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クワドリフォリオ・ヴェルデとともに、最後の旅へ。


ヘッドライト・ユニット内部がスモークになり精悍さが増すQV
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ヘッドライト・ユニット内部がスモークになり精悍さが増すQV(右)。
48号車(左)の小動物のような愛らしさも捨てがたい。

新車価格 285万円
導入時期 2009年9月
走行距離 2万8224km


心躍る毎日よ、さらば。


気がつけば、導入から早1年。
任期を終えて、ミトは編集部から去っていった。
文=上田純一郎(本誌) 写真=阿部昌也


 奇しくもアルファ・ロメオの大特集が展開されているのと同じ号で、48号車とお別れすることになろうとは。連日お会いするオウナーたちの愛のある科白を耳にする度に、ちょっと寂しい気持ちになる。


フェード・アウト

 長期リポート艦隊にアルファ・ロメオ・ミトが加わったのはちょうど1年前。48号車として就任したミトは、約半年間広報車として使用された1.4ターボ・スポーツというグレードで、積算計が6872kmの時点で編集部へやって来た。
 リポート期間中の走行距離は2万1352km。オンボード・コンピューターによれば、平均燃費は10.8km/リッター。最高出力155psを発揮する1.4リッター・ターボ・エンジンと6段MTの組み合わせで、せわしなく混み合った都心をかけずり回るのが主な用途だったことを考えれば、まずまず小食だったと言っていいと思う。
 機械的なトラブルはいっさいなかった。工場入りしたのは、飛び石に見舞われてフェンダーおよびドア・パネルの板金塗装を余儀なくされた時と、定期点検の2回だけだった。3万kmに満たない走行距離では、経時変化に伴う劣化らしきものは、何一つなかった。
 48号車がリポートを終えることになったのは、クワドリフォリオ・ヴェルデ(以下QV)というグレードが投入され、1.4ターボ・スポーツと入れ替わるから。QVの排気量は同じ1.4リッターだけれど、インテーク・バルブを油圧で制御する新しいエンジンを載せている。最高出力は170ps。変速機は6段MTのみで、2ペダル自動MT“TCT”は今のところ予定がない。

乗り心地が
QVのエンジン
乗り心地が上質になったQV(右)。高架構造道路の金属ジョイント越えなどは48 号車(左)と同じで少々苦手。

QVのエンジン(右)は滑らかで、低中回転域が気持ちいい。48号車(左)はついつい上まで回したくなるタイプ。

可変ダンピング機能付きの
可変ダンピング機能付きのダンパーを備えるQV(写真右)は48号車(写真左)より遙かに限界が高く、常に路面に張りついているように走る。山道では痛快のひとこと。


旅は道連れ

 48号車との最後のドライブには、QVも連れて行くことにした。早朝に都心を出発し、撮影地の西伊豆を目指してひたすらワインディングを走り続ける。
 とにかくQVは速かった。いざ鞭を入れると、後から追いかけてくる48号車はみるみるうちに離れていった。乗り換えて、48号車でQVを追いかけると、ついていくのはなかなか難しかった。パワーの差だけじゃない。同じ速度でコーナーに飛び込んでいくと、時として冷や汗をかく。QVは48号車より遙かに高い速度を、ずっと楽に維持できる。乗り心地もいい。標準装備の電子制御式ダンパーが効いている。
 けれど、ふつうに走っている時の心地よさに関していえば、48号車も負けていない。特にエンジン・フィールがいい。積算計が2万kmを越えたあたりから、トップ・エンドまで一気に回るようになった。スロットルを深く踏み込むたびにワクワクする。QVは滑らかなことは滑らかだし、パワーは間違いなく出ているのだけれど、5000回転を越えると盛り上がりに欠けるように感じた。
 さんざん伊豆山中を走り回って撮影を終え、箱根に戻ると、すっかり日は暮れていた。

フロア・マットを見れば一目瞭然。
フロア・マットを見れば一目瞭然。QV(左)は48号車(右)に比べ足下は広く、クラッチとフットレストの間隔が広い。
QV(写真右)はハンドル位置
QV(写真右)はハンドル位置を左右どちらも選択できる。48号車(写真左)は右ハンドルのみの設定。右ハンドルでも各部の調整しろが大きく、不満を感じることはなかったが、左ハンドルはさらに自然。

QV(写真右)の乗車定員は5人で
QV(写真右)の乗車定員は5人で、後席は6:4の分割可倒式。TCT仕様も同じ。48号車(写真左)の乗車定員は4人で、後席のシートバックは一体式。前席の肘掛けもなかった。


バリュー・フォー・マネー

 箱根の仙石原にあるカフェ・ジュリアは、その名の通りクルマ好きが集う。この日も駐車場には145や166が停まっていた。遅めの食事をしていると、隣の席から話しかけられた。
「あれ、QVですよね、どうですか?」
 聞けば購入を検討中なのだとか。328万円と48号車より40万円以上高いことを告げると「タイヤが18インチだからむしろリーズナブル」という。オート・エアコンや、オート・ライト、パーキング・センサー、電動格納式ミラーなど、電気仕掛けが満載だ。
「なんだか日本車みたいですね」
 たしかに。これらの装備は48号車にはなかったけれど、1年間を振り返ってみても、どうしても必要、と思うほどのことは一度もなかった。
 都心に戻って給油すると、燃費は48号車が9.7km/リッター、QVは10.3km/リッター。エンジン特性とステアリングのアシスト量、トラクション・コントロールを統合制御するアルファDNAシステムはずっとD(ダイナミック)モードで走った。QVはアイドリング・ストップが備わっているけれど、山道と高速道路しか走らなかったから、ほとんど作動しなかった。N(ノーマル)モードを使用したり、もっと一般的な乗り方であればもう少し差が広がると思うけれど、純粋なエンジンの効率の差はさほど大きくなかった。
 こうして2台を比較していくと、QVが48号車の正常進化版であることがよく分かる。特に足まわりの進化は顕著だ。
 それがわかっていてなお、いなくなってしまった48号車に心惹かれるのはなぜだろう。
 エンジンの気持ちよさも捨てがたい。けれど、最大の魅力はスタイルだ。けっして万人から美しい、とはいってもらえないかもしれないけれど、愛らしく、どこか憎めないあの顔つきが好きだった。つぶらな瞳もとうぶん忘れられそうにない。QVは瞳孔が大きすぎて、カラー・コンタクトをはめているようで、格好良すぎる気がしてしまう。毎日駐車場で出会うたびに、乗るたびに心躍るベイビー・アルファ。1年間ありがとう。さようなら。

ベイビー・アルファに乾杯
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ベイビー・アルファに乾杯!


 
 
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