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今月で最終回。tS=チューンド・バイ・STIの極意を聞いた。


SUBARU LEGACY B4 2.5GT tS/スバル・レガシィB4 2.5GT tS
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55号車 SUBARU LEGACY B4 2.5GT tS/スバル・レガシィB4 2.5GT tS
新車価格 402.99万円
導入時期 2010年12月
走行距離 1万7337km


柔能く剛を制す


三鷹のスバル・テクニカ・インターナショナル(STI)で、
車両実験部部長の辰己英治さんにtSのチューニングについて聞いた。
文=塩澤則浩(本誌) 写真=望月浩彦


 55号車に乗りはじめて4カ月。長期というには短いリポート期間が、今月をもって終了することになった。
 10年の6月に600台限定で発売され、11月の受注期間終了後に広報車両としての務めを終えて編集部にやって来たときのオドメーターが1万7kmだから、4カ月で7330km走ったことになる。そのうち遠出と言えるのはブリヂストンのテスト・コースがある那須までの往復くらいで、ほとんどは通勤を含む都内近郊の移動だった。この間の平均燃費は10.3km/リッターで、2.5リッター・ターボとしては上出来な数値だ。
 唯一の心残りは、5月のエンジン・ドライビング・レッスンで筑波1000を走ることができなかったことだが、毎日乗っていて少しも飽きることはなかった。
辰己さん1
30代のころは全日本ダートトライアルで優勝経験もある辰己さん。tSのアイディアはまだまだ山のようにあるという。
 レガシィtSの魅力をひと言で言えば、オトナが楽しめるGTカーだと思う。285馬力もあるから飛ばせばもちろん速い。でも、飛ばさなくても気持がいい。STIの躾は絶妙で、足回りは柔らかく感じるのにダンピングがよく効いている。フラットな乗り心地のおかげで、毎日通勤で使う中央高速は“癒しロード”になった。ステアリングを切ればスーっと気持ち良く曲がる。ロールは小さいのに突っ張った硬さを感じない。なにもかもがしなやかだ。
 STIがアドレナリン出まくりの走り屋向きというのは過去の話だ。インプレッサでさえ、最近のSTIモデルの味付けはマイルドになっているから、レガシィともなればなおさらだ。レガシィは現行型になって、ひとまわりボディが大きくなった。4730mmの全長は、BMW3シリーズ(4540mm)と5シリーズ(4910mm)のちょうど中間。実に堂々としたサイズである。ボディの拡幅は好調の北米市場に合わせてのことだが、おかげで先代にはあった軽快でスポーティなフィールが薄れてしまった、という声も確かにある。でも、あえて誤解を恐れずに言えば、車名こそ同じだが、大きくなって上級の別の車種になったのだ、と思う。そういうクルマにガチガチのハードなアシが必要かといえば、そんなことはない。クルマが変わってチューニングの方向も変わったのだ。


三鷹のSTI
 では、具体的にどんなチューニングをしているのだろう。カタログには、フレキシブルドロースティフナーやフレキシブルサポートリアなど、特殊なパーツが列記されているが、これまでその存在は知っていても、どんな効果があるのかいまひとつピンと来ていなかった。いい機会なので、55号車の返却を兼ねて、三鷹のSTIに行き、車両実験で陣頭指揮を執る辰己英治さんに話を聞いた。
「よくありますよね、補剛パーツの類。見ただけで固そうな。クルマって必ずしもそんなに固めなくてもいいんじゃないかって思うんです」
辰己さん2
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 一般立ち入り禁止のSTIのガレージでリフトアップした55号車の下で、いきなり切り出された辰己さんの言葉に驚いた。え? 固くなくていいんですか。
「やたらと補剛すると、実は逆に悪くなることもある。たとえばフロントのフレームとステアリング・ギアボックスをつないでいる補剛パーツ、フレキシブルドロースティフナー(写真A)。付け根をピロボールにしてあるんですが、剛性を上げるだけならボルト留めにした方がいい。でも急にオーバーステアが出たりして、扱いづらくなるんです」
 辰己さんの説明では、サイドシルとリアのサブフレームをつなぐフレキシブルサポート(写真B)も同じで、こちらはステーの真ん中にピロを入れて動くようにした。ステーに溜まる内部応力を逃がすためだ。こうすることで乗り心地も優しく、かつ安定性、ステアリングの効きも向上したという。
「固めるというほど固めてるわけじゃない。自然な状態、リラックスした状態にしてるんです。よくtSのアシは柔らかいっていうひとがいるけど、実はスプリングもダンパーも凄くハードに振ってあるんです」
リフトアップした55号車1
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 たとえばリアサスリンク(写真C)にピロを入れているのも動きを良くするためだ。ほかにもいろんな所のブッシュを変えて走りを演出した。「柔らかいんじゃなくて、しなやかなんです」と辰己さんはいう。
 tSに施したSTI独自のチューニングは、実はいままでの自動車操安性理論と相反することもあるそうだ。言ってみれば、体育会系的に鍛え過ぎたカラダを整体師がほぐしているようなものだという。柔能く剛を制す。かくしてしなやかなカラダ=シャシーとなったレガシィtSはサーキットを走っても速いそうだ。
 気になるのは次に出るレガシィtSだ。「もう少しスポーティな雰囲気にも挑戦してみたい」と辰己さん。「市場の声を聞きながら、少し変えて行くというのはあるかもしれない」という。はたしてSTI(辰己さん)はレガシィをどう仕立ててくるのか。期待したい。


A/フレキシブルドロースティフナーフロント
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B/フレキシブルサポートリア
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(写真A)フレキシブルドロースティフナーフロント。右端の先がピロボールを介してボディに留められている。

(写真B)フレキシブルサポートリア。

C/ピロボールブッシュリアサスリンク
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フロントのタイロッド・エンド
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(写真C)ピロボールブッシュリアサスリンク。

フロントのタイロッド・エンド(グレーの湾曲したパーツ)。ステアリング・フィールをほんの少しマイルドにするためにわざと湾曲させている。

リフトアップした55号車2
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