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メルセデス・ベンツS65AMG vs マゼラーティ・クワトロポルテ・スポーツGT


メルセデス・ベンツS65AMGロング & マゼラーティ・クワトロポルテ・スポーツGT
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MERCEDES-BENZ S65 AMG long/メルセデス・ベンツS65AMG
昨年秋に生まれ変わったメルセデス・ベンツの旗艦サルーン、Sクラスの最高性能モデル。日本には3165mmと、通常のSクラスよりも130mm長いホイールベースを持つロング・ボディのみが輸入される。全長×全幅×全高=5206×1871×1473mm。車重は2195kgとサイズと装備をかんがえると不当に重くない。6リッターのV12はSOHC3バルブにツインターボをかけて612ps/4750-5100rpmと1000Nm(1002kgm)/2000-4000rpmを生む。もちろん、後輪のみを駆動する。0-100km/hはなんと4.4秒!

MASERATI QUATTROPORTE SPORT GT/マゼラーティ・クワトロポルテ・スポーツGT
03年に登場したピニンファリーナの典雅なデザインによる4ドア・マゼラーティ。フェラーリ製の4.2リッター・V8DOHCはフロントに縦置きされ、トランスアクスル方式のレイアウトにより後輪のみを駆動する。大型サルーンとしては例外的なフロント47%、リア53%の重量配分は、並みのスポーツカーをしのぐハンドリング・バランスのよさを想像させる。パドル・シフト式の6段セミATを搭載。車重2030kg。3064mmの長いホイールベースの上に5052×1895×1438mmのビッグ・ボディが載る。400ps/7000rpm、46kgm/4500rpm。



1000Nmのトルクとノワールな感じで押しまくれ!


メルセデス・ベンツの高性能車ブランド、AMGが送り出すのは、
大型4ドア・サルーン中もっともパワフルな1台。すなわち、S65AMG。トルクは1000Nm!
たいするは世界一セクシーなサルーン、マゼラーティ・クワトロポルテのスポーツGTだ!
文=鈴木正文(本誌) 写真=望月浩彦


お茶! ありましたね。

 ここまでいいクルマに乗ってしまったら、何を論評できるというのか。メルセデス・ベンツS65AMGロングのステアリングを握って、わずか数キロメートルをなにげなく走らせてそうおもい、高速道路やワインディング・ロードを、このクルマの弱点を見つけようという積極的な意志のもとに走らせてそうおもい、出発点たる都心の渋滞に舞い戻ってそうおもった。なんか文句をいってやるぞ、という気満々で臨んだのに、なんにも文句が出てこない。
 「お茶もってこい!」の「お……」まで口にしかけたところでスッと目の前にお茶がでてきて、「あ、ありましたね。でも、熱いじゃないか」といってやるぞと意気込んだら、これが絶妙な温度、しかもちょいシブぐらいのおいしさで、感心しているうちに甘い物が欲しくなったら、ちゃんと羊羹も出ていた、といったていのことか。次から次へとテキはどんぴしゃのタイミングで、しかもこっちが喜ぶかたちの先回りをしている。落語の熊さんなら、「え、どうだいこいつは。それにしてもナンだね、よくデキたカミさん、いやクルマじゃないかい」とでも降参するところか。
SL65AMGロングのプロファイル
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SL65AMGロングのプロファイル。サイクル・フェンダー調のホイール・アーチが擬古典風というかポスト・モダン(なつかしい!)。

 このクルマ、つまり通常のSクラスよりホイールベースが13cm長いロング・ボディのS65AMGロングは2782.5万円。AMGが手に塩かけて開発した6リッター・ツインターボSOHC3バルブの60度V12は、ロード・カー用としてはじめて最大トルク1000Nmを実現したユニット。旧型にも搭載されていたが、昨年のSクラスのフル・モデルチェンジにともない、クランクシャフトやピストン、潤滑および冷却系統に手が入り、インタークーラーも大型化された。最高出力はスーパー・ポルシェ、カレラGTの5.7リッターV10とまったくおなじ612ps。それを4750〜5100というワイド・バンドで発揮する。1000Nmの最大トルクは102kgmに換算できるが、2000〜4000rpmと実用域にぴったり合ったところでピークになるにくい設定だ。

どこがスゴイ?

 そんなS65AMGのドイツ車的特質をよりよく浮かびあがらせるために選んだ相手は、イタリアの老舗、マゼラーティのクワトロポルテ。03年のデビュー以来、世界一セクシーなラグジュアリー・サルーンとの評判もっぱらのこれに、今春追加された20インチ・ホイールを履くさらに刺激的なスポーツ・スペック・モデルがこの日の1台である。
 標準は18インチゆえ2インチ・アップの過激派ぶりだが、フェラーリが設計した珠玉の4.2リッターV8はとくにチューンされていない。価格はAMGの約54%の1512万円。911カレラSが買える差だ! 400ps/7000rpmの最高出力、46kgm/4500rpmの最大トルクのいずれも、S65から見れば子どもみたいなスペックでしかない。
クワトロポルテ・スポーツGTのプロファイル
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クワトロポルテ・スポーツGTのプロファイル。大きな20インチ・ホイールが、足元を引き締めている。典雅な彫刻性。

 最初にAMGに乗って即座にふかく感銘したのだったが、それはとくにどこがスゴイ、というような感銘ではなく、どこかがスゴイとおもわせないのにこのクルマそのものがなにかスゴイことだけはわかる、という感銘のしかただった。犯罪的なまでの大トルクとF1マシン級のパワーを隠し持ったクルマに乗っているとは、お釈迦様でも気がつくまい。それぐらい走りがジェントルで滑らかで、そして静かだ。おまけにステアリングを操作すると、その操作感は手が生クリームを嘗めているみたいにソフトでここちよい。
 高速道路にステージを移しても、ワインディング・ロードをスポーツカー顔負けのドライビングで攻略しても、S65AMGのジェントルで滑らかな走りの質は一貫している。これにはABC(アクティブ・ボディ・コントロール)なる電子制御式の油圧サスペンション・システムが絶大な貢献をしている。その仕事ぶりは驚異的で、発進・加減速時・旋回時のどの瞬間も、荷重移動を乗り手に気づかせないままに済ませてしまう。つまり、スクウォット、ダイブ、ロールからまったくフリーなのだ。すくなくともドライバーはそういう印象を持って舌を巻くことになる。
 そしてV12がすばらしい。ありきたりだけれど絹のようにスムーズなだけでなく、過剰なはずのトルクとパワーに過剰感がない。充足感だけがある。優雅なまでのスムーズネスが足回り同様、パワー・トレインをも支配しきっているのだ。
 もちろんこのS65、ひとたびフル・スロットルをくれれば、そこが街中だろうがハイウェイだろうが山道だろうが、他のクルマを抜き去ること、まるで赤子の手をひねるがごとくで、一般のクルマはまるっきり相手にならない。それは、しかし、このS65の当たり前すぎる価値でしかなく、いちばんの価値ではない。さらに、ムダな動きのないボディ/シャシーゆえの正確で俊敏なハンドリングも、いちばんの価値ではない。どんなときにも失われない品のいい動きのマナーにこそ、このクルマの非凡さがある。偽悪家ぶったノワールなルックスのS65AMGロングは中身のスーパー上品さにいちばんの価値がある。名作である。

MERCEDES-BENZ S65 AMG long
(写真上)整然とした秩序を見せるAMGの室内。
(写真下)S65AMG専用のIWCデザインのクロック。

MERCEDES-BENZ S65 AMG long
(写真左)360km/hまで切られた速度計!
(写真右)分厚くて大きなシートに注目。

MERCEDES-BENZ S65 AMG long
(写真左)6リッターV12がいっぱいに広がる。
(写真右)チタン・ペイントの19インチを履くS65。



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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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