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新型BMW M3はポルシェ911カレラに勝てる!?


ほぼ同等の性能を有する2台の実用的スポーツ
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ほぼ同等の性能を有する2台の実用的スポーツ。911カレラは2350mmのホイールベースに4435×1810×1310mm、M3セダンは2760mmのホイールベースに4548×1815×1435mmのサイズのボディを載せる。



スポーツ・セダン賛歌!


誤解を恐れずに言おう。
スポーツ・セダンのメートル原器であるBMW3シリーズの、そのスポーツ性能をさらに鋭く研ぎ澄ましたM3こそは、 じつはスポーツカーになりたくてしかたのないセダンであり、いっぽう、50年近くにわたってスポーツカー界の旗手を任じてきたリア・エンジン、リア・ドライブのポルシェ911こそは、じつはセダンになりたくてしかたのないスポーツカーである、と。
この、それぞれに矛盾を抱え込んだセダンとスポーツカーは、しかし、その矛盾ゆえにたまらなく魅力的であることも僕たちは知っている。
最新のアイドル・ストップ機構を備えて現代化された新型M3は、PDKを装着して実用性をさらに高めた2010年型911カレラといかにたたかうか?
スポーツ・セダンの魅力をさぐる本特集に欠かせない異色対決が、テスト記事の先鋒を務める。
文=鈴木正文(本誌) 写真=小野一秋



インテルラゴス・ブルー

 M3セダンはリオの海のように青く輝いていた。このメタリック・ペイントの色は、リオ・デ・ジャネイロのグランプリ・サーキットにちなんでインテルラゴス・ブルーという。インテルラゴスでは2004年、ウィリアムズBMWのモントーヤが勝っている。それが由来かな、とおもいつつドアを開けると、ベージュのレザー・シートを持つ室内が明るかった。通常の3シリーズと同様のコンパクトなサイズだから、むろんキャビンは広大ではない。しかし、圧迫を感じるほど狭くもない。フィットしたスーツを着たように、身体が軽くなった気分だ。走りの鋭さが問われるスポーツ・セダンは、だだっぴろくてはいけない。
BMW M3 /ポルシェ 911 カレラ
 高からず低からずの、塩梅のいい視界を与える着座位置が「セダン」だ。
 しかし、ソフトな感触のレザー張りシートの、張り出した側面の主張はあきらかだ。スポーツ・ドライビングに応える用意がある、といっている。それにしても、例によってスキのないダッシュボードまわりの整然としたレイアウトが気持ちいい。
 ウッドを多用したかつてのイギリスの上級サルーンの、体温のようにあたたかい職人芸のくつろぎは、そこにない。アルファ・ロメオやランチアのように、ドアを開けるなりデザイナーのインスピレーションが飛び出してくるようなアートの刺激もない。M3=3シリーズの室内は、仕事の能率が上がりそうな爽快な執務室を思わせる。パトロンでもディレッタントでもない有能な仕事人としてのブルジョワの感性には、こういう空間が座りがいいということを、彼らとの付き合いが長いBMWは本能的にわかっているのだ。パトロンでもディレッタントでもないプチブルの僕もまた、落ち着いた。

911と較べる

 この日は、比較のためにポルシェ911カレラ・クーペにも乗った。1963年以来、実用スポーツカーの不動のチャンピオンである911は、その格好からしてスポーツカー以外に見えないけれど、クセ者なのは、それがすこぶる実用的であることだ。狭小ながら存在する2列目のシートが、それを象徴する。その気になれば実用車のように使いこなせる(面を持っている)。いや、もっと積極的にいおう。セダン並みの実用性能を持つことは、911の弱点ではなくて強みなのだ。
 1985年にドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)参戦のためのホモロゲーション・モデルとして初代がデビューしたM3は、いまの4代目にいたるまでのすべてのモデルに乗ってきた僕にいわせれば、一貫してスポーツカーになりたがっているセダンだ。だから、ヘタなスポーツカーよりずっと刺激的なドライビングを可能にする。とはいえ、2世代目からは4ドア版も追加されているし、そもそもれっきとした4または5人乗りの3シリーズをベースに構築されているのだから、セダンとしかいいようがない。しかしそれも、M3の弱点というよりは強みだ。
 というように、M3と911は水と油だけれど、わかりあえない仲ではない。ちがう道から登って頂上で出くわした2人の登山者のように、おなじ目標を分かち持ってきた。すぐれた実用車でありつつ、すぐれたスポーツ性能を持つ、という目標を。
ポルシェ 911 カレラ
 かくして、M3と911の比較は成り立つ。じっさい、M3セダン(DCT=ダブル・クラッチ・トランスミッション付き)の4.7秒という0-100km/h加速は、911カレラ・クーペPDK付きとまったく同じだ。トルクはM3が40.8kgmで、911が39.8kgmとほぼ同等、そして価格は420馬力の前者が1031万円で、345馬力の後者が1279万円だ。総じて、M3は性能比ではかなり割安だ。

911の写真説明と個人的感想など
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911の写真説明と個人的感想など
この911カレラの外装色は46.9万円のオプションとなる特別色の「クリームホワイト」。サンドベージュの内装も24万円のオプションである。ステアリング・スポークに付く7段PDKのステアリング・スイッチは、パドルのように扱いやすくなく、シフト・ダウンのつもりでシフト・アップさせてしまったことが数度あった。ゆたかな接地感を伝えるくっきりとしたステアリング・フィールと荷重移動のわかりやすさは、M3に優れる美点だ。




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