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BMWの新世代3シリーズ・セダンが上陸した。
尖兵となるのは6気筒に代えて4気筒となった328iだ。


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BMW 328i
●僅かに大型化した新型3の尖兵
●4気筒2リッターで245ps。プラス8段AT
●速さを感じさせない新しい速さ
●追って、184psの320iも追加




ついてこられるか!?


BMWの新世代3シリーズ・セダンが上陸した。尖兵となるのは6気筒に代えて4気筒となった328iだ。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=小野一秋



 隙のないできばえだ。ためつすがめつして何か欠点を見つけようとしても、それらしきものがほとんど何も出てこない。走らせても同じことで、ここがちょっとなぁ、と思っても、それには理由のあることだと分かって、黙らざるをえない。その度に、「隙なんか見せませんよ。なにせウチの大黒柱ですから」と切り返されているようで、粗探しすることがいやになってくる。328iとはそんなクルマだった。冷静に考えて、F30型と呼ばれる新型3シリーズは、これまでのE90型より全面的に良くなっているというべきだろう。
 ただし、これだけは言っておかなければならないと思う。新型は感性ではなく、理性による判断を迫ってくるクルマだということを。

新型を象徴する328i

 7年ぶりにフルモデルチェンジして日本で発売直後の初出記事だから、はじめにモデル構成と価格、そして今後のラインナップ展開について書いておく。1月30日に発売されたのは328iで、2月中旬から納車が開始される。春には320iが続き、そして秋に、アクティブハイブリッド3が導入される。
 328iには4つの仕様が用意されていて、328iが570万円、328iスポーツ、328iモダン、328iラグジュアリーの3仕様がいずれも586万円となっている。4気筒2Lエンジン+8段ATのパワートレインに違いはなく、もっぱら見た目の仕立てが異なる。すべて右ハンドル仕様のみの設定となっている。
 さて、ここからが本題である。新型3シリーズの尖兵として上陸したのがなぜ320iでなくて328iなのか? 2台は機械的にはほとんど同じといっていいから、生産上の都合が理由とは考えにくい。考えられる答はひとつ。それが新型3シリーズを象徴するモデルだからである。
 欧州市場で発売される新型のモデル構成を見ると話はわかりやすい。ガソリン・エンジン搭載モデルは、
■320i(4気筒2リッター184ps)
■328i(4気筒2リッター245ps)
■335i(6気筒3リッター306ps)
の3種で、ディーゼルが、
■316d(4気筒2リッター116ps)
■318d(4気筒2リッター143ps)
■320d(4気筒2リッター184ps)
■320dエフィシェントダイナミクス・エディション(同163ps)
の4種類用意される。そして、最後発となるハイブリッド仕様が6気筒3リッター306psエンジンと電動モーターの組み合わせ、という布陣だ。さらに追って予定されているのが6気筒のディーゼル、ガソリンとディーゼルのそれぞれに幅広く設定される4輪駆動モデルである。
(上)全長拡大は荷室拡大にも貢献。容量は480リッターある。(中)“スポーツ”トリムでは1サイズ大きな18インチが標準。(下)ほとんどフロント・ミドシップに載る4気筒2Lターボ。
 モデル構成とエンジン出力を見てお気づきになったと思う。新型3シリーズの心臓はガソリン、ディーゼルを問わず、すべて過給エンジンなのだ。1990年代から本格化した直噴ディーゼルの熾烈な開発競争のなかで培われたターボ過給技術が、ついにガソリン・エンジンに全面転用される段階に突入したのである。
 かつて、ディーゼルと相性がよく、その比出力の低さを補うのに不可避的に必要なターボ過給を誰よりも巧く使いながら、一方でガソリン・エンジンへのターボ過給に他の誰よりも慎重だったのがBMWだった。それを思い出すと、隔世の感さえある。
 328iといえば、BMWを知っているひとなら自然に、それが6気筒だと考えるはずだ。けれども、ターボ過給を利したダウンサイジング路線まっしぐらの趨勢をリードするひとりであるBMWは、これを例外なく当てはめ、これまで2.5リッターと3リッターの6気筒自然吸気エンジンでまかなっていた出力レインジを、すべて4気筒エンジンに置き換える道を選んだのである。この流れのなかで、325iと330iのふたつが4気筒ターボの328iによって置き換えられることになったのだ。
 自然吸気エンジンの場合、同じ排気量のエンジンを使って比出力をいくつも設定しようとすると、エンジン特性にシリーズ内での一貫性が失われることになりかねく、結果的にボア径やストロークをいくつか用意して、何種類も排気量を設定することになる。ところが、ターボ過給を巧く使えば(彼らにはいまやそれがある)、過給圧の設定次第で、最高出力を変えながら出力カーブ特性を近似的なものとすること、つまり扱いやすさに違いのないものを用意するのはたやすいことになったのだ。
 幅広いモデル・レインジを敷く3シリーズでさえも、ガソリン、ディーゼルともに4気筒2リッターと6気筒3リッターという2種類のベース・エンジンで事足りることになったわけである。
 新型では320iにもターボ過給を施して最高出力を引き上げているから、燃費(=炭酸ガス排出量)を改善すると同時に、動力性能の向上も同時に果たしたという主張に反論するすべはない。
 さらに付け加えておくならば、欧州市場で販売される全設定モデルで自動変速機が8段ATに統一されている。ディーゼル開発で得た過給技術転用で、ガソリン・エンジンにおいても低回転高出力が可能になったから、効率のいい回転域だけを使って燃費を改善するのに、多段ATが強力なサポート役を務めるのである。

まるでディーゼルのよう?

 新型328iの立ち位置を知ってしまえば、冒頭で、それが理性で判断すべきクルマだといった意味も、わかってもらえるのではいかと思う。
 それは、まるでよくできた高出力ディーゼル・エンジン付きのクルマのように走る。3.5リッター級の自然吸気ガソリン・エンジンのそれに優に匹敵する35.7kgmという太いトルクを、なんとアイドリング回転のすぐ上の1250rpmから捻り出すことが可能なエンジンと、きめこまかくステップ・アップを刻む8ATとのコンビは、アクセレレーターの踏み加減にやすやすと追従して、望むままに速度を上げる。混雑した都心を泳ぐような場合でも、およそ回転を引っ張るという感覚とは無縁だ。
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 ならば、それが多気筒大排気量エンジンの感触に近いかといわれれば、ノーである。音質が4気筒エンジンのそれだからである。
 冷え切った状態でエンジンに火を入れると、この4気筒過給エンジンは、ギリギリギリギリと、まるで最新ディーゼルと同じような音を交えながらアイドリングを始める。この音は、エンジンが完全に暖気されるまで消えない。音量そのものはディーゼルより低いが、音質はそっくりである。たった5000rpmで245psの最高出力に達するのだから、過給圧はかなり高めに設定されているはずで、にもかかわらず、圧縮比は10:1と高い(320iは11:1)。95ROM燃料が手に入らなければ、91RONレギュラーにも対応する仕様でのそれだから、かつてのガソリン・ターボ・エンジンとは全然違う。考え方そのものがディーゼル的なのである。ヨーロッパではスモール・カーを除けば、圧倒的にディーゼル支持というのが趨勢だから、立場は逆転してガソリン・エンジンにもディーゼルのような扱いやすさ、つまり、回さずとも力が出るエンジンが求められる道理で、コンフィギュレーションもディーゼル的なそれに近づいてくる以上、こうした音になるのは仕方ないのかしれない。
 排気量が2リッターあるので、4気筒エンジンに不可避的な2次振動になんらかの対策の手を打たなければならないが、そちらはバランスシャフトで打ち消してある。Dレインジで自動変速に任せて走っているぶんには回転が低いので問題ないし、試しにマニュアル・シフトを選んで目いっぱい回しても、無粋な振動やこもり音が出たりはしない。
 そして、こうした時に初めて、BMWのエンジン屋としての実力をまざまざと見せつけられることになる。最高出力点をとうに超えて、6000rpm、6500rpm、リミットの7000rpmと駆け上がっていくときの一糸乱れぬ回転フィールは、クォーンという心地よい音色とともに、いかにも内燃機関を回している快感にひたることができる種類のものだ。
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ホイールベースは5cm、全長は9.5cm伸びたものの、このクラスでは依然としてコンパクト。先代との近似性、連続性がいちばん色濃いのがサイド・ビューだ。
 吸気、排気両方のバルブ開閉時期を連続変化させるダブルVANOSに加えて、吸気バルブのリフト量を連続的に変えるバルブトロニック機構、さらに緻密に電子制御されたターボ過給という具合に、もはやひたすらエンジンの回転の上下だけに出力調整を頼る必要のなくなったエンジンでは、全負荷で高回転域に拘束でもしないかぎり、回す快感のようなものは得られないのが実情なのだ。
 328iの心臓は、古いペトロ・ヘッドを快感で酔わすユニットではない。新しい時代が求めた進化したガソリン・エンジンなのである。
 いうまでもないことだけれど、実用回転域のほぼ全域で200psを引き出せて、しかも8段変速機が援護するのだから、いかなる基準に当てはめても遅いという言葉は使えない。間違いなく速い。メーカー公表値では0−100km/h加速を6.1秒でこなし、最高速度はリミッターが介入する250kmに届くことになっているのだから。にもかかわらず、さほど速く感じないのは、エンジン回転に頼らない駆動力増減が、それこそきっちりとコントロールされているからだろう。
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7シリーズ以来のデザイン・テーマが完成をみた感がある。ナビ画面の配置も違和感なし。
完成した新時代の脚

 速さが印象に残らないのは、基本構成を先代から譲り受けて開発しなおされた新型のシャシーが、ホイールベースや前後トレッドの拡大とも相まって、およそ危うさとは無縁な、絶大な安定感をもたらしているからでもある。磐石といっていい。先代5シリーズあたりから、積極的に電子制御支援をシャシーに投入し始めたBMWは、ロールを否定する方向へ向かいかけたが、新型3シリーズでは、ごくごくスムーズに遷移する自然な浅いロールを伴ってコーナーを駆け抜けていく。大径のランフラット・タイヤの履きこなしも堂に入ったもので、ゴリゴリと芯の硬い感じを、ほとんど気にならないところまで抑え込むことに成功している。新時代のBMWのシャシーはここに完成をみたといっていいのではいだろうか。
 ステアリングにしても、純電動アシスト式にもかかわらず、速すぎないギア比、少しだけ重めの操舵力ともに違和感はなく、懐の深い速いシャシーによくマッチしたものになっている。大舵角時にギア比が速くなるバリアブル・ラックがオプションとして用意されているけれど、標準のままがいいと、僕は思う。
 唯一の問題は、「320i待ち」という思いが消えないことである。

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後席は広々というほどではないにしろ、大人の長距離移動にもとくに不満は出ないもの。
シートはスポーツ専用の形状のもの。革張り+前席ヒーターは28.4万円のオプション。

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  BMW 328i Sport
駆動方式フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高4625×1800×1440mm
ホイールベース2810mm
トレッド 前/後1525/1565mm
車両重量1560kg
エンジン形式ターボ過給直噴直列4気筒DOHC 16バルブ
総排気量1997cc
最高出力245ps/5000rpm
最大トルク35.7kgm/1250〜4800rpm
変速機8段AT
サスペンション形式 前ダブル・ジョイント・ストラット/コイル
サスペンション形式 後マルチリンク/コイル
ブレーキ前後通気冷却式ディスク
タイヤ 前後225/45R18ランフラット
車両本体価格586万円




(2012年4月号掲載)
 
 
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バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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