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ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー・スピードとジャガーXJスーパースポーツ


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Bentley Continental Flying Spur Speed & Jaguar XJ Supersport/ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー・スピード & ジャガーXJスーパースポーツ
Jaguar XJ Supersport
●XJシリーズのこれまた最速モデル。
●5リッターV8スーパーチャージャーは510ps/67.3kgmを発生。
●RWD。変速機はZF製6段トルコンAT。
Bentley Continental Flying Spur Speed
●フライングスパー・シリーズの最速モデル。
●6リッターW12ツインターボは610ps/76.5kgmを発生。
●4WD。変速機はZF製6段トルコンAT。


イギリス流スポーツ・セダンの至高。


スポーツ・セダンを英国流にスポーツ・サルーンと言い換えれば、
真っ先に思い浮かぶのはベントレーとジャガーである。
そのなかでもとりわけスポーティな2台に乗ってみた。
文=村上 政+齋藤浩之(ともに本誌) 写真=小野一秋


まるでスポーツカーのXJ

村上 久々にXJに乗って、これはまるでサルーンの姿をしたスポーツカーだと思った。
齋藤 なにせ、スーパースポーツって自称するぐらいだからね。
村上 箱根の峠道を走って、速いの楽しいのって。ショート・ボディにして全長5.1mを超えるあの巨体が、タイト・コーナーでもクイクイ曲がっていくのだから驚異的だ。それに、あの絹を撫でるような軽やかなステアリング・フィールときたら、どうだろう。ジャガー以外の何ものでもない。しかも、切れ味がウルトラ・シャープときているから、その流儀に身体が馴染むまでは入力過多になってしまったりして緊張する。でも、ひとたび馴染んでしまうと、まるでスポーツカーを走らせているような錯覚をもたらす。
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Jaguar XJ Supersport/ジャガーXJスーパースポーツ
齋藤 身のこなしが機敏だよね。しかも驚くほど滑らかに踊る。ジャガーはステアリング・ホイールのリムのちょうど掌のコンタクト・エリアに触れる部分にウッドを使っている。しかも表面仕上げがツルツルとしたものでしょ。あれがステアリング・フィールの滑らか感をいっそう増幅するんだよね。上手いなぁと思う。軽い操舵力の設定と相性がいい。
村上 軽いといえば、そもそもボディ自体があの大きさにしては驚くほど軽い。1950kg。これはもちろん、オール・アルミ製のモノコック・ボディの恩恵。あの軽快感はボディの軽さなくしてはありえない。
齋藤 先代では感じられたアルミ・ボディ独特の硬さが消えて、まるでスティール製のボディのようにしっとりとした味わいがある。しかも、軽いことの利点がそっくりそのまま運動性能の良さに直結している。
村上 フロントにコイル、リアに自動車高調整機構を組み込んだエア・スプリングを使った脚も、本当によくできている。当たりは柔らかいのに、コーナリング時には驚くほどよく粘る。しなやかにしてしたたか。
齋藤 柔らかいから硬いまでの奥行きというのかな、ダイナミック・レインジがすごく大きい。ダンピング・システムが素晴らしく優秀なのも印象的だった。先代モデルでアルミ・モノコックを初めて採用して何もかも新設計したXJは、全モデルにに前後ともエア・スプリングを使っていた。意外なことにサスペンションの縮み側ストロークは短めで、そのなかで望む乗り心地を作るために、プログレッシブ・レートになるエア・スプリングが半ば必然的に必要だったみたい。ところが、今のXJはストロークに不足を覚えるようなことは皆無。惚れ惚れするような素晴らしさ。フルサイズ・サルーンのベストの脚といっていいでしょう。

大きなW12ツインターボ・ユニットがぎっちりと収まるフライングスパー。かなりの質量がオーバーハングに位置する。2.5tのボディをものともしない強心臓。
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最上級の革をふんだんに使ってしたてられたフライングスパーの室内。これを超えるものを望むのであれば、ミュルザンヌを選ぶしかない。パワーステアリングの重さは僅かに締められたシャシーに合わせて重めに調整されている。


センシュアルなベントレー
村上 あえていえば、エンジンは最新設計を次々に投入しているドイツ勢に較べると、やや古い感じがする。パワーもトルクも必要以上で文句はないけど、感触が最上とはいえない。もっとも、今のジャガー・エンジンのなかでは、このV8スーパーチャージャーが最良だとは思うけど。
齋藤 でも、そこがワイルド、ときにブルータルと言いたくなるような独特の魅力に繋がってはいるよね。そこへいくと、もう一方のフライングスパー・スピードは何もかも上品で、あえていえば秘めている速さのポテンシャルだけが獰猛、という仕立てのクルマだった。
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Bentley Continental Flying Spur Speed/ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー・スピード
村上 クルマの成り立ちで言えば、8割くらいはドイツ製と言っていいと思うけど、最後の2割でドイツ車とは決定的に違うものになっている。例えば、ステアリング・フィールはジャガーと違って、それなりの重さをもったドイツ流になっている。ところが、よくよく味わうと、ドイツ車にはない、なんとも洗練された柔らかさが掌に伝わってくる。リムに巻かれた革のしっとりと肌理の細かな感触も素晴らしい。シートも同じで、芯は硬いのに、高級な革で覆われた表面の感触がたまらなくイイ。
齋藤 W型12気筒を使った4WDドライブトレインは、完全にドイツ物だし、シャシー関係の基本設計もVWグループのものだけれど、その乗り味は、同じような構成を使うフェートンとも、A8とも違っている。あらゆる動きが、いつ始まっていつ収束したのか節目がまったく察知できないような滑らかさ。それが本物の高級だと言われたら納得するしかないような説得力に満ちている。
村上 あのヌメヌメした感触は前に乗ったミュルザンヌにも通じるものがある。もっとも、あまりに車重が重いからああなるのかもしれない、とも思った。だって、ドイツ車とも違うけれど、ジャガーともまるで違う種類のクルマになっているんだもの。610psの巨大パワーは、高速道路では無敵だけれど、ひとたび山に入れば、残念ながら510psのXJに置いていかれる。560kgも重いのだから仕方がない。
齋藤 あの重さに合わせた時間感覚で操作してやらないといけない。やさしくじんわりと扱ってやる必要がある。で、そうやってやると、あのセンシュアルな感触にひたれるよ。あれだけ重いと、エアサスの不得意なところもぜんぜん出てこない。路面のざらつきなんかなきに等しくなる。質量で押さえ込んでしまう。重くていいこともある。

V8エンジンがバルクヘッドに触れんばかりに後方へ下げて搭載されるXJ。機械式過給機はVバンクの間に収まる。低回転域から過給効果が鮮やかに立ち上がるのは機械式ならでは。
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トリム・インサートが連なり、ウッド・パネルにぐるりと囲まれた印象を受けるXJ。操舵、保舵力はジャガー独特の軽めの設定。馴染んでしまえば、まるでずっと小さなクルマを走らせているかのような軽快間をもたらす。


繊細と獰猛が同居する

村上 ブルータルなジャガーとセンシュアルなベントレー、本当のイギリス流スポーツ・サルーンの本質を体現しているのは、どっちなの?
齋藤 どっちも。高級な、という部分ではベントレーのあの感触がそうだと思う。“スポーツ”ということでは断然ジャガーの方でしょう。品の良さとある種野蛮なぐらいの獰猛さが平然と同居するのをよしとする感覚は英国独特のものだと思う。これがもし高級車ではなくて、小型車だったら、その獰猛なとことだけが前面に出てくる。例外は昔のロータスで、彼らが手がけたスポーツ・セダンやホット・ハッチには独特の繊細感が同居していた。
村上 それって、具体的にはどういうクルマのことを言っているの?
齋藤 コーティナ・ロータスとか、タルボ・サンビーム・ロータスとか、もっと近年だとロータス・オメガとか。これでももう古いか。ロータス独自のセンスが入っていた。
村上 フーン。
齋藤 あの獰猛な感じは、英国のコアなクルマ好きに根っからの飛ばし屋が多いことが理由になっていると思う。振り回すのが大好き。メーカーの開発ドライバーにも超絶級の腕っこきが必ずいる。
村上 確かに、英国版のオートカー誌やTVのトップギアを見ると、連中はどんなクルマでもどんな道でも横を向けて走っている。きっと、XJやフライングスパーもその洗礼を受けているに違いない。
齋藤 ああいうファスト・ドライビングが好きなクルマ好きを作るのは、英国のBロードといわれる郊外の一般道全部が、それこそ延々と続くワインディング・ロードみたいな環境にあるからなんだろうね。
村上 なるほど。ドイツ流スポーツ・セダンがアウトバーンに育まれるように、イギリス流のそれも道がつくるといわけか。

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イギリスの道が英国流スポーツ・セダンをつくった。
76.5kgm/1700-5600rpm
   
 ジャガー XJスーパースポーツベントレー・フライングスパー・スピード
駆動方式フロント縦置きエンジン後輪駆動フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高5135×1900×1455mm5310×1930×1470mm
ホイールベース3030mm3065mm
車両重量1950kg(車検証値)(前52%:後48%)2510kg(車検証値)(前58%:後42%)
エンジン形式機械式過給V型8気筒DOHC 32Vターボ過給W型12気筒DOHC48V
総排気量4999cc5998cc
ボア×ストロークφ92.5×93.0mmφ84.0×90.2mm
最高出力510ps/6000-6500rpm610ps/6000rpm
最大トルク63.7kgm/2500-5500rpm
変速機6段トルコン付AT6段トルコン付AT
サスペンション形式(前)ダブルウィッシュボーン/コイルダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション形式(後)マルチリンク/エア(自動車高調整式)マルチリンク/エア
ブレーキ(前後)通気冷却式ディスク通気冷却式ディスク
タイヤ(前後)245/40ZR20 99Y/275/35ZR20 102Y275/35ZR20 102Y
標準仕様車両本体価格1675万円2600万円
   



(2012年7月号掲載)
 
 
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