ENGINE online/エンジン オンライン

SUBARU IMPREZA WRX STI A-Line × ENGINE


6MTモデルと同様の足回りは、フロントが倒立式ストラット、リアがダブルウィッシュボーンで、チューニングも同じ
クリックすると拡大
6MTモデルと同様の足回りは、フロントが倒立式ストラット、リアがダブルウィッシュボーンで、チューニングも同じ。走りの性能とプレステージ性はそのままに、日常性まで手に入れた。



理想の1台。


300馬力の2.5リッター水平対向4気筒ターボに5ATをマッチングしたA-Line。
3回シリーズの2回目はインプレッション!
街乗り、高速道路、箱根のワインディングで編集長がテストした。



語り=鈴木正文(ENGINE編集長) 写真=小野一秋


ハンディなクルマ

 インプレッサWRX STI A-ラインに乗ってまず感じたのは、すごくハンディなクルマだということです。手軽で扱いやすい。全長は4415mmで、ハッチバックのミドルサイズのなかではわりと短い部類に入りますが、全幅の1795mmは、思ったより幅がある。ところが、ドライバーズ・シートに座るとそんなにあるように感じない。狭いという意味ではなくて、走ったときに余っている感じがしない。というのも、あらゆる意味で適度に素早くクルマが反応するからなんですね。
 たとえば、クルマが動き出すとき。オートマチック・トランスミッションのA-ラインだから発進に気を使う必要はありません。ただスロットルペダルを踏めばいい。その動き出しが絶妙です。軽く動き始める。クルマによっては、たとえば、お年寄りや筋力不足の人が動き出すのにある種の反動が必要なのと同じように、反動とまではいわないまでも、一瞬の間やもたつきがある。A-ラインにはそれがない。よく鍛えられたボクシングの選手がテイクバックなしでジャブを出すときのように、そのままスッと出る。  コーナーを曲がるときも同様で、真っ直ぐな状態からそのままスッと曲がる。ブレーキもスッと減速する。ドライバーがアシストしてあげなければならないような、そういう苦労がない。だから扱いやすく、気持ちがいい。それが第一印象です。
外観からは6MTモデルと見分けがつかないA-ラインのリアスタイル
クリックすると拡大
外観からは6MTモデルと見分けがつかないA-ラインのリアスタイル。ツイン・デュアルテールパイプが放つわずかな音色の違いがA-ラインであることを主張する。
操作しやすいパドル・シフト
 A-ラインの最大のトピックとなっている5段ATは、パドル・シフトを装備しています。ハンドルを回しても一緒に動いていかないコラム固定式のパドルは、国際的慣習にならって右がアップ、左がダウンで、パドル自体も大きく、操作しやすい。
 Dレインジのままでも、パドルを操作すれば一時的にマニュアル・モードを受け付けてくれるし、シフト・ダウンしたときには、エンジン回転を同期する、スバルいうところの「ダウンシフトブリッピングコントロール」も搭載しています。でも、大概、パドルは使わない。使う必要がないほどATのデキがいい。さらにいえば、ATと2.5リッターターボとのマッチングが素晴らしい。
大きなブレードを備えた使い勝ってのいいコラム固定式のパドルシフト
クリックすると拡大
大きなブレードを備えた使い勝ってのいいコラム固定式のパドルシフト。右がアップで、左がダウン。Dレインジのままでもダイレクトに操作できる。
 6MTの2リッターと違い、2.5リッターの、しかも同じターボでもシングルスクロールターボを使ったこのエンジンは、マニュアルのツインスクロールターボほどにカミソリのような鋭い反応は追求していませんが、非常に扱いやすくチューニングされています。
 最大トルクは350Nm(35.7kgm)で、2リッターの422Nm(43.0kgm)には及ばないものの、2800rpmから6000rpmというワイドレインジでピーク・トルクを発生します。
 2800rpmがどれくらいかといえば、たとえば5速で巡航している場合なら法定速度をやや上回るくらいのスピード。普通なら、そこから上の回転を使い続けることはあまりありませんが、街中でのちょっとした加速や高速道路の追い越しなどでキックダウン、あるいは左のパドルを操作してシフト・ダウンした場合に、ちょうどマックス・トルクのところになる。これが4気筒とは信じられないぐらいトルキーで、3リッターV6の自然吸気エンジンくらいの力強さを感じます。
2800-6000rpmにわたりフラットで分厚いトルクを発生する2.5Lターボ
クリックすると拡大
2800-6000rpmにわたりフラットで分厚いトルクを発生する2.5Lターボ。最高出力は300ps/6200rpm、最大トルクは35.7kgm。
 一方、2リッターマニュアルの方はどうかといえば、スポーツ・エンジンらしくマックスの422Nm(43.0kgm)を4400rpmで発生するようになっているので、トルクの厚いところを求めて積極的にマニュアル・ギアを駆使することになります。これはこれで楽しいのですが、シフトの必要を感じさせない、ワイドで豊かなトルクのA-ラインの走りの楽しさは、それに勝るとも劣らないと思います。



インテリジェント・モード
 ほかのスバル車と同様、A-ラインにもトルク特性をコントロールするSIドライブというシステムが搭載されています。電子制御スロットルとECU(エンジン・コントロール・ユニット)を統合制御するスバル独自のシステムで、A-ラインの場合はTCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)とも連動して、シーンに合わせた3つの走行モードが選択できるようになっています。
 たとえばインテリジェント・モードは、燃費を重視しながら十分な常用トルクを確保しているので、街中でも高速道路でも不満なく走れる。不満が出るというのは、つまりある種の不足感とか、あるいはあまりにも自分の期待よりも大きな動きや、唐突な変化があったときに身体が嫌がる状態のことで、これがインテリジェント・モードだと、実に身体にしっくりくる。穏やかな高性能という感じで、むしろクルマの良さが分かって、僕はこのモードがいちばん賢いと思いました。乗り始めて最初の30分か40分くらい、一通りいろんなことを試したときはもう東名高速に乗っていましたが、穏やかでありながら十分な加速感があって、なかなか味わい深い。むしろマニュアルよりいいかもしれない、と思えたほどです。
 一方で、スポーツシャープ・モードの場合は、非常に鋭い走りができます。元々、WRX STIのボディやシャシーは、世界ラリー選手権、あるいは他のモータースポーツでも常に優勝争いをするために作られているので、あたかもこれが競技であるかのような走り、そういうスタイルの運転ができます。インテリジェント・モードにしてもスポーツシャープ・モードにしても、かなり好感度が高くて、これは面白いクルマだな、楽しいクルマだなと思いましたね。
スロットル、エンジン、トランスミッションを統合制御するSI-ドライブ
クリックすると拡大
シフトブーツに覆われた高級感のあるシフトノブ
クリックすると拡大
スロットル、エンジン、トランスミッションを統合制御するSI-ドライブ。日常走行からサーキット走行まで、3つのモードであらゆるシーンに対応する。
シフトブーツに覆われた高級感のあるシフトノブ。
高いスタビリティ
 東名高速で箱根に向かったわけですが、大井松田を過ぎるあたりの高速を含むワインディングでは、スタビリティの高さが印象的でした。スタビリティが高いと結局、ハンドル操作をあまりしないですむ。じわじわとハンドルを切って、そのまま最小限の舵角でコーナリングできる。まさにオン・ザ・レール感覚です。
 乗り心地は一般的な乗用車に比べて硬い。硬いから乗り心地が悪いとは必ずしも言えなくて、たとえば、シンバルをバチで叩いたときに芯をはずしてしまうと、上手く響かずにノイズになってしまう。自動車の乗り心地もこれと同じで、A-ラインの硬さというのは、大きな太鼓を叩いてすぐ手で押さえたときのような感じ。確かにある硬さを感じるけれどもショックの伝わり方は短い。なおかつスっと消える。質のいい減衰感がある。これにはサスペンションはもちろんボディの堅牢さも寄与していて、僕はむしろ乗り心地はいいと思いました。お金をかけてしっかり作りこんだ上質な乗り心地。世界的にみてもこのサイズのクルマの乗り心地としてはトップクラス。しかも値段を考慮に入れると並ぶものがないくらい。自動車の味のわかるひとならわかると思います。
 それはエンジンの音にもいえて、A-ラインのエグゾーストノートはなかなかいい音がします。6000rpmの手前で少し音が変わってきて、シャーンという音になってくる。その前まではちょっと獣っぽいゴロゴロといういい意味でくぐもったような若干凄みのある音がしますが、それが、タタタターと音がそろって弾けるような音になる。これがまた楽しい。いい感じで部品が動いている。そういうのって分かりますよね。だから運転していてすごく楽しい。

箱根では、ワインディングこそこのクルマの本来の場所、と思えるような走りが楽しめた
クリックすると拡大
箱根では、ワインディングこそこのクルマの本来の場所、と思えるような走りが楽しめた。AT専用のAWDシステム、VTD(バリアブルトルクディストリビューション)を採用しているため、いかなる路面状況でも常に最適なトルクを4輪に配分し、思い通りに走れるスポーティなコーナリングを実現している。
平行ロール
 そんなA-ラインが箱根でどんな振る舞いをみせたのかというと、本来の場所なんですね、このクルマの。
脚はもう硬いという意識はなくて、ちょうど良くなる。先代に比べるとロールするようになりましたが、サーキットだけを走るならともかく、一般のクルマのサスペンションは、ちゃんとストロークして4つのタイヤがいつも路面に接地している必要がある。ストロークさせながら、曲がろうとすればある程度ロールもするわけです。  平行ロールということばがありますが、A-ラインがまさにそうで、4輪が十分に接地していてノーズがつんのめらない。前輪に荷重がかかっているときでも、外側の後輪も同じように平行にロールしている。ロールさせることで、さらにタイヤに荷重が乗り、ますます曲がる。思い通りに曲がる。よほどのことがないかぎり、途中で修正する必要がない。
ステアリングを握っている限りは、1795mmの全幅を意識することはまったくない
クリックすると拡大
ステアリングを握っている限りは、1795mmの全幅を意識することはまったくない。すべてのクルマの動きが手のうちにあり、まさにハンディという言葉がぴったりだ。
 たとえばパワフルな後輪駆動車でテールスライドしながら回っていくという楽しみ方もありますが、一般道では非常にリスキーです。A-ラインの場合は、そういうことをやろうと思う手前で十分に楽しい。はじめのハンディの話にも通じますが、ほんとうに思う通りに、スースースーとスムーズに曲がる。気がつけば思った以上のスピードで走っていても、まだ余裕を持って運転できている。A-ラインというのはそういうクルマです。


よく出来た道具
 オートマチック・トランスミッションで乗り心地もいいですから、普段、家族と乗っているときは、普通に走れます。それで十分満足できる。なんでハンディかというと、なんのストレスもなくスーっと動いてくれるし、スポーティに走っても思い通りに動いてくれるからなんです。よく出来た道具にある無駄な遊びのなさは、誰が乗ってもわかると思います。実用に使えて、なおかつあたかもスポーツで汗を流すがごとく走ることもできる、ほとんど理想の1台だと思います。




タイヤ・サイズは245/40R18で、ポテンザRE050Aを履く
クリックすると拡大
フロント・グリルとリア・ゲート、フロント・フェンダーには、チェリーレッドのSTIエンブレムが誇らしげに付く
クリックすると拡大
タイヤ・サイズは245/40R18で、ポテンザRE050Aを履く。18インチの鋳造アルミホイールが標準。試乗車はオプションのBBS製を履いていた。
フロント・グリルとリア・ゲート、フロント・フェンダーには、チェリーレッドのSTIエンブレムが誇らしげに付く。
SUBARU IMPREZA WRX STI A-Line
クリックすると拡大
インパネのデザインは、6MTモデルと共通
クリックすると拡大
バケット・タイプのシートはファブリックと合成皮革が標準だが、プレミアムパッケージ(メーカー装着オプション、BBS製18インチ鍛造アルミホイールとセット)を装備した試乗車の場合は本革となる。
インパネのデザインは、6MTモデルと共通。オーディオ一体型HDDナビゲーションシステムはメーカー装着オプション。
試乗車のボディカラーはサテンホワイト・パール(3万1500円高)
クリックすると拡大
試乗車のボディカラーはサテンホワイト・パール(3万1500円高)。HIDプロジェクターロービームランプ、フォグランプは標準装備。
最新記事一覧
SPECIAL
ENGINE for Timepieces W…
今年発表された新作時計はオーセンティックな時計ばかりだ。と、スイスの見本市を取材したエンジン編…
Driving Lesson
エンジン・ドライビング・レッスン
「もっと運転を楽しもう!」をテーマに開催している今年のエンジン・ドライビングレッスン。いよいよ…
Our Long Term Cars/長期テスト車
No.46 AUDI R8 4.2FSIqua…
これまで日帰りの小旅行は何度もこなしてきたが、 1000kmを超える長旅は未経験だった46号車を 東京−…
WATCH/時計
J12 MARINEENGINE for Ti…
これがダイバーズ・ウォッチだろうか。第一印象ではこの種の時計にありがちな武骨さや重々しさをまっ…
WATCH/時計
モーザー・パーペチュア…
オリジナル設計の高度なメカニズムを搭載していても、文字盤は徹底してシンプルなデザインに仕上げる…
WATCH/時計
東京発 ウブロ ファッシ…
本誌ファッション・ディレクター、祐真朋樹が、オリジナルなファッション表現をもってウブロと対峙、…
WATCH/時計
マーレノストルム52MM/…
今年の話題は、1943年の試作品を復刻したクロノグラフ「マーレ ノストルム」だ。52mmの大型ケースや文…
ENGINE ROOM
巻頭特集 最強最旬のク…
ENGINEの名物企画「HOT100」は、クルマについて語ることを生業とする自動車ジャーナリストの大方を動…
WATCH/時計
ブライトリング・フォー…
贅沢な新作といえば、ベントレー史上もっとも速くパワフルなスポーツカー「コンチネンタル・スーパー…
WATCH/時計
ナビタイマー・ストラト…
1500mという防水性を備えた比類ないダイバーズ・ウォッチ「スーパーオーシャンII」は、ヴィンティッ…