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フェラーリ458スパイダーが早くも上陸した。
さぞや魅力的なオープン・カーであるに違いない。


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FERRARI 458 SPIDER
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マネッティーノ(車両特性制御プログラム可変システム)でウェットを選んでおけば、雨のなかでも不安なしに右足を踏み込めるとはいえ、本領を発揮する舞台じゃない。



美声で酔わせる458


メタル・トップを装備したフェラーリのミドシップ・スポーツ。早速その1台に試乗のチャンスを得た。
しかし、雨が……。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=小河原 認



 間近に見る458スパイダーは、うっとりするほど美しかった。メタル・トップが描くクーペさながらのルーフ・ラインが、期待を裏切ることなくリアへと流れていく。いや、クーペよりも麗しいかもしれない。
腰骨が突き出るように峰をつくるクーペのBピラーの表層デザインよりも、スパイダーのほうがBピラーとリア・フェンダーの関係がクラシカルで、記憶のなかのフェラーリ像と素直にリンクする。リアデッキ・エンドの造形も、クーペより印象的だ。
 幌屋根が好きなひとはいる。そちらのほうがずっと特別で、高級なものだという意見にも反論などない。けれど、これを見せられたら、メタル・ルーフにしかできない造形美があるのだということを、思い出さないわけにはいかなくなる。
 形だけでどちらかを選べといわれたら、僕なら、クーペより断然スパイダーをとる。

せっかくのスパイダーなのに

 絶世の美女と1日をともにできるというのに、取材日の天気予報は関東全域で雨。東北まで足を伸ばすには時間が足りない。気温も低いから、箱根や西伊豆は雪になりかねない。車両本体3060万円。そこに種々のオプションが加わって4000万円を超えるテスト・カーでリスクをとる気にはなれなかった。だから、僕らは九十九里浜を目指した。しかし、千葉は雨が強く降っていた。せっかくのオープン・カーなのに、屋根を下ろすチャンスがまったくない。
 九十九里に着いても、雨は止むどころか、ますます勢いを増して、叩きつけるように落ちてくる。撮影のときだけはなんとかオープンにしないとと思い場所を探すも、ない。ホテルの軒下をお借りして、やっとのことでルーフを仕舞うことができた。
 スパイダー本来の姿もまた美しかった。リアへ回り込むと、もう惚れ惚れとするしかなかった。雨の中に立っていることも忘れそうになるぐらいに、心をとらえて離さない。エンツォ以来の、テール・ランプの上半分を曝したデザインは、まるでこのクルマのために用意されたもののように見えた。
 置き撮りをなんとか終えて、さぁ、あとは走りのショットだぞ、と気合を込めて念じても、雨は上がらない。オープンで走ることはついにできなかったのである。スパイダーは、オープンで疾走するときのサウンドを堪能してもらうために、サウンド・チューニングが入念に施されているという。なんとしてもそれを聞きたい、という願いはついに叶わなかった。ボタン操作ひとつで、わずか14秒で屋根を上げたり下ろしたりできる458スパイダーはしかし、屋根を反転させながら仕舞いこむ構造ということもあって、走りながらの開閉は受け付けないようになっている。だから、長いトンネルへ入ってから速度を落としてルーフを下ろし、出る前に上げる、みたいな荒業は使えない。万事休す、だった。
(上)エンジン・リッドは小さい。V8本体は奥に隠れている。(中)アルミ製ルーフは2分割されて長さを詰め、畳まれる。(下)ルーフは反転し、エンジン上に設けられた専用格納庫に収まる。
 なんとか、その片鱗だけでも知りたいと思ってドア・ウィンドウを下げ、パドルでギアを落として右足を深く踏み込むと、ファァアァァーン、と突き抜けるようなサウンドがトンネルのなかに鳴り響いた。この音が身体を包み込むように背後から襲ってくるのか想像すると、天を恨む気持ちはことさらに大きくなった。



クーペとの差は小さい

 ずっと、屋根を上げたまま、クーペの状態で走った。街中も、高速道路も、山間の渓谷も。だから、分かったことがあった。ほとんど同じ時期にナンバーが付いた最新仕様の458イタリアに乗ってまだ半月と経ってない。2台の間には、フィクスト・ヘッド・クーペと、クローズド・スパイダーの違いがあった。
 458イタリアはスパイダーの投入に時を合わせて、サスペンション設定がキャリブレイションし直されて、より走り屋向きの、締まったセッティングになったといわれている。けれど、それは主にダンパーがスポーツ・モードになっているときの話だ。430スクーデリア以来、フェラーリがマネッティーノと呼ぶ車両統合電子制御システムでスポーツを選んでいても、サスペンション・ダンパーのみを柔らかいコンフォートの状態にすることができるスイッチが付いている。日本のように路面状態があまりいいとはいえない条件下で走らせるときには、このコンビネーションの恩恵に大いにあずかることになる。山道やうねりのある高速道路を走るときでさえ、これがロード・ホールディングを安定させ、結果的に速く楽しく走れるからだ。
V8エンジンへのエア・インテークはテール・エンドに移動。
 このコンフィギュレーションで走っていると、458イタリアのほうがよりしなやかに感じられるのだ。前足がひたひたとよく路面変化に追従して、ボディがそれを柔らかく受け止める。そういう感触が濃厚で、ずっしりと落ち着き払ってしかも巧く突き上げを押さえ込んだリアに支えられて、いかにも「いい乗り心地だなぁ」と感心することになる。
 一方で、458スパイダーでは、前脚がそれほどしなやかには動いていないように感じとれる。それとて、スーパースポーツの水準に照らせば、望外に良好な乗り心地ではあるのだけれど、458イタリアの静と動がクリアに分かれて、なおかつ手を取り合っているかのような、極上のしなやかさには及ばない。
 連続して荒れている路面を通過するときの掌に伝わる振動も、ほんのわずかだけれど、濁っているように感じる。滲むというべきか。ざっと3割ほども、いや3割しかというべきなのかもしれないけれど、低下を余儀なくされた捻り剛性の違いが、この差異を生んでいるのだと思う。
 けれども、それは458と乗り比べることができた場合にのみ分かること。458スパイダーそれだけに接して、これに文句をつけるひとなど、いないはずである。
 あぁ、美声に包まれたい。

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メタル・トップを仕舞い込んだ姿も麗しい。メタル・トップの支持機構を内蔵しつつ強固なロールオーバー・バーとしての役目も果たすBピラーが、強烈なアクセントとなって印象を残す。魅力的なボディ・カラーはロッソ・フオーコという特別色。

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カーボン・インサートや“デイトナ・スタイル”のシートはオプション。仕立てを変えるためのオプションは無数にある。それでも満足できないひとには“テイラー・メイド”という選択肢もある。座席背後には用をなすスペースが残っている。

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 フェラーリ 458スパイダー
駆動方式ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高4527×1937×1211mm
ホイールベース2650mm
トレッド 前/後1672/1606mm
車輌重量1630kg(車検証値)
エンジン形式自然吸気直噴V型8気筒DOHC 32バルブ
総排気量4499cc
最高出力570ps/9000rpm
最大トルク55.1kgm/6000rpm
変速機ツインクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション形式 後マルチリンク/コイル
ブレーキ前後通気冷却式ディスク
タイヤ前/後235/35ZR20/295/35ZR20
車両本体価格23060万円




(2012年4月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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