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レーシング・カーの遺伝子を持つマゼラーティのロード・カー、
グラントゥリズモMCストラダーレに乗った。


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MASERATI GRANTURISMO MC STRADALE



能あるスポーツカーは爪を隠す。


マゼラーティの市販車のなかで最速、最軽量を誇る2シーター・クーペはどんな振る舞いを見せたのか?
文=塩澤則浩(本誌) 写真=望月浩彦


 よく5m走っただけで、そのクルマがいいか悪いかがわかることがある、というけれど、この時ばかりは本当にそうだった。マゼラーティ・ジャパンでグラントゥリズモMCストラダーレを受け取り、走りだしたとたん、これはいい、こんなにいいクルマがあるのか、と感動した。
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 なにしろマゼラーティのモーター・スポーツ部門、マゼラーティ・コルセの頭文字(MC)を戴くくらいだから、室内がうるさくて乗り心地が悪かったとしても、誰も文句は言わないだろう。それがどうだ。この日はそのまま群馬県高崎市の取材場所へ直行することになっていて、道中の難行苦行を覚悟していたというのに、超がつくほど快適だった。MCストラダーレの特長にもなっている、レース仕様のトロフェオと同じ意匠のアゴ鬚のようなエア・インテークは、強力なブレーキ冷却のためのモノだし、ショベルカーのように前方に突き出たアンダー・スポイラーもダウンフォースを稼ぐための重要な装備だ。伊達ではないところが、男らしくてカッコいい。
 レースからインスパイアされた装備は他にもあるが、スパルコ製のカーボンのバケット・シート、ブレンボ製のカーボン・セラミック・ブレーキ、鍛造ホイールなど、ほとんどが軽量化のためのアイテムだという。
 そんなハードコアに思えるMCストラダーレだけれど、乗ってみるとその上質さに驚く。アルカンタラの巻かれたステアリングは、支持剛性がしっかりしている上に操作フィーリングも極上で、抵抗があるのにないかの如くしっとりしている。それでいて応答遅れもなく、シャープなのだから文句のつけようがない。
 いちばん驚くのは、サーキットもこなせる仕様でありながら、日常使いをまったく犠牲にしていないこと。アシは硬いけれど、乗り心地は悪くない。ゴツゴツ、ザラザラとした感じは一切なく、あくまでも滑らかでしっとりしている。車高は10mmローダウンされていて、ダンパーもスタビライザーもサーキット走行に準じたハードな足回りのはずなのに、トゲトゲしさがないのだ。もちろん高速道路ではひたすらフラットで、20インチのピレリPゼロ・コルサはバタつくこともなく、直進安定性も申し分ない。

ウルトラ・スムーズ

 オイルサンプ内の構造を見直し、バルブのタペットとカムの表面に特殊なコーティングを施して低フリクション化を図った4.7リッターV8は、グラントゥリズモSより最高出力で10ps、最大トルクで2kgmアップした450psと52.0kgmになっている。今どきのスーパー・スポーツなら500psオーバーは珍しくないが、回転フィールはウルトラ・スムーズで、その上1850kgの車重はグラントゥリズモSより100kgも軽く、体感的にはまったく劣っていない。最高速もマゼラーティのロード・カー初の300km/hだから、速いことこの上ない。高速道路だけでは飽き足らず、高崎からの帰りに青梅のワインディングまで足を伸ばして走り回った。
 バルブを開閉して排気音を切りかえるスポーツ・エグゾースト・システムに新たに追加されたレース・モードは強烈で、スイッチを押したとたんに6段自動MTは瞬時にマニュアル・シフトに切り替わり、高々と咆哮する。軽量化の効果は明白で、連続するコーナーを文字通り軽快に走るのには驚いた。重さも感じなければ、5mになんなんとする大きさも気にならない。コーナーに向かってステアリングを切り込むと吸い込まれるようにノーズがインを向く。ロールが少なく、路面に貼りつくようなコーナリングは楽しくてしかたがない。思わず夜更けまで走り込んでしまったくらいである。
 レース・スイッチを入れてはじめて現れた鋭い爪。能ある鷹は爪を隠すというけれど、コイツは確かに能あるスポーツカーだ。

室内はマゼラーティらしく、ステアリングやインパネ、センターコンソールをはじめ、いたるところがアルカンタラで覆われている。内装色は、アルカンタラは青と黒、本革の場合は黒と紺と赤。ほかにカーボン調も選択できる。カーボンのバケット・シートは若干のリクライニングが可能なスパルコ製。軽量化のため後席は装備されない。20インチのホイールは軽量な鍛造製を採用した。カーボン・セラミック・ブレーキはブレンボ製で、従来の鋳鉄合金に比べて60%も軽くなっている。最高出力は450ps/7000rpm、最大トルクは52.0kgm/4750rpmで、トランスアクスル式の6段自動MTを介して後輪を駆動する。全長×全幅×全高は4935×1915×1345mm。ホイールベースは2940mm。車重は1850kg。価格は2112.5万円。




(2012年2月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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