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作家、真山仁、F1シンガポール・グランプリを見に行く。


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ENGINE SPECIAL REPORT
興奮の市街地ナイト・レース観戦記

作家、真山仁、F1シンガポール・グランプリを見に行く。


公道を閉鎖する興奮の市街地レース。夜間照明が照らし出すスリリングなナイト・レース。世界中を転戦する全19戦のF1グランプリの中で、市街地でしかも夜間に行われるのは、シンガポールだけだ。大都市のど真ん中で行われるスリルと興奮の“F1シティ”を『ハゲタカ』の著者、真山仁が体験してきた。
文=真山 仁 写真=山下亮一 取材協力=シンガポール政府観光局



シンガポールを襲ったリーマン・ショックの激震
 シンガポールは、意外性に満ちた街だ。その象徴的イベントがF1シンガポール・グランプリだ。
 大都会のど真ん中に特設のサーキットを出現させて、
夜間にF1レースを行うという前代未聞のグランプリは、並の発想力では生まれてこない。  年間19カ所でのみ行われる世界最速を競うカーレースの頂点が、この国で始まったのは、2008年9月26日、世界中にリーマン・ショックの激震が走った直後だ。金融大国であるシンガポールにも、“ショック”は直撃しているおり、GP開催は見送るというのが“大人の見識”というものだ。
 しかし、彼らは躊躇することなく敢行した。そして、シンガポールの意外性には、不屈の行動力の裏打ちがあるのを証明してみせた。
 GPレース2日前には、コースとなる一般道を封鎖する。国民の交通手段には大きな支障を来すが、それもお構いなし。
 元々市街地コースはレース環境としては問題が多く、夜間となれば難易度がさらに上がる。しかも、熱帯モンスーン気候だから夜の外気も独特の暑さになる。レーサーたちの座席には暑さ対策のドライアイスが敷かれたりと工夫はあるが、最も体力を消耗するタフなレースであるのは、間違いない。
「国民生活にある程度の支障はある。でも、それ以上にこんな小国に世界最高峰のレーサーが集まり、覇を競うなんて夢のようでしょ。国民は、このレースを誇りに思っている」
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 シンガポール政府観光局の副長官メリッサ・オウ氏は、影響は経済効果だけでなく、その大きさは計り知れないと断言する。
 F1レースを招致したぐらいで、何を大層なと思うなかれ。そもそもシンガポールの面積は東京23区と同じ程度。しかも、その大部分を占めるアジア屈指のビジネス街のど真ん中がサーキットになるのだ。
 たとえば東京が独立国家になり、銀座やお台場、さらには六本木がF1のコースとなり、そこを時速300キロを超えるフォーミュラ・カーが走るのを想像して欲しい。否が応でも国民生活に多大な影響を及ぼす。

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F1グランプリは極上のエンターテインメント
 今回のシンガポールGPで私は初めて、レースを観戦した。幸運にも、フリー走行から三夜連続でレース会場に通い詰めることができ、文字通りF1グランプリを満喫した。
 初日のフリー走行は、シンガポール政府観光局のプレス・レセプション「ネットワーキング・ナイト」に参加して、メインスタジアムの上方にあるガラス張りのスイートルームから観戦した。夜とはいえ30度前後の暑さと湿気に悩まされる屋外とは別世界の快適な会場だ。
 そんな場所からフォーミュラ・カーの走行を見下ろすというのはレースの熱狂とはひと味違う贅沢な愉しみ方だと思う。特にフリー走行の前日、コースを歩き、レース直前のピットを見学するという体験をしただけに、距離感が縮まらなかった。
 翌日の予選でも「スイート」に招かれた。この日はまさしくセレブリティたちの集いだった。フルートグラスを手に談笑しながら、眼下を疾走するフォーミュラ・カーにときおり目を遣る。特別待遇の醍醐味の中で仲間と語りあい、時にはメガ・ビジネスの端緒を掴む――。
 モータースポーツ観戦とは、極上のエンターテインメントであると同時に、功成り名を遂げた者だけが味わえる特権に浴する場でもあるのだ。
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『ハゲタカ』シリーズで、とてつもない大富豪達の日々を描きながら、セレブリティの生態を肌で感じた事がなかった私には、貴重かつ有意義な体験だった。
 だがせっかくなら“高速の格闘技”のライブ感を体感したい私は、VIPルームの屋上に上った。  生ぬるい風が頬を撫でる。たちまち汗が噴き出る熱帯夜の空気を引き裂くようにアクセルを踏み込むエンジン音が唸り、シフトダウンの爆音が轟く。
 強烈な音と熱が体内に染み込む。気温と熱気の相乗効果でたちまち疲労しそうな条件なのに、むしろ体が覚醒するような爽快さがある。もしかして、これがレースの興奮なのだろうか……。
 予選のエンジン音には力強さを感じる。残り時間が少なくなればなるほど、車から放たれる熱気も強くなっていく。  同じ速度で走っていても、レーサーの集中力と本番に向けた闘争心が、夜空に高らかに響き渡る。


ENGINE SPECIAL EVENT

SINGAPORE GP NIGHTを開催!


シンガポールGPの熱気を伝えてくれるのは、2014年9月に観戦した作家、真山仁氏。市街地ナイト・レースの興奮のみならず、エンターテイメント・シティと化したシンガポールの魅力をお届けするほか、シンガポール料理もお楽しみいただきます。開催場所は、いま最も熱い商業施設のひとつとして注目されている神楽坂の「la kagu」。“シンガポールGPナイト”は、3月7日(土)夕方6時、エンジン・スタート!

イベントの詳細、参加のお申し込みはこちら





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page1 「銀座や六本木をフォーミュラ・カーが走るのを想像して欲しい」
page2 “祭りの後”
page3 シンガポールは世界屈指のクールな街だ

 
 
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予めご了承くださいますようお願い申しあげます。



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