19 JUN 07
p.m.07:00
ヴァイオリンで知られるクレモナの広場にたたずむパンダ100HP。
SUVのシャコタンみたいなスタイルが愛らしい。
オレは惚れたぜ!
昨年のパリ・サロンで発表されたフィアット・パンダのホット・ヤング・バージョン、
その名も100HP(チェント・カヴァッリ)が本国で発売開始となった。
これは大事件! と秋には上陸予定の熱きパンダに日本のメディア一番乗り!
文=今尾直樹(本誌) 写真=小野一秋
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1.4リッター直4は100ps 6000rpm、13.4kgm/4250rpmの高回転型。燃費はおおむね10km/リッター。
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1500km走った!
ミラノ郊外にあるフィアット・ディーラーでパンダ100HPを借り出したのは、朝9時37分だった。パンダにはナビゲーション・システムがついていて、目的地を入力するのに時間がかかり、出発はそれよりちょっと遅れた。距離計は3841kmを指していた。それから私たちは2泊3日、トスカーナ地方を駆け巡り、4日目の返却時には5360kmになっていた。1000マイル(1600km)を意味するミッレ・ミリアには少々足りないけれど、この軽自動車よりちょっぴり大きい程度の小さなクルマで1500km走った。ちっとも疲れていないのは、イタリアの交通環境もさることながら、やっぱりクルマがいいからなのだった。パンダ100HPはピッコロ(小さ)なグランツリズモなのである。
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新開発の1.4リッター直4DOHCエンジンは、最高出力100psを6000rpmで発生する。リッター当たり71psだから、驚愕的数値ではない。とはいえ、パンダの売れ筋は1.2リッターのSOHCで、その最高出力ときたら60psに過ぎない。その1.6倍ものパワーを与えられているのだから、これはジマンしてイイでしょう。
ブラック基調のフェイシアにシルバーのクロームで小ワザを効かせたスポーティなダッシュボード。革巻きステアリングも専用装備。全幅は1606mmしかないため、運転席と助手席のシート距離は親密。
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カタログ上の車重は975kgで、日本仕様のパンダより15kgだけ重い。馬力荷重は9.75kg/psで10を切っている。メーカーの主張によれば、0-100km/h加速は9.5秒、最高速185km/hである。大排気量がはびこる現代の高性能車を基準に想像を膨らませることは厳に慎まねばならない。これは、パンダのスポーティ・カーなのだ。
はっきり申し上げれば、遅い。低速トルクは十分ともいえるが、アウトストラーダにあがって高いギアと組み合わせると物足りない。4000rpm以上回っていないと、加速しないのだ。トップの6速で100km/h巡航は2750rpm。イタリアの制限速度は130km/hだから、もう少しエンジン回転は上になるが、それでも追い越し時にはシフトダウンしたくなる。いまどき、こんなに積極的にシフトを強いるクルマはない。ギア・チェンジは自動車の運転の喜びである。ギアボックスは6段がおごられている。それだけ喜びの回数が多いのである。エンジンは3500rpmから快音を発し、レッド・ゾーンの6000rpmを超えて少なくとも7000までグングン回る。目いっぱい回してシフトアップすると、ブオンッとレーシーなサウンドをあげる。ダッシュから生えたシフト・レバーは手元にあるから操作しやすい。
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(写真上)シートのデキは素晴らしい。1522mmもある全高の恩恵でヘッド・ルームは広い。(写真下)トランクは後席を倒さずとも、2人分の荷物が積める。
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(写真左)フィレンツェを高台のミケランジェロ広場から見たところ。(写真右)背景は、文化的景観として世界遺産に登録されている「シエナのクレーター」で、この地域独特の粘土質の土壌を持つ。ワインで有名なモンタルチーノ近辺も走り回った。トスカーナ地方の緩やかな丘陵地帯は、糸杉やオリーブ、ぶどうの木が植えられていて、景観も楽しい。
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パンダのホイールベースは2299mm。全長3578×全幅1606×全高1522mmのボディは、軽より約10cm長くて幅広い。
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心情的性能
乗り心地は、高い全高によるロールを抑えるためもあって、硬めである。タイヤは195/45-15サイズに格上げされている。でも、ドイツ車みたいにガチンガチンではない。初期ロールを許すし、うねりのある路面ではバウンスする。ストロークにそれぐらいのゆとりが与えられているのだ。ドライバーとしては、初期ロールをいかにスムーズに起こすか、左右の荷重移動をスムーズに行うのがムズカシイ。左と右でロールの仕方が微妙に違うようにも感じる。
ベーシックなクルマであるにもかかわらず、シートは一級品で、あたりはソフトながら体全体を気持ちよく支えてくれる。ぜんぜん疲れない。
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ステアリングの重さとアクセル・レスポンスのプログラムを切り替えるスポーツ・モードのスイッチがついているが、私はほとんどスポーツで走った。私的にはアクセル・レスポンスよりステアリングの重さの変化の方が大きく感じた。
120km/hから上で加速が俄然鈍くなるのは、SUV風四角いボディが大きな抵抗となっているせいだろう。そこでシフトダウンが必要になる。エンジンがうなる。遅いなりに、がんばっているんだなと思う。
スロットル一定の高速巡航は意外と静かで、ブ〜ンというメカニカル・ノイズに包まれる。フィレンツェあたりのスーパー・ストラーダ、日本でいうところのバイパス道路は荒れていて、ボディが一瞬大きくあおられたりもするけれど、それが動きとして残ることはない。
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ただし、出口を間違えて急ブレーキを踏んだら、リアが一瞬ズルリと来た。ミッレ・ミリアで「魔の峠」の異名をとったフータ峠で全開を試みると、ステアリングがグッと重くなってESPが介入。ようするにパンダ100HPは限界が低いからオモシロい。絶対的な性能はたいしたことないけれど、心情的性能はチャーミングでコケティッシュ、と申しましょうか。若い頃の秋吉久美子。
おまけに5ドアの実用的なボディを持っていて、お高く止まっていない。ここが同じエンジンを積む新型500と大いに異なるところだ。アウディみたいな大型グリルもステキ。日本に帰ってきて、ふとパンダ100HPよかったな、と思い出す。日本上陸は秋の予定。俺は待ってるぜ。
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フータ峠にあるミッレ・ミリアの記念碑。38年と47〜49年を制したドライバー、クレメンテ・ビオンデッティを讃えている。
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