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日本上陸第1号のミドシップ・フェラーリ、F430に乗る。


FERRARI F430/フェラーリ F430
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FERRARI F430/フェラーリ F430


卑小な満足を知るな!


昨年秋にデビューしたフェラーリの新世代スポーツカー、F430がこのほど上陸した。
490馬力のV8をミドにマウントし、0-100km/hを4秒フラットで駆け抜ける
このスーパー・パフォーマンス・カーは、自動車界の太陽だ。

文=鈴木正文(本誌) 写真=柏田芳敬


燃焼体の“赤”

 いまにも雨が落ちてきそうな曇天だった。空も道路も灰色に塗り込められた都心の午前は、強度をうしなった衰弱の色としての灰色の支配のもとにあった。そのなかで、1個の“反・衰弱”の強度として抵抗する赤い物体があった。東京港区のコーンズのショウルーム脇の、ビル群に圧迫された小道の路傍に、低くうずくまった1台のフェラーリだ。
 燃焼体としての太陽が理由なく光を浪費するように、この赤いフェラーリは、理由なく情動を燃焼させ、浪費していた。フェラーリは赤にかぎる、と僕はあらためておもった。灰色の午前に訪れた、それはひとつの啓示のようにおもえた。
 フェラーリのたたえる浪費的存在感は、赤いポルシェにも赤いランボルギーニにも赤いアストン・マーティンにもない。ついでながら、黒いフェラーリにもない。ポルシェにとっての赤は身に着かない派手な装いであり、ランボルギーニにとっての赤はせっかくのエッジの切っ先を鈍く丸める暖色のひとつでしかなく、アストンにとっての赤は黒いフロック・コートの裏地を表に出してしまったような不粋だ。そして、黒いフェラーリは、スノッブな気取りにすぎない。フェラーリにとって赤は、太陽にとっての赤とおなじく、表面の装いではない。それは燃焼の強度がもたらす火炎、燃えさかる情動の色だ。だから、太陽にとってとおなじくフェラーリにとっても、赤は“色”というよりも色として現象している“真理”なのである。フェラーリは赤でなければならない。
 日本上陸第1号のF430は正しく赤く染め上げられていた。


360モデナよりも力感を増したプロフィール
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360モデナよりも力感を増したプロフィール。全長4512mm、全幅1923mm、全高1214mm、ホイールベース2600mm。車重は車検証記載値で1510kg(フロント640kg+リア870kg)。価格はMT車が2079万円、F1シフト車が2205万円。
路上の法王のように
 アルプスに源を発してアドリア海に注ぐイタリア最長の川、ポー川を北に、ミッレ・ミリアをはじめとしたかつてのロード・レースの戦場として名高いアペニン山脈を南にしたイタリア北部のエミリア・ロマーニャ州。その片田舎、マラネロにフェラーリは本拠をかまえる。F1を主力にしたレーシング・カーを別にすれば、当代最高水準のスポーツカーとグランド・ツーリング・カーだけを、たかだか年間4000〜4500台しかつくらない世界でもっとも特異な自動車メーカーであるフェラーリが、長いとはいえない60年弱の歴史を通じて、つねに自動車テクノロジーの最先端にあり続け、世界でもっとも速いだけでなくもっとも美しいクルマの一群をつくりつづけてきたことは、控えめにいっても驚異的だ。しかもマラネロあたりは、パルミジャーノ・レッジャーノといわれるチーズと、ワインから醸造するバルサミコ酢で知られる一大農業地帯であるというのに。そんな田舎からやってきたF430が、しかし、東京都心のコンクリート・ジャングルでですら、あらゆる平均的な存在を大きく引き離す存在感をもって地を踏みしめている。法衣をまとった路上の法王のように、群集すべてから超越して。
 F430のように、V8をリア・アクスル直前のミドに搭載する2座モデルは、フェラーリがみずからスポーツカーと銘打って送り出すゆいいつの機種。フェラーリのスポーツカー史上、最大の商業的成功をおさめた先代のV8モデル、360モデナの登場からわずか5年後、昨年秋のパリ国際自動車ショウでデビューしたそれに乗るのは、僕にとっては2度目だ。昨年10月、マラネロ周辺とフェラーリ本社工場すぐそばの、F1のテストもおこなう1周2km強のフィオラノ・サーキットで、すでにおもうぞんぶんドライブしている。だから、ポルトナウ・フラウによってなめされた豪華なタン・レザーの内装を持つキャビンにおさまるまでは、冷静にテスト・ドライブできるとおもっていた。
 しかし、ステアリング・パッド左サイドのアルミ板に配された真っ赤なエンジン・スタート・ボタンのひと押しによって背後の4.3リッター、32バルブDOHC、490馬力ユニットがバンッとめざめ、低いが、明瞭で扇情的なビート感をともなうファスト・アイドルをはじめると、冷静さは瞬時に蒸発し、心臓が早鐘を打ち出した。僕の心臓がフェラーリの心臓とつながったみたいだった。

FERRARI F430/フェラーリ F430
(写真上)日本仕様に標準で装着されるDVDナビゲーションはフンイキじゃない。
(写真中)盤面色は赤も選べる。
(写真下)センターコンソールに上からリバース・ギア、オート・シフト・モード/ローンチ・コントロールのスイッチが並ぶ。
FERRARI F430/フェラーリ F430
(写真左)オプションの“デイトナ”シート。(写真右)シート背後にわずかなスペースあり。

61年のフェラーリF1にヒントを得たシャーク・ノーズのフロント
フロントのトランク・スペースは大型ボストン・バッグなら収容できる
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61年のフェラーリF1にヒントを得たシャーク・ノーズのフロント。

フロントのトランク・スペースは大型ボストン・バッグなら収容できる。



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