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『アイ,トーニャ史上最大のスキャンダル 』


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ナンシー・ケリガン襲撃事件:1994年1月6日、リレハンメル五輪の選考会となる全米選手権の会場で、何者かにナンシー・ケリガンが右ひざを殴打される。結果、ケリガンは選手権を欠場し、トーニャ・ハーディングが優勝。2週間後、ハーディングの元夫ら数名が逮捕され、五輪後にハーディングも執行猶予つきの有罪判決を受けた。


傷害事件の容疑者として全世界の注目を集めたフィギュア・スケーター、トーニャ・ハーディング。彼女のワイルドな半生が驚くべき劇映画となった。
文=永野正雄(本誌)

 フィギュア・スケート界の歴史に残るヒールとして記憶されるトーニャ・ハーディング。1994年のリレハンメル五輪に出場した彼女は、当時、同じアメリカの選手が何者かに暴行された「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の“首謀者”として、全世界から疑いの目を向けられていた。
 日本でも大きく報道された騒動から二十余年。当事者への新たな取材をもとに、ハーディングの半生を映画化したのが『アイ,トーニャ〜史上最大のスキャンダル』である。
 貧しい家庭に生まれながらも、天性の才能で五輪代表に上り詰めたハーディング。だが本作で語られるのは、ありきたりな美談とは一切無縁な物語である。ウェイトレスをしながらレッスン代を工面する母親(演じるアリソン・ジャネイの鬼母ぶりが凄い)は、才能ある娘を貧困から脱するための手段としか考えておらず、彼女に対する精神的、肉体的暴力も日常茶飯事だった。
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昨年、全米で公開された本作は、批評家から最大級の賛辞を受け、アカデミー賞ではマーゴット・ロビーの主演女優賞を含む3部門でノミネート。ハーディングの鬼母を怪演したアリソン・ジャネイに見事、助演女優賞をもたらした。なお脚本はハーディングと、元夫のジェフ・ギルーリーのインタビューを元に執筆されたが、2人の話は大きく食い違っていたという。120分。配給:ショウゲート。5月4日よりTOHOシネマズ シャンテ他、全国ロードショー。
 一方のハーディングも品行方正とは程遠く、出場した大会でも、平気で審査員に毒づく始末。彼女のまわりにいる男たちも、ろくでもない輩ばかりで、19歳で結婚した暴力亭主とは、わずか3年で破局している。
 だがこれほど酷い環境にありながらも、映画で描かれるハーディングの物語は、意外なほどポジティブで、時に痛快ですらある。
 一世一代の大逆転劇を狙ったリレハンメルでは、思うような演技ができずに8位に終わり、アメリカに帰国した後の裁判では、実刑判決こそ免れたものの、フィギュア・スケート界からの追放を言い渡される。だが何度倒されても、しぶとく立ち上がるのが彼女の強さ。リレハンメル五輪から9年後、ハーディングがボクサーとして、リンクならぬリングに立ったことを覚えている人も多いだろう。
 「私は人々に一瞬愛され、そして嫌われ、最後は笑い者にされた」と語る劇中のハーディング。それでも人生を諦めない彼女のファイティング・スピリットに、心ならずも共感させられてしまう作品である。

2017 AI Film Entertainment LLC
 
 
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