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フェラーリの4座4輪駆動モデル、FFをイタリア、南チロルで試す!


Ferrari FF/フェラーリ FF
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Ferrari FF



新世界への挑戦


FF。フェラーリ・フォーの意だとマラネロの開発者は言う。それは、言い訳の要らない完全な4シーターであることを告げている。さらに、これが彼らの歴史上初の4輪駆動モデルであることも意味している。果たして乗ってみると、これはまさに画期的なフェラーリなのだった。
文=齋藤浩之(本誌) 写真=フェラーリ



スキー場を走る、はずだった

 ヴェネツィアから北へ向かってマイクロバスで3時間半。オーストリア国境まであと少しというところにあるブルニコ。東アルプス、ドロミティ山群を望む山間にある町だ。
 標高840mほどにある街の南側には2300m近い山が構え、その斜面にプラン・デ・コロネスのスキー場が見えている。ふもとからはロープウェイを使って15分ほどで一気に上れる。ほんとうは、そのスキー場の頂上を走るはずだった! イタリア空軍の大型ヘリコプターで運ばれた2台のフェラーリFFが、そこに待ち構えているはずだったのだ。
Ferrari FF/フェラーリ FF
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 ところが4月に入って、北イタリアの気温が急に上がり、一時は28℃を記録するほどになって、雪が解けてしまった。国際試乗会を始めてから3週間は予定どおり、銀白の雪上特設コースを走り回ることができたらしいのだけれど、そんなわけで、僕らにそれは叶わなかった。「申し訳ないわね」とフェラーリ国際広報のジョアンは申し訳なさそうにした。
 フェラーリの歴史上初の市販4輪駆動モデルとなったFFの踏破性能を存分に堪能して、びっくり仰天するはずだった僕らは、すっかり春めいてうららかになったチロル地方の一般道で、ドロミティの裾野を巡るようにしてドライ・ロードばかりを駆け回ることになったのだった。

Ferrari FF/フェラーリ FF
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Ferrari FF/フェラーリ FF
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広い室内、大きな荷室

 しかし、フェラーリFFを走らせ終えたときには、雪道を走れなかった口惜しさはすっかり吹き飛んでいた。ラグジュアリー・スーパースポーツとして、FFは並外れている。素晴らしい乗り心地。快適至極な居住性。純2シーターの599に遜色ないどころか、それを上回るほどのハンドリング性能と、磐石の安定感。フェラーリのV12でしかありえない贅沢なサウンドに浸り続けて走り終えると、そこに新しい世界が開けていることを、はっきりと認めないわけにはいかなかった。
 599GTOは599 GTBの性能を、高い路面平滑度と摩擦係数が期待できるトラック走行を前提にすることで、ハードコアな方向へ一気に拡張してみせたクルマだった。
 FFは、その逆だ。599GTBのハンドリング性能や動力性能を基準点に、その能力を不利な条件下でどこまで発揮しうるかを徹底的に追求したクルマといっていいと思う。
タイトな山岳路でも、3mになんなんとするホイールベースの長さを意識させられることはほとんどない
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タイトな山岳路でも、3mになんなんとするホイールベースの長さを意識させられることはほとんどない。制動時だけでなく、駆動時にもあらゆる状況下で4輪を個別に積極制御可能なシステムが、独自の4輪駆動システムの投入によって可能になったからだ。フェラーリV12サウンドを耳にしながらの快速移動を、いつでも、どこでも。
 不利な条件とは何か?
 純2座でしかない599と違い、FFは完全な4座であらんとした。
 そして、もうひとつ。599GTBは乾燥した一般公道で光り輝き、休日のトラック走行もこなしてみせるクルマだけれど、FFはその能力を雪道や凍結路でさえも発揮しうるオールラウンダーを目指したのだ。
 考えてみれば、これはとてつもなく高いハードルである。
 だが、フェラーリはそれを超えてみせた。FFは彼らが誇らしげに語っていたとおりのものとなっている。
 FFは写真で見るよりもずっと流麗だ。にもかかわらず、そのシューティング・ブレイク風ハッチバック・クーペの内に広がる4座空間は、“サルーン”とさえいえるほどに快適な居住性を備えている。前席はもちろんのこと、後席も遜色ない。4ドアを採用したアストン・マーティン・ラピードやポルシェのパナメーラにさえ優っている。
 かつて、エンツォ・フェラーリは「フェラーリは4ドアを作らない」と言った。その言葉を今も守り続けるフェラーリは、FFを2ドア+ハッチゲートというかたちで送り出したけれど、自らに課したその掟がなければ、これを5ドア型としていても不思議ではないほどの実用性を備えることに、成功しているのである。
 実用性ということでいえば、ラゲッジ・ルームも忘れてはならない。450リッターといえば、中型セダンのそれに匹敵する容量だ。前任機種たる612スカリエッティのトランクは240リッターしかなかったのだから、ほとんど倍増である。例えば、想像しやすい例として、実用車の鑑のようにいわれるVWゴルフを引き合いに出すなら、その荷室容量は350リッターでしかない。快適な後席を備え、さらにその背後にどうやったらそんな大容量を確保できたのか? と思わずにはいられないが、大きなテールゲートを開けてみると、納得せざるをえない。リアにトランス・アクスル変速機を抱え、それを跨ぎ抱ききかかえるようにL字断面形状の91リッター燃料タンクが配置されているので、床面は奥で一段高くなっている。けれども、パーセル・シェルフを高い位置に設けて内容物を隠せるようにしてあるFFの荷室は、たしかに大きな容量を備えているのだ。フェラーリによれば、パナメーラより荷室は大きいそうだ。

(左)後席用のヴィジュアル・エンターテイメント・システムも組み込める
(左)後席用のヴィジュアル・エンターテイメント・システムも組み込める。助手席前面のダッシュボードには車両情報を伝える横長の液晶表示が備わる。(中)ライト、ダンパー・プログラム単独切替、エンジン始動、車両制御プログラム切替、ワイパー、左右ターンシグナル、補助計器表示切替、ホーンと、ステアリングにはスイッチ類が並ぶ。(右)最上級の仕立てに包まれるFFのキャビン。センター・コンソール前端に3つ並ぶボタンは左からローンチ・コントロール、後退選択、そして変速の自動/手動切替。


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