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フェルナンド・アロンソ&RENAULT MEGANE Renault Sport


F1はチャリティじゃない。
日々、ワークだ。



文=今尾直樹(本誌) 写真=石田 東



マイ・スポーツ、マイ・ライフ 

 10月5日火曜日、午後2時30分。台風の影響でしのつく雨の中、新宿パーク・ハイアットの玄関でフェルナンド・アロンソが出てくるのを待つ。2001年、19歳でミナルディからF1デビュー。昨年、ルノーの正ドライバーとなり、ハンガリーGPでF1初優勝を飾った。2004年の今年は、最終戦ブラジルGPを残した時点でフランスGPでの2位が最高だが、ドライバーズ選手権はBARのジェンソン・バトンに次ぐ総合4位で終えようとしている。
フェルナンド・アロンソ&RENAULT MEGANE Renault Sport
 未来のチャンピオン候補はスペインのテレビ局の密着取材で、カメラ・クルーを引き連れていた。日本まで追いかけてきたテレビ局の人に、アロンソってどんな人なの、と訊ねると、「スーパー・スターはスーパー・スターになっちゃうものだけど、アロンソはお金を追っているわけではないし、君や僕と同じ人間だよ。ベリー・ノーマル。不思議だけどね」と教えてくれた。
 実際、アロンソはフツウといえばフツウの青年だった。いや、少年と呼んだほうがいいかもしれない。中学生の男の子のように、おとなが質問しても短い答しか返さず、たぶん友だちとはもっとしゃべるんだろうなと思わせるような少年。
 「F1はマイ・スポーツで、マイ・ライフだよ」といえるのはフツウではないけれど。地球上に20人しかいない、神に選ばれし才能の持ち主なのだ。13歳でスペインのゴーカート・チャンピオン獲得。とはいえ、アロンソ少年はF1を夢見て走っていたわけではない。
 「F1を考えたことは一度もない。長年、ゴーカートとか違うカテゴリーで一所懸命やって、エンジョイしていた。F1に到達するのはすごくむずかしかったけれど、もしF1が目標だったら、行動すること。夢にはなんの意味もない。ウンウンウン。F1はチャリティじゃない。日々、ワークだよ」
 というようなことをいっぺんに話してくれたわけではない。ポツリポツリ、スペイン語なまりの英語で話してくれるのであった。インタビュー場所は撮影スタジオへと向かうルノー・ラグナの後席。少年アロンソは雨滴のついた窓に顔を向けて、あまりこっちを見ない。
 では、F1ドライバーにとってワークと才能、どっちが大切?
 「僕は才能だと思う。僕がそれを持っているかどうかはわからないけど、モータースポーツの頂点にいるドライバーは全員、才能を持っている。同時に僕らはワークしている。F1のシートは世界中で20人分しかない。そこで勝つためには両方必要」
  日々のワークはもちろん日によって違う。テストのない日はフィジカル・トレーニングを3、4、あるいは5時間。ジムや自転車や違うスポーツで汗を流す。テストがあるときは13、14時間にもおよぶ。自転車は好きだ。「ラブ・バイスクル」と顔が少しはじける。「アイ・ラブ・イット!アイ・ラ〜ブ・イット!」 と唱和したりして。


ミハエルはフツウの人

 ルノーF1チームは気に入っている。契約が残っているのに来季、BARからウィリアムズに移籍しようとしたバトンみたいなことはない?
 「ああ、ああ、ああ! ふうむ。ジェンソンはいいドライバーだと思うよ。F1の20人は全員ストロング・ドライバーで、プロフェッショナル。ルノーとはハッピー。チームはすごくよくやってくれる。今年はフェラーリの独占で、それ以外のチームが勝つのはむずかしかったけど、表彰台に何度か立ったし、コンストラクターズ部門ではずっと2、3位を争っている。ルノーはトップ・チームであることを証明したんだ」
 フェラーリは鈴鹿終了時点で17戦15勝。文字通り圧勝だった。
 「タイヤ。それがいちばん大きいと思う。ミシュランもよくやっている。僕らはタイヤの改良で去年より2、3秒速くなっている。だけど、フェラーリに勝つためにはサムシング・モアが必要なんだ」
 7度目の世界チャンピオンになった“赤い皇帝”ミハエル・シューマッハーはスペシャル?
 「フツウの人でフツウのドライバーだよ。ビッグな勝利とタイトルに囲まれているけれど、でもそれ以上ではない。ラッキーで戦略が正しくてクルマがよくて、だからイージーだよね、なんでも持ってるんだから」
 旅は好きじゃない。インタビューは好きだけれど、ときどき多すぎる。クルマに興味はあるが、速いクルマは好きではない。ふだんはメガーヌ・ルノー・スポールに乗っている。安全なクルマ、ルノーが好きだという。メルセデスは? 「ルノー! ファイブ・スター!」。5つ星とは、ヨーロッパの衝突試験の成績。
 F1は4年目。お金も手に入れたはずだが、つかう予定はない。
 「自分自身でF1をエンジョイしている。僕は自分のライフに必要なことをやってるのさ。このアドレナリン、このフィーリングが必要で、これは僕の仕事。生活のためにお金は必要だけど、自分が必要なものは持っている。ボートも飛行機も、飛行機のライセンスも要らない。使わないからね。だから、貯金してる」
 F1は空気みたいなもの?
 「イエス、イエス」
 3年以内にルノーがタイトル争いに加わる力を持つことが当面の課題。それ以外にプランはない。レースでは何が起きるかわからないから。23歳だけど、少年アロンソ。F1のピーターパン! 僕は好きだな。
RENAULT MEGANE Renault Sport
 
 
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