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2018年オスカーの行方は……。



3月に授賞式が開かれる映画のビッグ・イベント、米アカデミー賞。今年度の作品は粒ぞろいなだけに、大接戦が予想されている。その中でもフロントランナーとされる2本の作品を紹介しよう。
文=永野正雄(本誌)

 今年のアカデミー賞にノミネートされた9作品は、近年、稀に見るほどクオリティが高い。政治ドラマから青春映画、ファンタジー、さらにはホラーまでと多彩な作品が並んでいるが、その中でも作品賞の有力候補とされているのが、日本でも公開中の『スリー・ビルボード』だ。
 アメリカ中西部の保守的な田舎町を舞台にした本作の主人公は、何者かに10代の娘を殺された母親。事件から7カ月経っても捜査に進展がないことに業を煮やした彼女は、さびれた道路に立ち並ぶ3枚のビルボード(広告看板)に、警察署長への不満をぶちまけたメッセージ広告を出す。
 警察はもとより町の聖職者や歯科医、高校生までもが彼女の行動に鼻白み、敵意をむき出しにする。そんな世間の嫌がらせに対し、彼女は“倍返し”でやり返していくのだが(それが痛快でもあるのだが)、その過激な行動の根底に渦巻くのは、行き場をなくした“怒り”である。
 イギリス演劇界出身のマーティン・マクドナー監督による脚本は緻密で、人物の心の変化を通して、我々に人生における“怒り”以外の選択肢を提示する。クセのある役者陣の芝居も完璧な、今年のオスカーの主役となるに相応しい作品である。
『スリー・ビルボード』

本年度のアカデミー賞では6部門でノミネートを果たした『スリー・ビルボード』。とりわけ『ファーゴ』以来、2度目のオスカーを狙うヒロインのフランシス・マクドーマンド(主演女優賞候補)と、人種差別主義者の警官を演じたサム・ロックウェル(助演男優賞候補)の受賞はほぼ間違いなしとされている。前哨戦となるゴールデン・グローブ賞でも、この2人の演技賞に加え、作品賞と脚本賞を獲得している。監督のマーティン・マクドナーは、英国の権威ある演劇賞、ローレンス・オリヴィエ賞を2度獲った実力派。ちなみに本作の舞台となるミズーリ州の田舎町、エビングは、彼が作り出した架空の町である。116分。全国ロードショー中。


監督の美意識が炸裂

 この『スリー・ビルボード』の対抗馬と目されるのがメキシコの鬼才、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』だ。現代版の『美女と野獣』とも言われるファンタジーだが、本作のカップルは声を失くした孤独な女性と、アマゾンの奥地で捕えられた“半魚人”。冷戦時代のアメリカを舞台に、政府の秘密機関に実験材料として連れてこられた“彼”と、そこで清掃員として働く彼女の恋の行方を描く異色作である。
 往年のハリウッド映画を彷彿とさせるどこか懐かしさのある作品でありながら、ヒロインと半魚人の関係は官能的で、サスペンス映画としての血なまぐさいバイオレンス描写もある。デル・トロ作品の魅力は『パンズ・ラビリンス』に代表されるような、繊細さと禍々しさが同居した独特の映像世界にあるが、まさに『シェイプ・オブ・ウォーター』は、監督の美意識が炸裂した、大人のためのダーク・ファンタジーに仕上がっている。
 ちなみに全米公開前は、その内容からしておよそ賞レースには不向きと思われていたが、アカデミー賞では見事、最多13部門で候補入り。3月4日の授賞式でどこまで善戦するかが見ものである。
『シェイプ・オブ・ウォーター』

ベネチア映画祭の金獅子賞に輝く『シェイプ・オブ・ウォーター』は、アカデミー賞では最多13部門で候補入り。作品賞のほか、ギレルモ・デル・トロ監督の受賞に期待がかかる。なお本作は、ヒロインの住むアパートが映画館の上にあったり、その彼女がミュージカル好きだったりと、過去の映画へのオマージュがちりばめられている。そもそもデル・トロ監督がこの作品を撮ろうと思ったきっかけは、幼少時に見た『大アマゾンの半魚人』(1954年)というモンスター映画だったという。主演はウディ・アレンの『ブルー・ジャスミン』でも印象的だったサリー・ホーキンス。124分。3月1日より全国ロードショー。


2017 Twentieth Century Fox
 
 
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