ENGINE online/エンジン オンライン

from EDITOR|ENGINE 2005.3 No.054


 メルセデス・ベンツで安全問題を研究しているチームによると、ロング・ドライブをするときには、早朝に出発したほうがいいそうだ。もし、それができないときは、午後一番かというと、そうではない。というのも、バイオリズムでいうと、午後2時から3時のあいだは、一日のうちで身体能力がいちばん落ちる時間帯だから、ドライブしたとたんに危険な目に遭う確率が増すからだ。反対にいちばん充実するのが午前6時から8時のあいだで、午前中は総じてバイオリズムがいい。そういう時間帯にできるだけ足を伸ばしておくのが賢明なのである。
 これは、2003年5月に出された“ドライバー・フィットネスから見た安全”というタイトルの報告書から引いたもの。メルセデス・ベンツの研究チームがまとめた。
 ドライバー・フィットネス、つまり運転する人の身体の調子が、クルマの安全にとって重要なテーマだということは、みな経験的には知っていることだけれど、それに専門家による科学的な分析のメスを入れたところがいかにもメルセデスらしい。クルマをより安全な乗り物にするのに役立つことなら、努力と資力を惜しまないという哲学は、メルセデス・ベンツのバックボーンなのだ。
 さて、早朝に出発したドライバーは、そのあとどうすればいいのか。定期的に休憩をとらなければいけない。理想的には2時間に一度。だから、6、7時間のドライブを予定しているときは、途中、2回休む時間を考慮に入れてスケジュールを組め、ということになる。休憩時間は10分ぐらいでかまわないが、ボオーっとしていてはいけない。軽い運動や背中と首のストレッチ、そして気が向くままの軽い散歩などをする“アクティブ・ブレーク”(活動的休憩)であるべきだ、というのだ。
 途中休憩などが大事なのは、出発から4時間後の事故発生率は、出発後1時間のそれの2倍、8時間後のそれは同じく10倍にもなる、という統計数字があるから。疲労の蓄積のせいだ。ドライバーが緊急事態にたいして反応するのに必要な時間は、休みなしで5時間続けてドライブしたときは出発直後の2倍、同じく8時間では3倍に長引く。ところが、“アクティブ・ブレーク”を適切にとると、9時間たっても出発直後と変わらない反応時間ですむという。
 報告書は、途中でとる食事にも十分に留意すべき、とする。脂肪を避け、炭水化物とタンパク質を主体に摂取することが基本で、そのさい、ビタミン類とミネラル類もとったほうがいい。具体的には、ドライフルーツやナッツやレーズン、ラスクのような乾燥パン、全粒粉のビスケット、リンゴなどの果物、ニンジンやトマトなどの野菜がいい。しかし、糖分の補給を、グルコースや甘いお菓子でおこなうのはよくない。というのも、甘いお菓子などの糖分はすぐに血液に吸収されるが、そのあと急速に血糖値を下げ、集中力を損なう結果を招くからだ。そして、水分補給は、短期的な刺激になるコーヒーよりも、ミネラル・ウォーターや甘みをおさえた紅茶あるいはフルーツ・ジュースなどによっておこなうのがよい。いっぺんにがぶ飲みしないで、定期的に摂取せよという。
 ランチなどでの大食いもよくない。消化のために頭にまわるべき酸素と糖分が使われて、集中力が減退するからだ。大食しなくても脂肪分はとりすぎないこと。脂肪の消化には2、3時間必要なので、大食したのと同じ結果を招く。ということで、ロング・ドライブ中の食事として報告書がすすめているのは、魚やサラダ、カッテージ・チーズとポテト、よく焼いた薄切りのビーフや子牛で、食事をとったあとは十分な休憩時間をとることをすすめている。ランチを大量に食べて、休憩もそこそこにステアリングを握ると、運転が乱暴になるケースが多々あるそうだ。
 報告書は長距離ドライブを多くする人は、日ごろから健康的なライフスタイルを維持すべきとして、定期的に運動することをすすめる。1時間ぐらいのサイクリングとかスイミングとかジョギングを、週に2、3回はおこなうことが最低限必要だという。さらに、ジムで定期的に肩や首、背中の筋肉トレーニングをすることも必要で、そうして身体の調子をよくしておくことが、安全なドライビングに大きく寄与するという。
 報告書を通読してみると、そこに書かれていることは、そのどれもがごく常識的な健康生活指南で、目あたらしい知識はない。しかし、ドライビングの安全を高めるために、こうした研究を社内の専門部署に行わせている自動車メーカーはほかにない。メルセデス・ベンツは常識の代表みたいなクルマをつくる。しかし、そのために常識をこえる努力を傾注しているのだ。 (鈴木正文)
 
 
最新記事一覧
Driving Lesson
エンジン・ドライビング・レッスン
「エンジン・ドライビング・レッスン2017」の受講生募集を開始します。今年の開催は全3回…
ENGINE ROOM
凝っても、この程度。本…
エピソード7のラーメンに続いて紹介する「しましまチキン」を使ったグリルパン料理はサンドイッチ! …
ENGINE ROOM
ENGINE 2018年10月号
SUVワールド、百花繚乱! 第1部いま、もっとも悩ましい、ミドル・サイズのSUV選び篇
NEWS
FERRARI V8/フェラーリ …
フェラーリのV8エンジンが、2018年の「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」賞を獲得、…
NEWS
MITSUBISHI OUTLANDER PH…
2代目アウトランダーに2度目の大きな改良が施された。今回の変更はPHEVのみで、よりEVらしさを強め…
NEWS
SUBARU/スバルFORESTER…
いまやスバルの最量販車種にまで成長したフォレスター。今回発売された新型の注目はインプレッサが初…
NEWS
JAGUAR XF SPORTBRAKE/…
遅れて上陸したジャガーXFスポーツブレークのディーゼルを試した。排気量は2リッターで最高出力はガ…
NEWS
ASTON MARTIN DBS/アス…
アストン・マーティンの勢いが止まらない。セカンド・センチュリー・プランの第1弾であるDB11、DB11…
NEWS
TOYOTA COROLLA SPORT/…
伝統の名前“カローラ”を受け継ぐことになったからだろうか、新型クラウン同様、大きな進歩を遂げてい…



バックナンバーページの定価表記について
「ENGINE 2014年3月号」以前の定価表記は、発売時の定価になっております。
予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



▼FROM EDITOR 最新5件
 from EDITOR|ENGINE 2011.8 No.131
 from EDITOR|ENGINE 2011.7 No.130
 from EDITOR|ENGINE 2011.6 No.129
 from EDITOR|ENGINE 2011.5 No.128
 from EDITOR|ENGINE 2011.4 No.127