするシート。後席もルーミィだが、頭上の余裕はさほどない。このシートは革とファブリックのコンビネーション・タイプ。1.4TB(トゥルボ・ベンジーナ=ターボ・ガソリン)のマルチエアは、170psを搾り出す。ジュリエッタは脚に余裕があるので、これでも少し物足りなく思えてしまうけれど、速さに不足なし。最高速度218km/h。
(下段)TCTのギア・セレクターのロジックはATに慣れた人にはお馴染みのそれ。前方からP-R-N-D。Dから左側のティップ・ゲートに移れば、マニュアル・シフトが可能。ステアリング・ホイールの裏側に小ぶりなパドルが備わる。Dレインジにあってもパドル操作による介入は可能で、その場合、しばらく経つと、自動変速に自動復帰する。コンペティツィオーネは17インチ・タイヤに17インチ・ブレーキが組み合わされる。

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 ジュリエッタ1.4TBコンペティツィオーネTCTジュリエッタ1750TBiクアドリフォリオ・ヴェルデ
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 5070×1900×1490mm 5075×1870×1485mm
ホイールベース 2634mm 2634mm
トレッド 前/後 1554/1554mm 1554/1554mm
車輌重量 1280kg 1320kg
エンジン形式 ターボ過給直列4気筒マルチエア16バルブ ターボ過給直噴直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量 1368cc 1742cc
最高出力 170ps/5500rpm 235ps/5500rpm
最大トルク 25.4kgm/2500rpm 34.6kgm/1900rpm
変速機 デュアル・クラッチ式6段変速機 6段マニュアル・ギアボックス
サスペンション形式 前 マクファーソン・ストラット/コイル マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション形式 後 マルチリンク/コイル マルチリンク/コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク/ディスク 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前/後 225/45R17 225/45R18
車両価格 2012年1月発表 2012年1月発表




(2012年2月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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