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『恐怖の報酬 オリジナル完全版』


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日本では1978年に短縮版のみが公開されていた、米リメイク版の『恐怖の報酬』が完全な形で復活。ど迫力のサスペンスを大画面で堪能する。
文=永野正雄(本誌)

 フランス映画史に燦然と輝くアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』(53)。だがこのサスペンス映画の傑作が、『フレンチ・コネクション』の鬼才、ウィリアム・フリードキン監督によりアメリカでリメイクされていたことは意外と知られていない。
 リメイク版は1977年に全米公開されたが、『スター・ウォーズ』の陰に隠れて興行的に惨敗。日本を含めた北米以外の国では、映画会社が監督に無断で30分カットした92分の短縮版が公開されたものの、まともに評価されることなく、そのまま忘れ去られてしまったのだ。
 この不遇な作品が、監督自身の監修により4Kデジタル・リマスターのオリジナル完全版として復活。ヴェネツィアやカンヌ映画祭でも大絶賛され、日本でも初めて劇場公開される運びとなった。  基本的な物語はクルーゾー版と同じである。南米奥地の油田で大火災が発生。4人の男たちが巨額の報酬と引き換えに、僅かな衝撃でも大爆発を引き起こす消火用のニトログリセリンを2台のトラックに積み込んで、300km先の火災現場へと向かう。
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本作の見せ場となる大吊り橋のセットは、カリブ海に浮かぶドミニカ共和国に100万ドルをかけて建設された。だが撮影の段になって下を流れる大河が干上がってしまったため、メキシコで作り直す羽目に。ウィリアム・フリードキン監督は、撮影遅延と予算超過を繰り返す本作を「呪われている」と思ったという。主演は『ジョーズ』のロイ・シャイダー。121分。11月24日よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。
 クルーゾー版との違いは、4人の男たちの人物設定である。オリジナルの男たちは日々を無為に過ごす流れ者のような印象だったが、本作の4人は、マフィアに命を狙われる強盗犯や、不正取引で損失を出した投資家など、崖っぷちに立たされた落伍者たちだ。
 そんな男たちが突き進む灼熱の熱帯雨林は、まさに地獄である。やがて彼らがたどり着く、崩壊寸前の大吊り橋。暴風雨に揺れる吊り橋をトラックで渡るクライマックスは、オリジナル以上に強烈な印象を残す。
 当時としては破格の2000万ドル(現在の100億円に相当)という製作費を注ぎ込みながら、大失敗作の烙印を押されたフリードキン版『恐怖の報酬』。洗練からは程遠い荒々しくも絶望的な男たちの物語が、40年の歳月を経た今、新たな魅力を放っている。

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