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ウディ・アレンがたどり着いた境地?


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ニューヨークを舞台に数多くの作品を撮り続けてきたウディ・アレンが、49本目の作品を発表した。82歳の名匠による新作は、男女4人の泥沼愛憎劇だ。
文=永野正雄(本誌)

 1970年代から80年代にかけて、『アニー・ホール』や『ハンナとその姉妹』などの傑作を次々に世に送り出したウディ・アレン。その創作意欲は82歳となった今も衰えることはなく、ここ10年の間でも、1年に1本のペースで新作を発表し続けている。そのウディ・アレンの49本目の監督作が、ニューヨーク近郊のリゾート地、コニー・アイランドを舞台にした『女と男の観覧車』である。
 物語の設定は1950年代。ヒロインはかつて女優だったジニーで、今は遊園地のレストランで給仕をしながら、回転木馬の操縦係を務める夫、そして前夫との息子の3人で暮らしている。
 女優だった過去を忘れられない女と、平凡で面白味のない夫。そこに彼女と不倫関係にある作家志望の大学生、ギャングから命を狙われる夫の娘が加わり、物語は思わぬ方向へと進んでいく。
 もともとアレンの映画の魅力は、ウィットと毒舌が入り混じった台詞の面白さにあるが、本作はこれまでの作品よりも演劇的である。
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ウディ・アレンのオリジナル脚本による『女と男の観覧車』。ヒロイン役のケイト・ウィンスレットは、『愛を読むひと』でアカデミー賞を受賞。ウディ・アレン作品には初登場となる。彼女の不倫相手を演じるのは、ポップ歌手としても大人気のジャスティン・ティンバーレイク。そのほかジム・ベルーシ、ジュノー・テンプルといった個性派俳優によるアンサンブルが見ものだ。101分。丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開。
 現状に不満を抱えた破滅的な登場人物は、5年前の『ブルージャスミン』同様、テネシー・ウィリアムズの戯曲を彷彿とさせるし、華やかなようでいて、同じ場所にしか辿り着けない“虚無感”の象徴として描かれる観覧車の存在も、どこか文学的だ。
 もちろん優れた戯曲には、優れた役者が必要だ。本作で圧倒的な存在感を示すのは、ジニー役のケイト・ウィンスレット。本来は善人である筈のヒロインの心に魔が差す、その一瞬。取り返しのつかな い一線を越えてしまう女の姿が、悲しくも鮮烈だ。
 一方でノーマン・ロックウェルの絵画を参考にしたというノスタルジックな映像は、どこか夢のようでもある。夢の中で語られる残酷な物語は、儚い人生の一コマに過ぎない……。そんな印象を受けるのは、これこそが82歳のアレンが辿りついた、諦観の境地だからなのかもしれない。

photo by Jessica Miglio 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
 
 
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